“比べる”って、本当に悪いことなんだろうか——『ネガティブ革命』著者・中井ゆうこさんインタビュー
『ネガティブ革命「私なんて」の呪縛から抜け出す魔法のトレーニング』を読んでいて、不思議だった。主人公は人と比べて落ち込む。でも、次第にその比較を、ただの自己否定で終わらせなくなっていく。
「なんで、あの人はそう考えたんだろう?」
そんなふうに、“自分よりすごい人”を理解しようとしているように見える場面があった。
私はそこに惹かれた。なぜなら私は、人と比べるたびに、どこかで「自分にはできないことだ」で止まってしまっていたからだ。
でももし、比較とは“劣等感”を抱くものではなく、“理解の入口”なのだとしたら——?
これは、著書『ネガティブ革命』を読んだ私が感じた、
「比較することで、その人の行動や考え方をもっと深く知りたくなる」
という感覚を確かめたくて行ったインタビューです。
著者・中井ゆうこさんに、私が感じたことや仮説を直接ぶつけながら、発信、行動力、働き方、価値観など、さまざまな面で“比較”してみました。
比べることで、「ここは自分と似ているかもしれない」と思う部分や「自分にとっては、そこまで大切じゃないのかもしれない」と見えてきた部分も。
もしかすると、読んでいるあなた自身も、”比較”と向き合う時間になるかもしれません。
▼インタビューした方:中井ゆうこさん
1992年生まれ。大学卒業後、看護師として病院や大学で勤務。
妊娠を機に退職し、在宅ワークに挑戦。しかし「あの人はすごい、私には何もない」と人と比べては落ち込む日々を送る。そんなとき、パートナーからかけられた「比べる力は才能だよ」という一言をきっかけに、比べることをやめるのではなく、活かす挑戦を始める。
自宅保育をしながらオリジナル商品を開発し起業。さらに現役脚本家からストーリー技術を学び、作家としての活動をスタート。著書『コンプレックス革命:人と比べる癖を強みに変える方法』はAmazon Kindleベストセラー6冠を達成。現在は3歳の娘を育てながら複数の事業を展開。
「専業ママだからこそ夢をあきらめない」をモットーに、同じように悩む女性へ“自分のままで前に進むヒント”を届けている。
▼中井ゆうこさん著書:『ネガティブ革命』あらすじ
「また比べてる……」
看護師として働きながら、「どうせ私なんて」「私には何もない」と、自分を否定してばかりいた主人公のるり。周りと比べて落ち込み、自信を持てないまま、同じ毎日を繰り返していました。
変わりたいと思っても、何から始めればいいのか分からない。そんなある日、彼女の前で起きたのは……なんとクマのぬいぐるみ・モコがしゃべってる!?
「人と比べる力は『才能』だよ」
まさかの一言に戸惑いながらも、モコと一緒に試行錯誤するうちに、るりは少しずつ「比べることの見方」を変えていきます。人と比べるからこそ気づけること、自分の本当の望み、そして今まで見えていなかった自分の強み――。
本書は、ネガティブな自分を無理に変えるのではなく、「比べる癖」を新しい力に変えていく過程を描いたエンタメ実用小説。自信がなくてもいい。ネガティブでもいい。そのままの自分を活かす視点を、クマとの少し不思議な対話を通して届けます。
比べてしまうあなたにこそ読んでほしい、新しい一歩のきっかけになる1冊です。
比較は自己否定じゃなく、”理解の入口”だった
—『ネガティブ革命』で、特に印象的だったのが主人公の職場の先輩である青木さんとのシーンでした。主人公るりは、青木さんと自分を比べ、「自分はダメだ」で終わるのではなく、「なぜ青木さんは、産業保健師になろうと思ったんだろう?」という問いが浮かんでいました。私はあの流れにすごく惹かれて。比べることで、その人をもっと知りたくなることってあるんだな、と感じたんです。
そんな視点で読んでもらったのは初めてかもしれません。
「なぜ産業保健師になろうと思ったんだろう」という問いを入れたのは、るりが青木さんに憧れている様子を描きたかったからです。その後、青木さんに問いをぶつけたとき、るりは初めて、「青木さんは自分のやりたいことがちゃんと定まっている。でも自分は定まっていない」と理解します。
るり自身に、現状把握をさせたかった、という意図がありますね。
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比較とは、”自分にないものを見つけて落ち込むこと”につながる、と考える人もいるだろう。
でもゆうこさんの著書や話を聞いていると、比較は、“違いを理解しようとする行為”に思えてくる。
そして、その違いを知ることで、自分自身の現在地も見えてくるようになるのかもしれない。
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—実は、前作の『コンプレックス革命』も拝読しました。今作は、前作より少しテーマが広くなっているように感じています。
2作とも、「人と比べる力は才能である」というテーマは共通しています。ただ今作では、「自己肯定感は低くてもいい」という考えを強く入れました。
—そこ、すごく印象的でした。読んでいて、「もっと前向きにならなきゃ」と追い立てられる感じがしなかったんです。
そうですね。実は私自身、ずっと「自己肯定感を上げなきゃ」と思って生きてきたんです。キャリアスクールに入会して3年目くらい、娘が1歳のころだったと思います。Kindle本を書こうとして、自分と向き合っていた時期で。
そのとき、ふと思ったんです。
「……自己肯定感低くても、生きられてるじゃん」って。
—あぁ……。
だから、「自己肯定感を上げよう」と思うこと自体をやめてみたんです。するとすんなり、“自己肯定感が低い自分”を受け入れられた感覚がありました。
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話を聞きながら、私も少し肩の力が抜ける感覚に気づく。
変わらなきゃ。もっと前向きにならなきゃ。そんなふうに、自分を追い立て続けること自体が、苦しさの原因になっていることもあるだろう。
『ネガティブ革命』が優しく感じられる理由は、きっとここにある。
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—ちなみに、今でも「人と比べてしまう」ことってありますか?
ありますよ~!特に、自分がうまくいってないときですね。「お金稼いだ!」や「案件獲得しました!」のような周りの声を見聞きすると、今でもザワザワします。
—意外です……!
でも、「あ、今落ちてる時期なんだな」って、自分で分かるようになりました。だから、「また比べちゃった……」と深刻になるというより、「今ちょっと疲れてるか〜」くらいで流せるようになった気がします。
ちなみに、月1くらいで病んでます(笑)
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比べなくなったのではなく、比べることと付き合えるようになった。その感覚が、なんだかとても等身大でリアルに感じられた。
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“すごい人”を分解してみたい
『ネガティブ革命』を読みながら、私はずっと、中井ゆうこさんのことを「すごい人だな~」と感じていた。
発信力がある。行動力がある。大量の文章を書き切る継続力もある。
一方で、その“すごい”を、そのままで終わらせたくなかった。だから気になったことを一つずつ聞いてみることに。
すると、“すごさ”の中には、ゆうこさんなりの思考や工夫が、驚くほど細かく存在していることに気づいた—。
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「自然体で愛される人」だと思っていた
—ゆうこさんのXでの発信、応援したくなる投稿が多いなと感じています。自然体というか、親近感があるというか……。何か意識していることってありますか?
実は、AIに一回投げることもあります(笑)
—えっ、AI!?
はい。自分のブランディングやターゲットを読み込ませたAIに、投稿を添削してもらっているんです。もちろん、考えや想い、出来事は全部自分自身のもの。ただ、添削してもらうことで、「強すぎる印象」や「暗すぎる印象」にならないよう調整しています。
—そうだったんですね。
あと、完璧じゃない自分を見せることも意識しているかもしれません。
月1くらいで病んでることも発信します(笑)。「ゆうこさんもそういう時あるんですね」って驚かれることもありますが、普通にあります。
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少し驚いた。
自然に愛される発信ができていると思っていたゆうこさんは、実は、「どう届くか」をかなり丁寧に考えているようだった。そして、その話を聞いても、不思議と作っている感じはしない。
きっとそれは、良く見せたいではなく、相手に受け取りやすい形で渡したいという感覚だからなのだと思う。
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「行動力がある人」の正体
—『ネガティブ革命』の商業出版につながったきっかけとして、「出版社の編集者さんをXで100人フォローした」というお話が印象的でした。どうしてその発想になったのでしょう?
私は、出版社から声をかけられるタイプでも、賞を取れる天才作家でもありません。じゃあ、無名の自分が商業出版するにはどうしたらいいだろう?と考えたとき、「編集者さんとつながればいい」と思ったんです。
—最短距離の行動を取れているのがすごいです。
「目的逆算思考」の影響も大きいですね。「今いる山頂から隣の山頂に行きたいなら、歩いていったり、車や電車ではなく、いっそのことヘリコプターで行ってもいい」という考え方なんです。
商業出版したいなら、キーマンは編集者さん。だから、まずつながろうと思いました。
—ちなみに、「やるかやらないか」で迷い続ける時間も、削る対象として考えていますか?
考えてますね。私だけが責任を取れることなら、基本的にはやると決めています。深夜にアイロンをかけるか迷う2分ですら、睡眠時間を削るので!!
—その感覚、徹底してますね……!
でも、相手がいることには結構慎重です。この前も、憧れの人に連絡するのを3週間モジモジしてました。
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私はこの話を聞きながら、自分との違いを考えていた。
たぶん私は、準備を整えてから動くタイプ。でもゆうこさんは、目的に近い場所へ先に行くタイプなのかもしれない。それに、私は勝手に、ゆうこさんは“迷わず進める人”なのだと思っていた。でも実際には、
迷わないよう工夫している部分
ちゃんと迷う部分
の両方があって。
迷っても進めるよう設計している、に近かったのかもしれない。
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「好きだから続けられる人」ではなかった
—今作も前作も、本当に大量の文章を書かれていますよね。やっぱり、“書くこと”自体がお好きなんだろうなと感じています。
実は、書くこと自体は、そこまで好きじゃないんです(笑)。むしろ、書いている時間は苦しいことの方が多いかもしれません。
—えっ、そうなんですか!?
でも、書き終えた後の「解放感」や「達成感」がすごく好きなんです。マラソンみたいな感覚ですね。
だから、燃え尽き症候群みたいになることもあります。noteを更新しなくなることもしょっちゅうです。
—それでも、書き続ける理由は何でしょう?
私は、自分が経験してきたことや、そこから得た学びを、必要な人に手渡したいと思っているんです。だから、別に“本”じゃなくてもいい。声でも、映像でもいいんですよね。
ただ、渡したいものがあるんです。
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“続けられる人=好きな人”なのだと思っていた。でも、必ずしもそうではないのかもしれない。
「好きだから続く」だけじゃなく、「渡したいものがあるから続く」という形もあるのだと知った。
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比べてみたから、自分も見えてきた
インタビューが終わったあと、私はずっと考えていた。なぜ私は、こんなにもゆうこさんが気になったんだろう。たぶん私は、単純に憧れていただけじゃない。
「なんでそう考えるんだろう?」
「どうして、その行動を選べるんだろう?」
をきっと知りたかったのだ。
そして話を聞くうちに、“すごい”の輪郭は少しずつ見えてきた。自然体に見える発信には、届き方を考える工夫がある。行動力に見えたものは、目的から逆算するという思考がある。「好きだからできる」と思っていたことにも、その先で味わいたい感覚がある。
ゆうこさんを見つめると同時に、私は、自分自身のことを見つめた—。
比べることは、ときに苦しい。誰かの活躍を見て、落ち込む日もある。でも比較って、優劣を決めるためだけのものじゃない。今回私は、比較には別の使い方があるのだと知った。
だから、自分にないものを持っている人に出会ったとき。
「自分には無理だ」で終わる代わりに、「なぜ、この人はそう考えるんだろう?」と問いを持ってみることに意識を向けたい。そうすることで、自分の価値観や、大切にしたいものも見えてくるはずだ。
今の私は、以前より少しだけ、自分のことが分かるようになっている。
“理解したい”という方向に向いた比較は、自分の世界を広げてくれるのかもしれない。
