外貨建て資産・暗号資産の相続、評価と手続きの落とし穴
資産の「国際化・デジタル化」は、相続にも及んでいる
外貨預金、米国株、ドル建て保険、そしてビットコインなどの暗号資産——。資産運用の多様化により、こうした「円の預金や国内不動産以外の資産」を持つ方が増えています。
当然、これらも亡くなれば相続財産です。ところが、外貨と暗号資産には、円建ての資産にはない評価と手続きの独特なルールがあり、知らないと申告漏れや思わぬ課税につながります。今回は、その落とし穴を整理します。
外貨建て資産の評価 ― 使うレートは「TTB」
外貨預金やドル建て資産を相続したら、相続税の計算のため、円に換算して評価します。ここで最初の落とし穴が、どの為替レートを使うかです。
金融機関の為替レートには、よく似た3種類があります。

相続税評価で使うのは、課税時期(亡くなった日)における、取引金融機関が公表するTTB(対顧客直物電信買相場)です。「外貨を円に換えたら、実際いくらになるか」という買相場で評価する、と決められています。実務ではTTSと取り違える誤りが少なくないので、要注意です。
細かい実務ポイントも押さえておきましょう。
亡くなった日が土日祝で相場がない場合は、その日より前で最も近い日(直前の営業日)のTTBを使う
レートは、被相続人(または相続人)の取引金融機関のものを使用。残高証明書にTTBが記載されていることもある
外貨は評価すればおしまいではなく、相続後に円へ換えた際、レート変動による為替差益が出れば、相続税とは別に所得税の対象になることがある
最後の点は見落とされがちです。「相続税を払って終わり」ではなく、換金のタイミングでもう一段、税金の論点があるのです。
暗号資産の相続 ― 「デジタルの財産」ならではの手続き
ビットコインなどの暗号資産も、もちろん相続財産であり、相続税の課税対象です。評価は、原則として亡くなった日の時価(取引所の価格など)で行います。価格変動が激しいため、残高証明の取得と評価時点の確認が重要になります。
手続きの流れは、おおむねこうです。

国内の主要取引所であれば、故人のIDやパスワードが分からなくても、戸籍などの相続書類を提出すれば手続きを進められます。「パスワードが分からないから諦める」必要はありません。
暗号資産の「3つの落とし穴」
ただし、暗号資産には特有のリスクがあります。
落とし穴① 存在自体に、家族が気づけない
暗号資産はスマホの中で完結し、郵便物も通帳もありません。家族がその存在を知らなければ、財産は永久に発見されないままです。取引所からの通知メールや、スマホのアプリが唯一の手がかりになることもあります。
落とし穴② 個人管理のウォレットは「秘密鍵」がすべて
取引所を介さず、個人のウォレット(ハードウェアウォレット等)で管理していた場合は、事情が一変します。秘密鍵(またはリカバリーフレーズ)が分からなければ、その資産は誰にも、永遠に取り出せません。取引所のような「相続手続きで救済」の仕組みがないのです。海外取引所の場合も、外国語での手続きや秘密鍵の要求など、難易度が大きく上がります。
落とし穴③ 取り出せなくても、課税はされ得る
恐ろしいのはここです。秘密鍵が分からず引き出せない暗号資産でも、相続財産として把握されれば、相続税の課税対象となり得ます。「使えないのに、税金だけかかる」——最悪の事態です。だからこそ、生前の情報の引き継ぎが決定的に重要になります。
生前の備え ― 「ありか」と「開け方」を残す
外貨・暗号資産の相続トラブルは、そのほとんどが生前の一手間で防げます。
財産目録に、外貨預金・外国株・暗号資産の「ありか」(金融機関・取引所名)を書く
暗号資産は、取引所か個人ウォレットかを明記する
個人ウォレットの秘密鍵・リカバリーフレーズは、安全な形で保管し、その保管場所を信頼できる家族に伝える(エンディングノートに直書きは避ける)
海外口座・海外資産があるなら、その旨も必ず記録する(海外財産は税務署も注視する領域です)
とくに暗号資産は、「本人しか開けられない金庫」を持っているのと同じです。金庫の存在と鍵のありかを伝えずに亡くなれば、財産は失われ、税金の問題だけが残りかねません。
まとめ ― 新しい資産には、新しい備えを
外貨建て資産は、亡くなった日のTTB(電信買相場)で円換算して評価。TTSとの取り違えに注意
相続後の換金では、為替差益に所得税がかかることも
暗号資産は死亡日の時価で評価。国内取引所ならパスワード不明でも相続手続き可能
個人ウォレットは秘密鍵がなければ取り出せず、それでも課税され得る
対策は「ありか」と「開け方」の生前の引き継ぎに尽きる
資産のかたちが多様になるほど、相続の備えも更新が必要です。円預金と不動産だけだった時代の常識のままでは、大切な資産が宙に浮いてしまいます。運用資産・デジタル資産まで含めた財産の棚卸しから、一緒に整えていきましょう。
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※外貨・暗号資産の評価方法や取引所の相続手続きは、金融機関・取引所や個別の事情により異なります。為替差益の課税や海外資産の申告を含め、具体的な対応は税理士等の専門家にご確認ください。
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