法定相続情報一覧図—戸籍の束を「1枚」にする便利制度
相続手続きの「地味だけど深刻な」ストレス
相続手続きを経験した方が、口をそろえて言う不満があります。
「行く先々で、同じ戸籍の束を何度も出させられる」
相続の手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍一式と、相続人全員の戸籍——分厚い書類の束が必要です。そしてこの束を、銀行、証券会社、法務局、税務署……手続き先ごとに提出しては返却を待ち、また次へ提出する。
戸籍の束は1セットしかないことが多いため、手続きは事実上の「順番待ち」になります。A銀行が確認を終えて返してくれるまで、B銀行の手続きが始められない——。相続手続きが何ヶ月もかかる一因が、ここにあります。
この問題を一気に解決するのが、今回ご紹介する法定相続情報証明制度、通称「法定相続情報一覧図」です。
法定相続情報一覧図とは ― 戸籍の束の「公的なダイジェスト版」
法定相続情報一覧図とは、「誰が亡くなり、相続人は誰か」という相続関係を1枚にまとめた図を、法務局(登記官)が認証してくれる制度です。2017年に始まりました。
イメージは、家系図に近い形です。亡くなった方を中心に、配偶者・子などの相続人が線でつながった図に、法務局の認証文が付きます。

最大のポイントは、無料で必要な枚数だけもらえることです。
何がそんなに便利なのか ― 「順番待ち」が「同時進行」になる
この制度の威力は、複数の手続きを同時に進められることに尽きます。

たとえば、銀行3行・証券会社1社・法務局(相続登記)・税務署(相続税申告)に手続きが必要なら、一覧図を6枚もらっておけば、すべて同時に進められます。戸籍の束の「貸し出し待ち」から解放されるのです。
使える主な手続きは、次のとおりです。
銀行・証券会社などの預貯金・有価証券の相続手続き
不動産の相続登記
相続税の申告
保険金の請求、年金関係の手続き など
取得の流れ ― 一度だけ戸籍を集めれば、あとは1枚
取得のステップは、シンプルです。

申出できる法務局は、亡くなった方の本籍地・最後の住所地、申出人の住所地、不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局です。
ここで、誤解のないように大切な補足を2つ。
一つ目は、一覧図を「作る」のは申出人側だということです。法務局が図を作ってくれるわけではありません。図の作成は申出人(または依頼を受けた司法書士等の専門家)の仕事で、法務局はそれを戸籍と照合して確認・認証し、交付する役割です。法務局サイトの様式・記載例に沿って正確に作ることが、スムーズな交付への近道です(記載に誤りがあると、修正のやり取りで日数が延びます)。
二つ目は、交付までの期間です。申出からおおむね1週間〜10日程度が目安で、即日交付ではありません(登記官による確認・審査があるためです。混雑状況や郵送でのやり取りにより、2週間以上かかることもあります)。前提となる戸籍収集の期間も合わせると、トータルで3〜4週間程度を見込んでおくと現実的です。銀行手続きなどで使う予定があるなら、相続発生後なるべく早い段階で、戸籍収集と申出に着手しておくことをおすすめします。
つまりこの制度は、「戸籍集めは一度だけ。あとは1枚の紙が束の代わりに走り回ってくれる」仕組みです。前回ご紹介した戸籍の広域交付制度(最寄りの役所で戸籍をまとめて取得)と組み合わせれば、「近所で集めて、1枚にまとめる」——戸籍まわりの負担は、数年前とは比べものにならないほど軽くなっています。
知っておきたい注意点
便利な制度ですが、限界と注意点もあります。
戸籍収集そのものは省略できない:一覧図を作るために、最初の1回は戸籍一式が必要です
記載されるのは「法定相続人が誰か」まで:誰がどの財産を相続するか(遺産分割の内容)は書かれません。遺産分割協議書や遺言書は、別途必要です
相続放棄・廃除は反映されない:一覧図は戸籍上の相続人を示すもの。放棄した人も載るため、放棄がある場合は放棄の証明書を別途添付します
数次相続は1枚にまとめられない:相続が重なっている場合は、相続ごとに別の一覧図が必要です
ごくまれに一覧図非対応の手続き先も:事前に提出先へ「法定相続情報一覧図で可か」を確認すると確実です
「手続きが多い相続」ほど、真価を発揮する
法定相続情報一覧図を整理します。
戸籍の束の代わりになる、法務局認証の「相続関係を示す1枚」
無料で必要枚数もらえ、複数の手続きを同時進行できる
戸籍集めは最初の一度だけ。広域交付と組み合わせれば負担は最小に
遺産分割の内容や相続放棄は別書類。万能ではない点も押さえて
口座が多い、不動産がある、証券もある——手続き先が多い相続ほど、この1枚の価値は大きくなります。逆に、手続きが1〜2件だけなら、戸籍の束をそのまま使ったほうが早いこともあります。我が家の相続で使うべきかどうかも含めて、手続き全体の段取りから一緒に整理していきましょう。
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※法定相続情報証明制度の申出方法・必要書類の詳細は、法務局の案内をご確認ください。一覧図の作成・申出は司法書士等の専門家に依頼することもできます。
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