数次相続で相続人が15人に膨れ上がった家の話
実家1軒の名義変更に、15人の実印が必要になった
これは、相続の現場でよく見かける、ある家族の物語です。特定の誰かの話ではありませんが、「放置」がもたらす怖さを、きっと感じていただけると思います。
ある方が、亡くなった祖父名義のままになっていた実家を、ようやく売ろうとしました。ところが、名義変更(相続登記)をしようとした瞬間、耳を疑う事実を告げられます。
「この手続きには、相続人15人全員の署名と実印、印鑑証明が必要です」
会ったこともない親族を含む15人。なぜ、たった1軒の実家の名義変更に、これほどの人数が関わることになったのでしょうか。
なぜ、相続人は「15人」に膨れ上がったのか
原因は、数次相続と代襲相続が重なったことにあります。順を追って見てみましょう。
段階出来事相続人の状況発端祖父が死亡。実家の名義変更をせず放置祖母+子3人累積①手続きしないうちに祖母も死亡子3人へ累積②さらに子のうち2人も高齢で死亡各配偶者・孫へ分散代襲死亡した子の相続に、その子(孫)が加わる孫世代へ拡散結果相続人が合計15人に全員の合意が必要に
はじめは、祖母と子3人。ごくありふれた家族構成でした。ところが、相続手続きをしないまま年月が過ぎるうちに、相続人が次々と亡くなり、その相続がまた次の世代へと重なっていきました。
これが数次相続です。手続きを放置している間に相続が積み重なり、当事者がねずみ算式に増えていったのです。そこに、亡くなった子の代わりにその子(孫)が相続する代襲相続も加わり、気づけば相続人は15人に膨れ上がっていました。
「1人でも欠ける」と、すべてが止まる
相続人が15人になると、何が起きるのか。最大の問題は、遺産分割協議には全員の合意が必要という点です。
15人のうち、たった1人でも次のような人がいれば、手続きは完全に止まります。
音信不通で、連絡が取れない
認知症などで、判断能力を失っている
「自分にも権利がある」と、取り分を主張する
面識がなく、協力に消極的
一人が欠けるだけで、実家は売ることも、名義を変えることもできず、塩漬けになってしまいます。全員の足並みをそろえること自体が、途方もない労力になるのです。
費用も、手間も、雪だるま式に膨らむ
数次相続がもたらす負担は、人数だけではありません。
膨らむ負担内容戸籍収集相続人全員の出生から現在までの戸籍が必要。膨大な量になる連絡・調整全国、時に海外に散らばった親族との連絡・交渉専門家費用相続人が多いほど、司法書士などへの報酬も上がる時間全員の合意に至るまで、年単位でかかることも
「費用を惜しんで放置した」結果が、最終的に何倍もの費用と労力になって返ってくる——これが数次相続の実態です。
数次相続は「時間の経過」で必ず悪化する
ここで押さえておきたい、重要な事実があります。それは、数次相続は時間が経つほど、確実に事態が悪化するということです。
相続手続きを放置すればするほど、当事者は高齢化し、次の死亡によって相続人がさらに増えます。逆に言えば、早く着手すればするほど、関わる人数は少なく、話もまとまりやすいのです。
相続が起きた当初 → 当事者が少なく、合意しやすい
放置して数年〜数十年 → 相続人が累積し、収拾がつかなくなる
この差は、決定的です。
「放置しない」ことが、最大の対策
15人の実印を集める苦労は、元をたどれば「祖父の代で名義変更をしなかった」という、たった一つの放置から始まっています。
こうした事態を防ぐ方法は、シンプルです。
相続が起きたら、速やかに名義変更(相続登記)を済ませる
遺言書を用意し、そもそも協議が不要な状態にしておく
すでに名義が放置されているなら、当事者が少ない今のうちに着手する
なお、2024年4月から相続登記は義務化され、放置には過料のリスクも生じています。「いつかやろう」の先送りが、子や孫の代に、ほどけない結び目を残すことになりかねません。
もし、ご実家や田畑・山林などで「名義が昔のまま」という心当たりがあれば、相続人が増えてしまう前に、早めの確認をおすすめします。現状の整理から、一緒にお手伝いします。
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※本コラムは、よくある相談事例をもとにした架空のストーリーです。数次相続・代襲相続や相続登記の取り扱いは個別の事情により異なります。具体的な手続きは司法書士等の専門家にご相談ください。
