読書感想 猫のおつげ
優しさと温かさが全編に渡って溢れています。子供から大人まで様々な世代にスポットを当てている作品でした。
日常の不満や不安など世間的には大したことがなく話題にもならないかもしれないけれども、当事者にとっては決して小さな事ではなくその人の人生の大事なストーリー、そんな日常を丁寧に描いてくれています。
ダイナミックなストーリー展開、運命的な出会い、ハラハラするミステリー、そんな話ももちろん面白いです。しかしこうした日常にありそうな悩みや不安を題材に、小説ならではのフィクションが盛り込まれるのもまた良いものです。
登場人物たちがふと立ち寄った神社にて出会ったミクジを軸として話が展開されていきます。それぞれが交わるのではなく、触れ合う程度の繋がりですがだからこそリアルにも感じられます。
すれ違った彼、彼女にはそれぞれののストーリーがあり、彼ら彼女らがお互いのことの顛末を全てを知ることはないでしょう。しかしだからこそリアルです。そして読者だけが俯瞰的に見ることができて、繋がりを感じる。そこでまた小説全体の温かみを感じることができます。
困った時の神頼みとはよく言ったものだと思います。萬神というように、万物に神が宿るという考え方をしてきた日本だからこそ、宗教的な信仰をしていなくても折に触れて神頼みをすることが自然と日常に溶け込んでいるのではと思っています。
脱線しましたが、話に戻ります。ミクジは答えを教えてくれるわけではありません。ヒントとなる言葉を授けてくれるだけです。登場人物たちはその言葉の意味を考えながら、時に間違えながら自分なりに解釈してゆきます。
登場人物の解釈が合っていたのかどうかではなく、自分なりに解釈をしてどう行動したのか、そこがこの話の肝だと思います。
答えをすぐに調べられてしまう時代ですが、実際に行動して初めて今まで見聞きしてきた言葉が本当の意味で理解できて腑に落ちるのではないかなと思います。
良いお話をありがとうございます。
