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「タワマン節税」の封じ込め、2024年からどう変わったか

かつて「最強の節税」と呼ばれた手法

相続対策の世界で、長らく「最強」と呼ばれた手法がありました。いわゆるタワマン節税です。

仕組みは、これまでのコラムでお伝えした「評価と実勢の差」の応用です。タワーマンションは、市場価格が非常に高い一方、相続税評価額(路線価・固定資産税評価額ベース)は大きく下回ります。国税庁の資料では、マンションの市場価格と評価額の乖離は平均2.34倍、総階数20階以上のタワーマンションでは3.16倍にものぼっていました。

つまり、市場価格の3〜4割程度の評価で済むケースもあり、現金をタワマンに換えるだけで、課税対象を大幅に圧縮できたのです。しかも高層階ほど市場価格は高く、評価との差が開くため、「高層階を買うほど節税になる」とまで言われました。

しかし、この手法は今、大きく様変わりしています。転機となったのが、有名な最高裁判決です。

転機 ― 令和4年4月19日の最高裁判決

大きな話題となったこの裁判の概要は、次のようなものでした。

項目内容経緯90歳の被相続人が、多額の借入をしてマンション2棟を約13億8,700万円で購入申告相続人は通達どおり路線価等で約3億3,000万円と評価し、借入金と相殺して相続税を0円で申告国税の対応「著しく不適当」として鑑定評価額の約12億7,300万円で更正処分結果最高裁で納税者側の敗訴が確定

注目すべきは、納税者は「国のルール(財産評価基本通達)どおりに評価した」という点です。ルールに従ったのに、なぜ否認されたのか。

根拠となったのが、通達の「総則6項」——「通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産は、国税庁長官の指示を受けて評価する」という、いわば伝家の宝刀です。

最高裁は、多額の借入によってマンションを購入し相続税を0円にするような行為は、同じことができない他の納税者との間で「実質的な租税負担の公平に反する」と判断しました。ルールどおりの評価であっても、行き過ぎた節税は否認され得る——この判決は、相続実務に大きな衝撃を与えました。

2024年から ― マンション評価の新ルール

この判決を契機に、国税庁はマンションの評価ルールそのものを見直しました。2024年(令和6年)1月1日以降の相続・贈与から、新しい評価方法が適用されています。

新ルールの考え方は、シンプルに言えばこうです。

市場価格との乖離が大きいマンションは、評価額を「市場価格の6割」水準まで引き上げる

具体的には、築年数・総階数・所在階・敷地持分などから「評価乖離率」を計算し、評価水準(時価に対する評価額の割合)が6割未満の場合は、理論上の市場価格の6割になるよう評価額を補正します。

評価水準取り扱い0.6未満(乖離が大きい)市場価格の6割まで評価額を引き上げ0.6以上1以下補正なし(従来どおりの評価)1超評価額を引き下げる補正

なぜ「6割」なのか。それは、戸建て住宅の評価額が市場価格の6割程度(乖離率1.66倍)であることに合わせたためです。マンションだけが極端に有利だった状況を、戸建てと同じ水準にそろえた、ということです。

改正後、どうなったか

新ルールの導入で、状況は次のように変わりました。

① 「大幅な節税」は見込めなくなった

市場価格の3〜4割で評価されていたタワマン高層階も、6割水準まで引き上げられました。評価の圧縮幅が小さくなった分、かつてのような劇的な節税効果は失われています。

② それでも「4割引き」の効果は残る

一方で、評価額が市場価格の6割ということは、裏を返せば現金より4割低く評価されるということです。現金や有価証券で持つより、不動産で持つほうが評価上有利という基本構造は、今も変わっていません。「封じ込め」とは、過度な節税の封じ込めであって、不動産の評価メリットそのものが消えたわけではないのです。

③ 総則6項のリスクは残っている

新ルールの補正は画一的な計算です。それでもなお実勢価格との乖離が著しい場合や、行き過ぎた節税と見られる場合には、総則6項による否認の余地は残されています。「ルールどおりだから安全」とは言い切れない——これが最高裁判決の残した教訓です。

この一連の流れが教えてくれること

タワマン節税の封じ込めは、単なる制度変更ではなく、相続対策のあり方への警鐘でもあります。

  • 評価と実勢の差を突いた「過度な節税」は、否認されるリスクがある

  • 特に、高齢になってからの多額の借入による駆け込み購入は危険信号

  • 節税「だけ」を目的とした不動産購入は、判決でも問題視された

  • 不動産の評価メリット自体は健在。ただし「実需のある健全な活用」が大前提

賃貸需要のある物件を、収益目的で長期保有する——そうした実態のある不動産活用であれば、評価減は本来の趣旨どおりに機能します。問われているのは、「節税ありき」か「経営ありき」かの姿勢です。

制度は毎年のように変わります。古い知識のままの対策は、思わぬリスクを招きかねません。最新のルールをふまえ、我が家に合った無理のない対策を、一緒に整理していきましょう。

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※マンションの評価乖離率・補正の計算や総則6項の適用は、物件や個別の事情により異なります。本コラムは令和4年最高裁判決および2024年適用の評価ルールに基づく一般的な情報です。具体的な評価・申告は税理士等の専門家にご確認ください。

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