命題と論理の基本


本記事の背景とゴール

ゴール:命題と論理の基本を知る

なぜ記事にしたのか

大学数学を学び始めると、論理記号による記法がよく使われるようになる。

初めは何となく日本語の字面で理解しようとしていたが、
論理式が複雑になるとどう解釈すれば厳密に理解できているのか分からず、限界を感じたため、ここでしっかり命題と論理を理解したい。

まずは命題について一般的な定義・手続きから始めて、
本記事では論理式が読めるようになることを目的とする。

個人的には一般的に扱われる命題の手続きでは、代数で扱う世界との結び付きがピンと来なかったので、
写像による演算の形で命題と論理記号を改めて規定するが、文量が多くなりすぎたので次の記事に回す。

学習前の私の勘違い

↓は有名な和集合の公理であるが、左から依存を気にして読めば良いとわかっても、変に日本語で解釈をしようとしてしまい、私には意味不明であった。(分かりやすくざっくり日本語で書いてくれる人も多いが逆になぜそう解釈できるのか分からないのであった…私だけかもしれないが。)

$$
 \forall X\exists Y\forall v( \exists w( v\in w\land w\in X) \leftrightarrow v\in Y)
$$

例えば括弧中の$${\leftrightarrow}$$による評価が、
任意の$${v}$$で真であるためには、$${Y}$$は任意の$${v}$$を含んでないと真にならないのでは?それは公理として常に真となるのか?とか、そんな思い違いをしたりしていた。

命題の一般的手続き

命題と論理記号

命題とは一般的には”$${真:1}$$か$${偽:0}$$のいずれかが定まる主張”として定義されている。
そして論理記号としては、$${\neg,\land,\lor,\rightarrow,\forall,\exist}$$などがある。次の記事で述べるが実は$${=}$$も論理記号の一つとして扱われることが多いらしい(もちろん他の論理記号とは型が違うが、ただ論理式中に扱う記号という意味)。

もちろん
 否定$${\neg}$$・・・$${\neg P}$$(Pではない)
 論理積$${\land}$$・・・$${P\land Q}$$(PかつQ)
 論理和$${\lor}$$・・・$${P\lor Q}$$(PまたわQ)
 含意$${\rightarrow}$$・・・$${P\rightarrow Q}$$(PならばQ)
 全称量化子$${\forall}$$・・・$${\forall x(P(x))}$$(任意のxに対してP)
 存在量化子$${\exist}$$・・・$${\exist x(P(x))}$$(ある適当なxが存在してP)
である。

上四つに対して、下二つの量化子による命題は$${P(x)}$$のように変数$${x}$$に関する命題$${P}$$を関数として扱っている。
命題論理の守備範囲は上四つだが、下二つのように変数を含めることができる論理体系を述語論理と呼び区別されている。(数字以外も変数となるので$${x}$$を変項とも言うらしい。)

述語論理は命題論理の拡張であるため、基本的には述語論理を前提とするが、本記事では命題関数$${P(x)}$$を$${P}$$として命題論理っぽく書くことが多い。
述語論理と命題論理が本質的にどう違うのかも次の記事で触れたい。

なお、上記では各演算子に対して、・・・の右に命題$${P,Q}$$に作用させた結果を書いている。
この作用させた結果はまた命題であり、上四つを"複合命題"、下二つをそれぞれ"全称命題""存在命題"という。
語弊を恐れずに言うと、いずれも1つ以上の命題と論理記号の組み合わせを複合して作るという点で同じようなものと私は考える。(全称命題、存在命題も、$${x}$$の定義域からある一つの$${x_1}$$を切り出して見れば普通の命題であり、$${x}$$の定義域にある要素数が有限な場合を考えればそれらを論理積・論理和でつなぐことで再現できるはず)

逆に複合して作られた命題を、構成する要素の命題に分解していくと、原子命題という最小単位の命題が見つかる。
原子命題が関数の形で書かれ変数$${x}$$を持つとき原子式、原子式を論理記号でつなげたものを複合式と呼びわけるようだ。原子命題も結局は原子式が変数をもたない定数だと言えるし、その複合式は複合命題であると言える。
そのため、今後は基本的には原子命題等含めて原子式、複合式の呼称を使う。

含意による論理演算

上に挙げた論理記号は、命題の真偽の結果の組からさらに真偽を評価することができる。
その結果が日常的な感覚と合わないのは”含意”だと思うので、そこだけ以下で確認していく。
下のように命題を変数に見立て、その真偽だけに着目したときの論理演算の結果を表にしたものを、真偽値表という。
なお、命題論理において命題$${P}$$と$${Q}$$の真偽の決定は独立である点は注意。

$$
\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|} \hline
P & \neg P & Q & P\rightarrow Q & P\land(P\rightarrow Q) & (P\land(P\rightarrow Q))\rightarrow Q \\\hline
 1 & 0 & 1 & 1 & 1 & 1\\\
1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 1\\\
0 & 1 & 1 & 1 & 0 & 1\\\
0 & 1 & 0 & 1 & 0 & 1\\\hline
\end{array}
$$

真偽値表を見ると、$${P\rightarrow Q}$$は$${P}$$が偽か$${Q}$$が真のときに真となる。
$${P}$$が偽なら$${P\rightarrow Q}$$が真になることが何となく直観に合わないが、日常的には$${P}$$ならば$${Q}$$と言うとき、$${P}$$が真であることを前提としてることが多い。
そこで、$${P\land(P\rightarrow Q)}$$で見るように、$${P}$$を真と考えたときに、$${P}$$ならば$${Q}$$が真であれば$${Q}$$も真のはず、というのは日常的な意味ともしっくりくるのではないだろうか。

そして仮に$${P}$$が偽の世界($${\neg P}$$が真)においては、$${P}$$ならば$${Q}$$が真であったと主張しても、Qの真偽には言及していない。($${P}$$と$${Q}$$は独立なので)

学習前の勘違いを解消してみる

和集合の公理についての私の勘違いは、ここまでの議論で解消できる。

$$
 \forall X\exists Y\forall v( \exists w( v\in w\land w\in X) \leftrightarrow v\in Y)
$$

まず公理なのでこの命題が真であるということが前提である。
私は「任意の$${v}$$で真であるためには、$${Y}$$は任意の$${v}$$を含んでないと真にならないのでは?」と考えていたが、実は$${Y}$$がある$${v}$$を含まずとも真なのである。

例えば$${X=\{\{1,2\},\{2,3\}\}}$$を考えたときに、この命題の言うところでは$${Y=\{1,2,3\}}$$という集合が存在することが前提なのであるが、
この時にまず、$${v=1}$$を考えると、$${1\in \{1,2\}\in X}$$であり、選んだ$${Y}$$も$${1\in Y}$$になる。
そこで、$${\exists w( v\in w\land w\in X) \rightarrow v\in Y}$$も$${\exists w( v\in w\land w\in X) \leftarrow v\in Y}$$も真と評価される。

次に$${v=4}$$を考えると、$${\exists w( v\in w\land w\in X)}$$が偽であるが、含意の評価では$${\exists w( v\in w\land w\in X) \rightarrow v\in Y}$$は真となる。
そして、選んだ$${Y}$$については$${v\in Y}$$が偽であるが、含意の評価では$${\exists w( v\in w\land w\in X) \leftarrow v\in Y}$$は真となる。
つまりこのように、常に論理評価が真となる$${Y}$$が存在してる前提に立つという公理である。

ちなみに、$${Y=\{1,2,3,4\}}$$を選べば、$${v=4}$$のときに$${v\in Y}$$が真、$${\exists w( v\in w\land w\in X)}$$が偽となるので、$${\exists w( v\in w\land w\in X) \leftarrow v\in Y}$$は偽となる。

更なる疑問

ここまでの理解である程度論理式を見ることができるようになったのだが、個人的に引っかかる点があった。
この命題と呼ばれるものは、”$${真:1}$$か$${偽:0}$$のいずれかが定まる主張”だというが、”$${A}$$は$${B}$$である”といった構文自体を命題というのか、その真偽を評価する機能を含めて命題といってるのか、、、

原子命題(原子式)であれば構文を扱ってるように見えるし、複合命題(複合式)であれば論理記号での結合が、構文そのものに作用しているのか評価機能への作用なのか、どちらとも取れそうな気がする。

このあたりの理解を深めるべく、写像によって命題と論理を理解することがゴールであるが、次の記事に回す。

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