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社会心理学:第2回 社会的認知 — 私たちは社会をどう直感し、推論するか



1. はじめに:溢れかえる社会情報と私たちの脳の戦略

前回の講義では、社会心理学の全体像(シラバス)を俯瞰し、この学問が「個人の性格」ではなく「状況の力」に着目する実証科学であることを学びました。他者の存在が、私たちの行動やパフォーマンスにいかに無意識の影響を及ぼすか、その歴史的起源について理解が深まったはずです。

さて、今回は【第1部:社会心理学の基礎と「自己・他者の認識」】の核心である「社会的認知(Social Cognition)」の世界へと足を踏み入れていきます。

社会的認知とは、一言で言えば「私たちが、他者や社会的な出来事(ニュース、人間関係、集団のルールなど)に関する情報を、どのように受け止め、脳内で処理し、記憶し、推論に用いているか」というプロセスを研究する領域です。

ここで、皆さんに1つの素朴な問いを投げかけてみましょう。

日常の思考実験:初めて入るレストランでの振る舞い あなたが、これまで一度も訪れたことのない新しいカフェやレストランに入ったとします。お店のドアを開けてから席に着き、料理を注文して食べ、お会計を済ませて店を出るまで、あなたは「次はどう行動すればいいのだろう」と、1ステップごとに必死に頭を悩ませるでしょうか。 「まず席を探すべきか、それともレジで先に注文するのか」「目の前にあるナイフとフォークは何に使う道具か」「店員が料理を持ってきたら、どう対応すべきか」……。

おそらく、そんな風にパニックになる人はいないはずです。私たちは初めての場所であっても、ごく自然に、ほとんど脳のエネルギーを使うことなく、適切な行動を選択して店を後にすることができます。

なぜ、私たちは初めて直面する複雑な社会状況の中で、これほど迷わずにスマートに行動できるのでしょうか。それは、私たちの脳がこれまでの経験を通じて、世界を理解するための「ショートカット(近道)」の仕組みを無数に編み出しているからです。

私たちが生きる現代社会は、膨大な情報で溢れかえっています。もし、街ですれ違うすべての人、タイムラインに流れるすべてのニュース、日常のすべての選択に対して、100%完璧に論理的な分析を試みようとすれば、私たちの脳は一瞬でエネルギーを使い果たし、過熱してフリーズしてしまうでしょう。

脳は、いかにしてサボりながら、同時にいかにして正しく(あるいは時に致命的な勘違いをしながら)社会を生き抜いているのか。本日は、「スキーマ」「ヒューリスティック」、そして人間を「認知のケチ(コグニティブ・マイザー)」として捉える心理学的パラダイムについて、徹底的に解剖していきます。

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