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葬儀費用は相続財産から引ける?—控除できるもの・できないもの

結論 ― 引けます。ただし「線引き」がある

「葬儀にかかったお金は、相続税の計算で引けるのか?」

ご相談でよくいただく質問です。結論から言えば、引けます。

葬儀費用は、厳密には故人の債務ではありませんが、相続に伴って必然的に発生する支出であることから、相続財産から差し引ける(債務控除できる)ことになっています。葬儀費用が200万円かかれば、課税対象となる財産がその分減り、相続税も軽くなるわけです。

ただし、葬儀に関連する支出なら何でも引けるわけではありません。「控除できるもの」と「できないもの」の線引きがあり、ここを誤ると申告のやり直しにもつながります。今回は、その整理と実務の注意点をお伝えします。

控除できるもの ― 「葬儀そのもの」にかかった費用

控除の対象になるのは、おおむね「お通夜・葬儀・埋葬まで」に直接かかった費用です。

控除できる費用について

ポイントは、お布施や戒名料も控除できるという点です。お寺から領収書が出ないことが多いですが、「いつ、どこの寺院に、いくら支払ったか」をメモしておけば認められます。支払いの都度、記録を残しておきましょう。

控除できないもの ― 「葬儀の後」や「儀礼の範囲外」

一方、次の費用は控除できません。

控除できない費用について

間違えやすいのが、香典返しと会葬御礼の区別です。参列へのお礼として当日渡す会葬御礼は控除でき、香典への返礼である香典返しは控除できません。

また、お墓や仏壇が控除できないのは、以前のコラムでお伝えした「非課税財産」だからです。相続税がかからない財産を買う費用まで引くことはできない、という理屈です(だからこそ、お墓は生前に買っておくことに意味があるのでした)。

なお、初七日の費用も、葬儀と同日に一体で行われ、葬儀費用と区分されずに請求されている場合には、実務上まとめて控除が認められることがあります。請求書の内訳がここで効いてきます。

実務の基本 ― 領収書と記録を、必ず残す

控除を確実に受けるための実務は、シンプルです。

  • 葬儀社の請求書・領収書は、内訳の分かる形で保管する

  • お布施・心付けなど領収書のないものは、金額・日付・支払先をメモする

  • 誰が立て替えたかも記録しておく(後の精算と、遺産分割の透明性のため)

葬儀の慌ただしさの中で記録が散逸しがちですが、この一手間が、10ヶ月後の申告で効いてきます。

注意点 ― 「故人の預金で払う」ときのリスク

ここからが、今回とくに強調したい注意点です。

以前のコラムで、遺産分割前でも故人の預金を引き出せる仮払い制度(1金融機関150万円まで)をご紹介しました。葬儀費用の支払いは、まさにこの制度の想定する典型的な使いみちです。

ただし、思い出していただきたいことがあります。

相続放棄の可能性が少しでもあるなら、故人の預金には安易に手をつけない。

仮払い制度で引き出したお金を使うと、相続財産を処分したものとして単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。3ヶ月の熟慮期間内であっても、です。

「葬儀費用のためなら大丈夫では?」と思われるかもしれません。たしかに、社会的に相当な範囲の葬儀費用への充当であれば、単純承認にあたらないと判断された例もあります。しかし、その線引きは個別判断で、確実ではありません。

実務の安全策は、こうです。

  • 故人に借金がある可能性が少しでもあるなら、葬儀費用はいったん自分の財布から立て替える

  • 故人の預金からの支払いは、放棄しないと決めてから

  • 立て替えた分は、領収書を保管し、後で相続財産から精算する

「放棄するかもしれないのに、故人の口座から支払ってしまった」——この一手が、借金ごと相続する結果を招きかねません。順番を間違えないことが肝心です。

香典は「相続財産ではない」ことも知っておく

あわせて、よく聞かれる点を一つ。

参列者からいただく香典は、相続財産ではありません。喪主への贈与と考えられており、相続税の対象外です(常識的な金額であれば贈与税・所得税もかかりません)。

その代わり、先ほどのとおり香典返しの費用は控除できない——香典が非課税である以上、その返礼も税の計算の外、という対応関係になっています。

まとめ ― 「引けるもの」を漏らさず、「順番」を間違えない

  • 葬儀費用は相続財産から控除できる。お布施・戒名料も記録があればOK

  • 香典返し・法要・墓や仏壇の費用は控除できない

  • 領収書とメモを残すことが、控除を確実にする

  • 放棄の可能性があるうちは、故人の預金から払わない(立て替えが安全)

  • 香典は相続財産ではない

葬儀の前後は、悲しみの中で判断の連続です。「何を引けるか」「どの財布から払うか」——この2つを知っているだけで、税負担とリスクの両方を確実に減らせます。相続全体の流れの中で、一つひとつ整理していきましょう。

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※葬儀費用の控除の可否や単純承認の判断は、個別の事情により異なります。具体的な申告・手続きは税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。

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