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私の人生に現れた、自由の女神

彼女たちは台風のように現れ、
私の中の「何か」を壊して去っていった。

真由美さん
彼女と出会ったのは、19歳の時だ。
アルバイト先にいた、一風変わった女性。
端正な顔立ちで、女性だけど玉置浩二に似ていた。

その頃、私は人生をさまよっていた。
進学も就職もせず、上京して姉の家で、
くさくさしていた。

真由美さんは、一緒に働くうちに、
ぽつりぽつりと自身の話をしてくれるようになった。

まだ人生経験のかけらもなかった私に、それは強烈すぎた。

当時は、こんな人もいるんだ、と思っていたけれど、今考えても、滅多にいないような逸材だったと思う。

彼女の居場所は、常に世界だった。

ある時は、北欧の牧場にいた。
羊飼いのサポートのアルバイトだ。
ひと夏を、来る日も来る日も羊を追い、夜には星を数えて過ごしたという。

冬には、砂漠のベドウィン族と3週間共に暮らした。
一日中、シーシャを吸っていたらしい。

またある時は、中東のある町を旅していると、紛争のようなものが起きた。
にわかに物騒になり、危険を感じた彼女は、頭を丸刈りにして、男装で切り抜けたと笑う。

ベドウィン族なんて聞いたことすらなく、「モスク」や「シーシャ」という言葉を教えてくれたのも、彼女だ。

ある時から連絡が途絶え、それきりになってしまった。
彼女が今も冒険を続けているかは、わからない。


リタさん
彼女と出会ったのは、ずいぶん前にあった「ひらがなタイムズ」という小冊子がきっかけだった。

当時バリ島に魅せられていた私は、インドネシア語を勉強していて(結局今も話せないままだが)、
その小冊子の掲示板に「インドネシア人と友達になりたい」と投稿した。

リタさんは、自分より少し年上の、小柄でよく笑う人だった。

日本語がペラペラで、NHKのインドネシア語講座のスタッフに応募した時は、
「日本語なまりがすごい」という理由で落とされていた。
インドネシア人なのに、とがっかりしながら、旦那さんと大笑いしていた。

自宅に呼んでもらったときは、旦那さんを紹介してくれた。
オックスフォード大学を首席で卒業したというイギリス人の旦那さん。
それまで外国人と接したことがなかった私の記憶では、確かジョン・レノン顔だった。

彼らの話はいつも、私からしたら、突拍子もなく感じられた。

西早稲田の、築50年という古いアパートを二室続きで借りたかと思うと、壁をぶち抜いて「広くなった」という。

仕事を辞めて(どう考えてもエリート職業なのに!)、大学に夫婦で入り直そうとか。

外国人って面白いな、という印象だったけれど、彼女も実は飛びぬけていたようだ。


モーちゃん
モーちゃんとは、ネットのアプリで知り合った。
確か「一緒に山に行ける人」、という内容だったと思う。

初めて会うときに、指定された場所は高尾山だった。

世界有数のメゾンに勤める彼女は、とても質素な女性だ。
メイクもマニキュアも、口紅すらつけているのを見たことがない。
でもなぜか、どこから見ても品があった。
高級時計も、流行りの洋服も一切身に着けていないのにだ。

彼女の好奇心は、常に世界に向いている。
エジプトまでスキューバダイビングをしに行ったり、
伊豆でイルカと泳いできたかと思えば、
パキスタンまでサーフィンをしに行く(全部一人で)。

「日焼け止め」とか「折り畳み傘」のような、
保険は一切持たない。

フランス人である彼女が帰国する前、
今度フランスに遊びに行くね、と言うと、

「それじゃあ、ロバを借りて、一緒に旅をしよう」
などと言ってくる。

ロバ?
今ロバって言った?
フランスでロバ?

「そうよ、ほら、見て」

彼女は、実際にロバを連れて旅をした時の写真まで見せてくる。
ほ、本当なんだな…。

彼女たちは、私が疑いもしなかった
「普通に生きていくこと」のルールを、
軽やかに、そして片っ端から壊していった。

学校を卒業したら、
 仕事をするんじゃないの?

就職したら、
 辞めずに頑張るものじゃないの?

誰かと知り合い、結婚したら、
 その次は子どもを期待されて……。

そうではない人生もあるのだと、彼女たちを見て知った。

彼女たちと出会うたび、
自分の頭の中に窓が開いていくような気がした。

自由に生きる人、と聞くと「強い人」を想像すると思う。
でもそうではなかった。

彼女たちは誰よりも純粋で、ナイーブで、だからこそ自分の心に嘘がつけない人たちだったのだ。

それに気づいてから、
彼女たちのような人に出会うと、目が離せなくなった。

台風のように現れて、私の中に「窓」を開けて、去っていった。

生きていくエネルギーが、桁違いなのだ。

彼女たちを思い出すと、つい笑ってしまう。

気づけば私も、還暦を迎える歳になった。

もう自分で自分に風穴を開けてもいいんじゃないだろうか。

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