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相続した空き家、貸すvs売るvs解体の損益分岐

空き家の出口は、3つしかない

実家を相続して、誰も住む予定がない—このとき、取れる選択肢は突き詰めると3つです。

貸す、売る、解体する。

どれを選ぶかで、その後の収支は大きく変わります。今回は、私自身の実体験も交えながら、3つの選択肢の損益分岐と、検討すべき「順番」を整理します。

実体験 ― 「田舎すぎて需要はない」は、二度覆された

以前のコラムでお伝えしたとおり、私は父が施設に入所したことをきっかけに、空き家になった実家を賃貸に出しました。人口8,000人ほどの郡部、築50年以上の古家です。

最初の入居は、裏の施設で働く外国人技能実習生の住まいとしてでした。正直、「たまたまの需要に恵まれた」と思っていました。だからこそ、その後に退去が出たとき、「さすがに次はないだろう。田舎すぎて需要はないかな」と、半ば諦めていたのです。

ところが、です。

賃貸募集サイトのECHOESを利用して募集をかけたところ、県外からの移住希望者から、2組同時に申込みが入りました。そして、無事に次の入居が決まったのです。

一度目は「たまたま」かもしれません。しかし二度目は、募集の仕方次第で需要は掘り起こせるという確かな手応えでした。「田舎だから借り手はいない」という思い込みは、二度も覆されたのです。貸すという選択肢は、想像以上に有用です。

検討の「順番」 ― 売却 → 賃貸 → 解体して土地売り

3つの選択肢は、やみくもに選ぶのではなく、順番に検討するのが合理的です。私の考える順番はこうです。

順番選択肢考え方
1.そのまま売却(現状有姿)手間も追加費用も最小。まず市場に問う
2.賃貸に出す売れなければ、貸して収益化を試す
3.解体して土地として売る立地により、近隣相場を調べたうえで最後の手段

ポイントは、いきなり解体しないことです。理由は後述しますが、解体には費用と税金の両面で大きなデメリットがあるためです。

「貸す」の損益分岐 ― リフォームではなく、残置物撤去と清掃で

貸す場合、最大の分かれ目は初期投資をどこまでかけるかです。

私の考えは明確です。大がかりなリフォームはせず、残置物の撤去と清掃で対応する。

古家に数百万円のリフォームをかけても、田舎の家賃水準では回収に何年もかかります。それよりも、「そのままでも住める状態」まで整えて、安めの家賃で貸し出すほうが、損益分岐点はぐっと手前に来ます。

そして、貸すと決めたら、募集の間口を広げることが勝負です。

  • Webで募集できる媒体(ECHOESのようなサイト)を活用する

  • 物件近隣の不動産会社にも周知して、地元の需要を拾う

私のケースでも、Web媒体だったからこそ、県外の移住希望者に届きました。地元だけで探していたら、出会えなかった需要です。

「売る」の損益分岐 ― まずは現状のまま市場に出す

売却も、最初から解体を前提にする必要はありません。

  • まず、現状有姿(建物付きのまま)で売りに出す

  • 古家に価値がなくても、「古家付き土地」として買い手がつくことは多い

  • 相続空き家の3,000万円特別控除が使えれば、税負担も大きく圧縮できる

現状有姿で反応がなければ、そこで初めて、次の一手(賃貸や解体)との比較に進みます。

「解体」の損益分岐 ― 税金6倍の罠に注意

解体は、最後の手段です。理由は2つあります。

第一に、解体費用そのものです。木造戸建てでも150万〜300万円程度かかります。

第二に、こちらが見落とされがちですが、解体すると土地の固定資産税が跳ね上がることです。住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」があり、固定資産税は6分の1、都市計画税は3分の1に軽減されています。建物を解体して更地にすると、この特例が外れ、固定資産税は最大6倍、都市計画税は3倍になってしまいます。

つまり、「売れるまでの間、更地で持ち続ける」ことは、税負担の面で非常に不利なのです。

解体するなら、この工夫を

それでも解体が必要な場合は、負担を抑える工夫があります。

  • 「解体費用は売主負担」などの条件付きで、解体前に売買契約を結ぶ:買い手がついてから解体すれば、更地で持ち続ける期間(=税金6倍の期間)を最小化できる

  • 自治体への確認も一考:自治体によっては、木を植えるなどして土地の扱い(課税上の地目)が変わる余地がある、という話もあります。認められるかは自治体の判断次第なので必ず事前確認が必要ですが、更地で長期保有せざるを得ない場合には、問い合わせてみる価値はあるかもしれません

損益分岐の全体像

3つの選択肢を、費用と収益の面から整理します。

選択肢初期費用の目安その後の収支貸す残置物撤去+清掃(数十万円程度〜)家賃収入。住宅用地特例も維持現状有姿で売るほぼゼロ(仲介手数料は成約時)売却代金。3,000万円控除の可能性解体して土地売り解体費150万〜300万円土地代金。ただし売れるまで税6倍

比較の手順はこうです。まず現状有姿での売却査定と、賃貸に出した場合の想定家賃を把握する。それでも動かなければ、解体費用と更地での売却見込みを比較する——。「貸す・売るを試してから、解体費用と比較する」この順番が、損失を最小化します。

「決めつけない」ことが、最大の損益分岐

私の実家は、「田舎すぎて需要はない」と二度思い、二度とも覆されました。

空き家の出口で最も損をするのは、実は「何もしないこと」と「思い込みで選択肢を狭めること」です。まず現状のまま市場に問い、貸す道を探り、最後に解体を検討する。この順番を踏むだけで、結果は大きく変わります。

お手元の空き家が、貸せるのか、売れるのか、解体すべきなのか——近隣相場の調査から出口の比較まで、賃貸経営の実務経験をふまえて一緒に整理します。

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※解体費用・税額・特例の適用可否は、物件の規模・立地・自治体の取り扱いにより異なります。課税上の地目や住宅用地特例の扱いは、必ず各自治体・専門家にご確認ください。

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