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相続税の税務調査、狙われやすい家の共通点

調査に入られた家の「8割」で、申告漏れが見つかっている

相続税の申告を終えて1〜2年後。税務署から一本の電話が入る——「相続税の調査について、お伺いしたいことがあります」。

これが、相続税の税務調査の始まりです。

国税庁の公表資料(令和6事務年度)によれば、実地調査が行われた約9,500件のうち、実に82.3%で申告漏れなどの指摘がされています。調査に選ばれた時点で、8割以上は「何かが見つかる」——税務署は、当たりをつけてから来るのです。

では、どんな家が「当たり」をつけられるのか。今回は、狙われやすい家の共通点と、税務署がなぜそれを見抜けるのかの仕組みを整理します。

狙われやすい家の共通点

調査先の選定基準は非公開ですが、実務上、次の特徴があると調査に発展しやすいと言われています。

狙われやすい家の共通点について

とりわけ筆頭に挙がるのが、名義預金です。実際、申告漏れが指摘された財産の内訳で最も多いのは現金・預貯金(約3割)。「土地の評価ミス」よりも、「家族名義に移したお金」が、調査の本丸なのです。

専業主婦の配偶者や、収入のない子・孫の名義に多額の預金がある。子どもは遠方に住んでいるのに、親の生活圏の銀行支店に口座がある——こうしたパターンは、典型的な着眼点とされています。

なぜバレるのか ― 税務署が持つ「3つの目」

「家の中のお金の動きが、なぜ税務署に分かるのか?」と思われるかもしれません。実は、税務署には制度に裏づけられた情報網があります。

① KSKシステム ― 生前の申告情報が全部つながっている

KSK(国税総合管理)システムは、全国の国税局・税務署をネットワークで結び、納税者の申告情報を一元管理する仕組みです。

給与・事業・不動産所得の申告、過去の不動産売却(譲渡所得)の申告——生前の収入の履歴は、ここに蓄積されています。だから、「生涯これだけ稼いだ人の遺産が、これしかないのはおかしい」というギャップの検知ができるのです。過去に1億円で土地を売った記録があるのに、申告された預金にその形跡がなければ、当然「そのお金はどこへ?」となります。

② 金融機関への照会 ― 家族名義の口座まで見られる

税務署は、金融機関に取引履歴を照会する権限を持っています。対象は故人の口座だけではありません。相続人など家族名義の口座も、必要に応じて過去10年分程度さかのぼって確認されます。

さらに、口座開設時の届出印や申込書の筆跡までチェックされることがあります。「子ども名義だが、印鑑は親と同じ。申込書の筆跡も親」——これで名義預金の心証は固まります。

③ 法定調書 ― 銀行・保険会社は「報告する義務」がある

「銀行は国と通じているのか?」という質問をよくいただきますが、感覚論ではなく、制度として情報が流れる仕組みがあります。

金融機関や保険会社には、一定の取引について税務署へ法定調書(支払調書)を提出する義務があります。生命保険金の支払い、配当の支払い、100万円を超える海外送金——これらは、支払った側から自動的に税務署へ報告されているのです。

また、法人を経営していた場合、法人税の申告書(役員への貸付金など)からも、会社と個人の間のお金の動きは把握されます。加えて、金融機関には犯罪収益移転防止法にもとづく「疑わしい取引の届出」義務もあり、不自然な多額の資金移動は当局に共有され得ます。

つまり、「こっそり動かしたつもりのお金」ほど、制度の網にかかっている——これが実態です。

狙われないために ― 対策は「調査前」ではなく「生前」から

ここまでの仕組みが分かれば、対策の方向も見えてきます。

  • 名義預金を作らない・解消しておく:贈与契約書と振込、本人管理——正しい贈与の形(以前のコラムで詳述)を整えておく

  • 直前の出金は、使途を記録する:医療費・葬儀の準備などで引き出した現金は、使いみちと残額をメモし、残った分は正直に申告する

  • 過去の売却代金の行方を説明できるようにする:何に使い、どこに残っているかを整理しておく

  • 財産目録を作っておく:漏れのない申告こそ、最大の調査対策

  • 判断が難しい財産(同族会社の株、不動産)は専門家に:税理士関与の有無は、選定にも影響すると言われます

税務調査は「隠したもの」を見つけるプロの仕事です。逆に言えば、隠すものがなく、説明できる状態にしておけば、恐れる必要はありません。

「知られている前提」で、正直に整える

相続税の税務調査について、押さえておきたいことを整理します。

  • 調査に入られた家の8割超で申告漏れが指摘されている

  • 本丸は名義預金。家族名義の預金は徹底的に見られる

  • KSK・金融機関照会・法定調書——お金の動きは制度的に把握されている

  • 対策は生前から。「正しい贈与」と「説明できる記録」がすべて

税務署に「知られていない」ことを前提にした対策は、もはや成り立ちません。知られている前提で、正しく整えておく——それが、結果的に家族を調査の負担から守る、唯一の道です。我が家の現状に不安があれば、整理の仕方から一緒に確認していきましょう。

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※税務調査の選定基準は公表されておらず、本コラムは公表統計と実務上の一般的な傾向に基づく情報です。個別の申告・調査対応は税理士等の専門家にご相談ください。

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