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知るメモ|【FRB】|世界最強の中央銀行!~なぜアメリカは借金大国でも世界経済の頂点に立ていられるのか?

アメリカ合衆国政府の抱える債務(国の借金)は「34兆ドル(約5000兆円)」を超えています。
これはアメリカのGDP(国内総生産)が約30兆ドルですので、それを上回る規模であり、金額だけで見れば人類史上最大の借金です。

もしこれが普通の国であれば、通貨の価値は暴落し、ハイパーインフレに見舞われて、国家破綻(デフォルト)の危機に瀕していることでしょう。
実際、歴史上多くの国が、過剰な債務によって経済崩壊を経験してきました。

しかし、アメリカは違います。
借金がどれだけ雪だるま式に膨れ上がろうとも、アメリカ経済は世界トップの成長力を維持し続け、世界の投資家はこぞってアメリカの国債を買い求め、そして何より「米ドル」は世界で最も信用される通貨として君臨し続けています。
なぜ、こんな「常識外れ」なことが可能なのでしょうか?
なぜアメリカは、借金まみれでありながら世界経済の頂点に立ち続けることができるのか?

その答えのド真ん中に鎮座しているのが、「FRB(連邦準備制度理事会)」です。

今回は、世界最強の権力機関とも言える「FRB」の正体に迫り、その複雑怪奇な組織構造、誕生の裏にあるドラマチックな歴史、そして「無から有を生み出す」通貨発行権のカラクリを紐解いていきます。


第1章|FRBとは何者か

FRBは「Federal Reserve Board of Governors」の略称です。
日本語の意味では「連邦準備制度理事会」。
「連邦準備制度:Federal Reserve System」のFederalを略して「Fed(フェッド)」と呼ばれる中央銀行制度の最高機関として、米国の金融政策を策定・実施するとともに、全米12地区の連邦準備銀行を総括する。

ここで一つ、興味深い事実があります。
中央銀行であるはずの「連邦準備制度理事会」の名前に「銀行(Bank)」という言葉が入っていない。
日本は「日本銀行」、イギリスは「イングランド銀行」、ヨーロッパには「欧州中央銀行(ECB)」がある。
それに対してアメリカの中央銀行は「制度」という言葉を使っていることです。
これは単なる命名の趣味の違いではなく、アメリカという国の成り立ちそのものを反映しています。


「制度」と「理事会」の違い

経済ニュースでは「FRB」という言葉が頻繁に登場しますが、実はこの言葉には少し注意が必要です。

厳密に言えば、アメリカの中央銀行制度全体の正式名称は
FRS:連邦準備制度(Federal Reserve System))」です。

連邦準備制度は、大きく次の3つの要素で構成されています。

  • FRB(連邦準備制度理事会):ワシントンD.C.に置かれ、制度全体を統括する最高機関。

  • 12の地区連邦準備銀行(地区連銀):全米を12地区に分け、それぞれの地域で金融機関との取引や決済業務、地域経済の調査などを担う。

  • FOMC(連邦公開市場委員会):政策金利や資産買入れなど、金融政策の方向性を決定する委員会。

日本で言えば、日本銀行は政策決定から実務までを一つの組織が担う「一枚岩」の中央銀行です。
一方、アメリカでは「制度全体を統括する理事会」「地域ごとに業務を担う地区連銀」「金融政策を決めるFOMC」というように役割を分担する「分散型」の仕組みが採用されています。

つまりアメリカには「単一の中央銀行」は存在しないのです。
FRBとは銀行そのものではなく、「システムを統括する司令塔」のような存在なのです。
「1つのFRB(司令塔)」と「12の地区連銀(実行部隊)」がセットになって、初めてアメリカの中央銀行として機能するのです。

なぜ、こんなにややこしい仕組みになっているのでしょうか?
そのヒントは、権力の集中を極端に嫌うという、アメリカ建国以来の統治思想と、血で血を洗うような金融恐慌の歴史に隠されています。


第2章|なぜFRBは生まれたのか|1907年の悪夢

アメリカは19世紀末から20世紀初頭にかけて、ある意味で異常な国家でした。
世界屈指の経済大国でありながら、中央銀行を持たなかったのです。

当時のアメリカでは、通貨の供給が民間銀行の判断に委ねられており、数千もの民間銀行が独自の紙幣を発行し、資金繰りが悪化し信用不安が起きるたびに連鎖的な銀行破綻が繰り返された。
リッチモンド連銀の記録によれば、「ほぼ15年おきに金融パニックが起きた」という状況だったそうです。
そして1907年、決定的な事件が起きます。


ニッカーボッカー信託銀行の崩壊

1907年10月、ニューヨークの「ニッカーボッカー信託銀行」が通貨の支払いを停止した。
建設現場の作業服みたいな名前の銀行ですが、ここから破綻の連鎖が始まります

このニュースはまたたく間に広まり、預金者たちは我先にと窓口に押しかけ、取り付け騒ぎが連鎖した。
ニューヨーク以外の地方銀行も、ニューヨークにある大銀行に預けていた資金を引き上げようとしたが、そもそも大銀行側に払い出せるほどの現金がなかった。
株価も1900年以来最安値を更新し、貸付金利は急騰。
破綻の連鎖が街を次々と飲み込み、多くの銀行や信託会社が倒産の危機に瀕しました。

金融システム全体が崩壊しかけたその時、アメリカを救ったのは政府ではなく、「ジョン・ピアポン・モルガン(J.P.モルガン)」という一人の巨大な銀行家でした。
彼は自らの財力と人脈を総動員して資金を調達し、銀行システムを救い出したのです。
モルガンは、名だたる銀行家たちを自身の豪華な書斎に軟禁し、「誰がいくら資金を出して市場を救済するか」を徹夜で強引にまとめ上げました。
文字通り、彼個人の圧倒的な財力とカリスマ性だけで、アメリカ経済の崩壊を食い止めたのです。

しかし、世界最大の経済国家が「一民間人」に委ねなければならなかったという事実は、国民に大きな衝撃を与え、深いトラウマを植え付けました。

このままではいけない。国家として金融を管理する仕組みが必要だと。


「ジキル島の密談」という謎の出来事

1907年の恐慌から3年後の1910年11月。
ジョージア州の沖合に浮かぶ「ジキル島」で、歴史上もっとも秘密めいた金融会議が開かれます。

参加したのは6人。
上院議員のネルソン・オルドリッチを筆頭に、モルガン家の代理人、ロックフェラー系銀行の頭取、ウォール街の大物たちが顔をそろえたのです。
彼らは鴨猟を装い、ニュージャージーから専用車両に乗り込み、偽名を使って島に向かった。

10日間にわたる密議の中で、今のFRBの骨格となるアイデアが固まった。「中央銀行という名前は使わない」「独立した地域の支部をワシントンが統括する」「金融危機時に最後の貸し手として機能する単一通貨を創造する」。

なぜ偽名を使い、極秘にする必要があったのか?
それは、国民感情が民間銀行に対して極めて冷淡だったからです。
金融危機を繰り返してきた銀行家たちが法案を主導していると知られれば、議会を通過しない。
銀行界の介入を隠す必要があったのです。
(この極秘会議のエピソードが、後に「FRBは国際金融資本の陰謀だ」という都市伝説を生む温床にもなるのですが・・・)

そして様々な政治的妥協の末、1913年に当時のウッドロウ・ウィルソン大統領の署名により「連邦準備法」が成立。
ついにFRB(連邦準備制度)が誕生したのです。


第3章|FRBは「政府」か「民間」か|最大の読みどころ

「FRBは政府機関か、民間組織か」という問いの答えは単純ではない。

FRBの正体を簡単に説明すれば、「政府でも民間でもない、その両方の性格を併せ持つ独特の機関」となります。

FRB(理事会)は政府的な性格を持つ。

FRBの理事は7名で構成され、大統領が指名し、上院が承認する。
議長と副議長の任期は4年、理事の任期は14年です。
本部はワシントンD.C.にあり、年2回、議会に「金融政策報告書」を提出し、議長が上下両院で証言する義務を負う。
説明責任は議会に対して負っており、外見は政府機関に近いです。


12の地区連銀は民間的な性格を持つ。

全米12地区の連邦準備銀行は、管轄地域の民間銀行が「株主」として出資する形で設立されています。
「じゃあやっぱりロスチャイルドとかモルガンとかの巨大資本が株主として中央銀行を支配しているの?」と思うかもしれませんが、そうではありません。
地区連銀の株は、一般の株とは全く異なります。

  • 市場で売買できない。

  • 持っている株数にかかわらず、議決権は1行につき1票。

  • 配当金は年6%に固定されており、それ以上の利益が出た場合はすべてアメリカ財務省(国庫)に納付される。

つまり、「形としては民間の株式会社だが、実際には公共の利益のために動く非営利組織」としてデザインされているのです。
各地区連銀の総裁は民間銀行が選出に関わる仕組みになっており、政府が完全に支配しているわけではありません。

  • 「司令塔」であるFRB理事会は、大統領が任命する政府的組織

  • 「実行部隊」である12の地区連銀は、民間銀行が出資する民間的組織

この二層構造が、FRBの「政府でも民間でもない」という独特の立ち位置を生み出しています。


なぜこんな複雑な仕組みになったのか

この奇妙な構造は、設立当時のアメリカが抱えていた「二つの恐れ」から生まれたものです。

  • 権力の一極集中への恐れ
    連邦制を重んじるアメリカでは、ニューヨークの大資本が金融を独占することへの強い反発があった。
    地方の農業者や中小企業が「ニューヨークの銀行だけが得をする仕組みにするな」と猛反発し、12の地区連銀が各地に設けられることになったわけです。
    ドル紙幣をよく見ると「Federal Reserve Note」と書かれ、それぞれの紙幣がどの地区連銀から発行されたかを示す記号が刻まれています。
    アメリカの分散型中央銀行システムは、紙幣の隅にまでその痕跡を残しているのです。

  • 「政治からの干渉への恐れ」
    政治家が自分の都合で金融政策を操れる仕組みにしてしまえば、選挙前には必ず金利を下げ、経済を無理やり好調に見せるような政策が横行するでしょう。
    それを防ぐため、FRBには一定の独立性が保証されていて、大統領でさえFRBの金融政策を直接命令することはできないのです。

ただし、「完全な独立」でもない。
FRBは議会によって設立された機関であり、議会はその権限を変更する立法も可能です。
大統領は議長を指名し、議会は金融政策の説明を求める権限を持ってもいる。


第4章|世界最強の権力「通貨発行権」

FRBが持つ最大の武器は「通貨発行権」です。
これは単純に言えば「お金を作る力」のことですが、その意味は非常に深いです。

政府が国債(借金の証書)を発行すると、FRBはそれを買い取る代わりに「ドル」を創り出す。
実査は物理的に印刷するのではなく、コンピューター上の数字として市場に資金を供給する。
これが「国債購入を通じた通貨の創造」という仕組みです。

ただし一般的なお金の出し入れと違い、FRBが供給する資金は「誰かの預金」でも「誰かの税金」でもないということです。
FRBが持つ通貨発行権によって、ゼロから生み出されるものです。


量的緩和(QE)という禁じ手

2008年のリーマン・ショックで世界が金融崩壊の瀬戸際に立ったとき、FRBは前代未聞の政策に踏み切ります。
量的緩和(QE:Quantitative Easing)」です。

それまでの金融政策は主に短期金利の操作でしたが、その金利が「ゼロ」に達してしまえば、それ以下に下げることができなくなります。
そこでFRBは「お金を市場に直接注入する」という方法をとったわけです。
長期国債や住宅ローン担保証券(MBS)を市場から大量に買い取ることで、市場に資金を供給し、長期金利を引き下げた。

リーマン・ショック後、FRBは金融市場に大量のお金を流し込む政策を続け、その結果、FRBが保有する資産の規模(バランスシート)は、約9,000億ドルから約4兆5,000億ドルへと一気に拡大します。

さらに2020年、新型コロナウイルスの世界的流行によって経済が急停止すると、FRBは再び同じような政策を実施し、その規模は約9兆ドルにまで膨らみました。

つまりFRBは、経済が大きく揺らいだとき、自ら新たなお金を供給し、市場に資金が行き渡るよう支えることができます。
これが、FRBが世界最強の中央銀行と呼ばれる最大の理由なのです。
どんな危機が来ても、FRBには最後の手段として「市場を資金でいっぱいにする」選択肢が残されているわけです。


第5章|ドル覇権とFRBの関係

1944年、第二次世界大戦の終戦が見えてきたころ、ニューハンプシャー州のブレトンウッズで44カ国が集まり、戦後の国際金融体制が決定されました。

ここで「金1オンス=35ドル」と定め、他の通貨はドルに連動させるという「金ドル本位制」が採用されました。
アメリカは戦後世界の圧倒的な経済力を背景に、ドルを世界の基軸通貨の座に押し上げたのです。

しかし1971年、ニクソン大統領が金とドルの交換を停止(ニクソン・ショック)したことで、ブレトンウッズ体制は崩壊した。
だが奇妙なことに、ドルの基軸通貨としての地位は揺らがなかった。
固定相場制が変動相場制に移行したあとも、世界の貿易決済と外貨準備でドルは圧倒的なシェアを保ち続けたのです。
なぜでしょうか?
それは「制度」ではなく「信頼」がドルを支えているからです。


「米国債」という世界のインフラ

各国の中央銀行は外貨準備の大半を何で持つかというと、その答えの大部分は「米国債」です。
日本も、覇権争いをしている中国も、産油国も新興国も、手元の外貨のかなりの部分を米国債という形で保有しています。

米国債を買うとはすなわち、アメリカにドルを貸す行為ですが、ここに「借金大国なのになぜドルは強いのか」という謎の答えがあります。

アメリカは確かに莫大な借金を抱えている。
しかし、その借金の大半はドルで発行されており、ドルを創り出せるFRBはアメリカの国内にある。
加えて、世界中の国が米国債を持っているということは、世界中の国がアメリカに貸し倒れされては困るから「潰れてほしくない」という立場にある、ということでもある。
仮に米国債が暴落すれば、世界中の外貨準備が毀損される。
中国も日本も、アメリカの破綻を望まない最大の理由は、アメリカに多額の貸しがあるからです。

これを「トリフィンのジレンマ」と呼ぶ経済学者もいる。
少し簡単に言うと、ドルが世界の基軸通貨として世界で使われ続けるためには、アメリカは常に世界へドルを供給し続ける必要があります。
そのためには、アメリカは輸入が輸出より多い状態、つまり貿易赤字になりやすくなります。
しかし本来、貿易赤字が続けば「お金を使いすぎている国」と見られ、信用が下がってもおかしくありません。
それでもアメリカは、ドルが世界の基軸通貨であるために赤字を続けながらも信用も保ててしまう。
つまり見せかけの「借金大国」という矛盾を生み出している、というわけです。

この「ドル覇権」による、アメリカの借金メカニズムは次のように機能します。

  1. アメリカ国民が、世界中からモノを輸入して消費する。

  2. 代金として「ドル」が世界中に支払われる。

  3. ドルを受け取った国(日本や中国、産油国など)は、そのドルを金庫に眠らせておくのはもったいないので、利子がつく「米国債」を買う(=アメリカにお金を貸す)。

  4. アメリカ政府は、そのお金(借金)を使って、再び国内で公共事業や軍事費、福祉に投資する。

お分かりでしょうか。
アメリカが輸入超過(赤字)になっても、世界中に散らばったドルは、最終的に「米国債の購入」という形で、再びアメリカ国内に還流してくるのです。
世界中が自発的にアメリカの借金を引き受けてくれるため、アメリカは「借金による無限の経済成長」を続けることができます。

もし、世界が米国債を買うのをためらうような危機的状況が訪れても問題ありません。
最後の最後にはFRBという最強の機関が「無から生み出したドル」で米国債を買い支えてくれるからです。

「ドル」という最強の商品を作り出すFRBと、「米国債」という世界最高の安全資産を発行するアメリカ政府。
この両輪が回っている限り、アメリカの借金は単なる「数字の羅列」に過ぎず、国家破綻は起こり得ないのです。


終章|世界最強なのは軍隊か、それとも通貨か

アメリカが世界覇権を握っている理由を問われた時、多くの人は「圧倒的な軍事力」を思い浮かべるでしょう。
確かに、11隻もの原子力空母を運用し、世界中に軍隊を展開するアメリカの武力は突出しています。

しかし、現代において真に他国を屈服させる武器は、ミサイルでも戦車でもなく、それは「ドル体制からの締め出し(経済制裁)」です。
世界の決済ネットワークはドルを中心に回っています。
アメリカの逆鱗に触れ、このドル経済圏から追放されることは、現代の国家にとって「死」に値します。
国際貿易ができなくなり、物資は滞り、経済は一瞬で干上がるからです。

約30兆ドルの対外債務を抱えながらも、なぜアメリカは世界経済の頂点に君臨し続けられるのか?
それは、FRBという緻密に計算された組織が、世界の基軸通貨であるドルを完璧にコントロールし、世界中の富をアメリカに還流させるシステムを維持しているからにほかなりません。

政治の介入を防ぎながらも公共性を保つ「組織構造」。
歴史の教訓から生み出された「危機管理能力」。
そして、無から有を生み出す「通貨発行権」。

アメリカの覇権を根底で支え、世界経済の心臓の鼓動を操る。
ジキル島の密議から始まり、金融恐慌の反省を経て誕生したFRBは、世界最強の中央銀行として今日も世界経済の命運を握り続けているのです!


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それでは次回をお楽しみに・・・

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