社会心理学:第4回 社会的自己 — 鏡に映る自己と自己のマネジメント
社会心理学:第4回 社会的自己 — 鏡に映る自己と自己のマネジメント
1. はじめに:自分を知っているのは、本当に「自分だけ」なのか
前回の講義では、他者の印象がどのように形成されるのか、そして他者の不可解な行動の原因を私たちの脳がどのように推論(帰属)しているかを学びました。他者の「状況」を過小評価し、「性格や資質」を過大評価してしまう「根本的な帰属の誤り」など、社会的認知に潜む様々なバイアスを解剖したはずです。
【第1部:社会心理学の基礎と「自己・他者の認識」】の締めくくりとなる第4回のテーマは、他者から再び「自分自身」へと視線を戻す、「社会的自己(Social Self)」の本質です。
私たちは、自分がどういう人間か(自分の性格、長所、短所、価値観など)を最もよく知っているのは、自分自身に他ならないと信じています。しかし、社会心理学の視点から見ると、この自明な前提は大きく揺らぎます。
ここで、皆さんに1つの奇妙な思考実験を提示してみましょう。
日常の思考実験:もしも、この世界に「あなた1人」しかいなかったら
あなたがある日目覚めると、地球上のすべての人間が完全に消滅しており、あなた1人だけが残されたとします。水も食料も無限にあり、生存の危機はありません。この孤独な世界で、あなたは果たして次のような「自分自身の評価」を持ち続けることができるでしょうか。「私は、他人よりも頭が良い(あるいは悪い)」「私は、社交的でユーモアがある人間だ」「私は、容姿が美しく、魅力的な人間だ」
誰とも比べることもできず、誰の視線も存在しない世界では、「頭が良い」「社交的だ」「美しい」という自分に対する認識はすべて意味を失い、完全に消滅してしまいます。
なぜなら、私たちの「自己(自分についての認識)」とは、自分の内面をじっと観察して見つかるものではなく、「他者という鏡」に自分を映し出し、他者との関係性を媒介にすることでしか作り出すことができない共同構築物だからです。
私たちは他者からどう思われているかを気にしながら、他者という尺度を使って自分を測定し、同時に他者の前で「理想の自分」を演じ分けながら生きています。本日は、「鏡映自己」「社会的比較理論」、そして社会のなかで自分を演出する「自己呈示」や「セルフ・モニタリング」のからくりについて、徹底的に解剖していきます。
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