教育資金贈与が終了した今、孫にどう遺すか
最大1,500万円の非課税が、幕を下ろした
孫への資金援助の定番だった、教育資金の一括贈与の非課税制度。最大1,500万円までをまとめて非課税で渡せるこの特例は、2026年3月31日をもって終了しました(延長されませんでした)。
「孫の学費を援助したかったのに、道がなくなった」——そう感じている方も多いと思います。
けれど、結論から言えば、孫に財産を渡す道は、今もしっかり残っています。むしろ、終了した制度の"代わり"を知ることで、より柔軟な設計ができるようになります。今回は、制度終了後の「孫への遺し方」を整理します。
まず整理 ― 終了した制度と、残っている制度
混同しやすいので、関係する制度を一覧にします。

「18歳以上」という要件が出てくるのは、相続時精算課税と結婚・子育て資金です。終了した教育資金の一括贈与は「30歳未満」が対象でした。制度ごとに年齢要件が違うので、ここは混同しないよう注意が必要です。
本命 ― 「都度贈与」は、今も昔も非課税・上限なし
ここが、今回いちばんお伝えしたいことです。
実は、教育費を必要な都度、直接支払うことは、制度の終了と関係なく、もともと非課税です。
扶養義務者(祖父母を含む)の間で、教育費や生活費として「必要な都度」渡すお金には、贈与税がかかりません。しかも、金額の上限はありません。
孫の入学金を、祖父母が学校に直接振り込む → 非課税
授業料を、請求のたびに祖父母が支払う → 非課税
留学費用を、必要になった時点で負担する → 非課税
終了した一括贈与制度は、「将来の分までまとめて先渡しできる」点が特例だっただけです。必要なときに、必要な分を、直接払う—この王道は、何も変わっていません。
ポイントは「都度」と「直接」です。まとめて口座に振り込んで貯金に回ると贈与とみなされるため、学校への直接支払いや、請求に応じたその都度の負担、という形を守ることが大切です。
ルート② 暦年贈与 ― 孫は「7年加算」の対象外という強み
年110万円までの暦年贈与も、孫への定番ルートです。そして孫には、特有の強みがあります。
以前のコラムでもお伝えしたとおり、亡くなる前7年分の贈与を相続財産に足し戻す「生前贈与加算」は、相続や遺贈で財産を受け取る人への贈与が対象です。孫は通常、法定相続人ではないため、孫への暦年贈与は原則として7年加算の対象になりません。
つまり、直前の贈与でも足し戻されず、しかも相続を一世代スキップして財産を移せる。教育資金に限らず自由に使える点でも、柔軟性の高いルートです。
(ただし、遺言で孫に財産を遺す場合や、孫を生命保険の受取人にしている場合は、加算対象になるため注意が必要です。)
ルート③ 相続時精算課税 ― 18歳以上の孫なら選択肢に
18歳以上の孫であれば、相続時精算課税(60歳以上の祖父母から)も選べます。2024年からは年110万円の基礎控除が新設され、110万円以下の贈与なら申告不要・相続時の足し戻しも不要になりました。
まとまった額を早めに移したい場合や、値上がりが見込まれる資産を評価固定して渡したい場合に有効です。
ただし、孫ならではの注意点があります。相続時精算課税で贈与を受けた孫は、相続税の計算に取り込まれる際、相続税額の2割加算の対象になります。また、一度選ぶと暦年贈与に戻れません。メリットと負担を天秤にかけて判断する必要があります。
ルート④ 結婚・子育て資金の一括贈与 ― まだ使える一括型
「一括でまとめて渡したい」というニーズには、結婚・子育て資金の一括贈与(最大1,000万円、結婚関連は300万円まで)が、2027年3月31日まで残っています。対象は18歳以上50歳未満の子・孫です。
教育費とは使途が異なりますが、挙式費用、新居、出産・育児費用などをカバーできます。一括型の最後の受け皿として、要件が合えば検討の価値があります。
4つのルートの使い分け

組み合わせも可能です。たとえば「学費は都度贈与で直接払い、それとは別に年110万円の暦年贈与を続ける」——これだけで、かなりの規模の資産を、非課税または低負担で孫世代へ移せます。
制度が消えても、「渡す道」は消えていない
教育資金の一括贈与の終了は、たしかに選択肢を一つ減らしました。けれど、整理してみれば分かるとおり、孫への承継ルートはむしろ複数残っています。
教育費は、都度・直接払えば今も非課税・上限なし
孫への暦年贈与は、7年加算の対象外という強みがある
18歳以上なら相続時精算課税、結婚・子育て資金も選択肢
大切なのは、我が家の状況に合わせた組み合わせ
「孫に遺したい」という想いを、どのルートで、どう組み合わせて形にするか。ご家族の構成と資産の内容をふまえて、一緒に設計していきましょう。
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※各制度の要件・期限・課税関係は、家族構成や個別の事情により異なります。制度は今後も改正される可能性があります。具体的な実行は税理士等の専門家にご確認ください。
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