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遺産分割でもらった不動産を売ったときの「取得費加算の特例」

相続した不動産を売ると、税金はどうなるのか

遺産分割で実家や土地を相続し、その後に売却する——よくある流れですが、ここで直面するのが譲渡所得税です。

売却額から取得費(買ったときの値段など)と譲渡費用を引いた利益に対し、所有期間5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%の税金がかかります。なお、相続した不動産の所有期間と取得費は、亡くなった方のものを引き継ぎます。親が30年前に買った土地なら、長期保有として20.315%が適用される、ということです。

そして、相続して売る人だけが使える税負担の軽減策があります。それが今回のテーマ、取得費加算の特例です。

取得費加算の特例 ― 払った相続税を「取得費」に上乗せできる

この特例の仕組みは、こう理解してください。

相続税を払って取得した財産を売るなら、その財産にかかった相続税の分を、取得費に加算してよい。

取得費加算の特例について

「相続税を払い、さらに売却益にも課税されるのは二重に重い」——その調整のための制度です。ポイントは期限で、相続開始から約3年10ヶ月を過ぎると使えなくなります。「いずれ売るなら早めに」の、税務上の根拠がここにあります。

混同注意 ― 「空き家の3,000万円控除」とは別の制度

ここで、非常に混同されやすい論点を整理します。

「相続して3年以内に売れば、3,000万円控除が使えるんですよね?」——このご質問をよくいただきますが、それは別の特例の話です。

空き屋の3000万円控除との違いについて

そして、最重要ポイントがこれです。

この2つの特例は、併用できません。どちらか一方の選択です。

どちらが有利かは、納めた相続税の額と、売却益の大きさで変わります。一般に、売却益が大きく3,000万円控除の要件を満たすなら3,000万円控除が有利なことが多く、相続税を多額に納めた場合や、控除の要件(居住用・耐震など)を満たさない土地・収益物件などでは取得費加算の出番になります。売る前に、両方を試算して選ぶことが欠かせません。

もう一つの落とし穴 ― 「契約書がない」と利益が激増する

相続した不動産の売却で、実務上たいへん多いのが、取得費が分からない問題です。

譲渡所得の計算には「いくらで買ったか」を示す当時の売買契約書が必要です。ところが、先祖代々の土地や、何十年も前に親が買った家では、契約書が残っていないことが珍しくありません。

この場合、概算取得費として売却額の5%を取得費とみなすルールが適用されます。

たとえば3,000万円で売れた土地の契約書がなければ、取得費はわずか150万円。差し引き2,850万円が利益として課税対象になってしまいます。実際にはもっと高く買っていたとしても、証明できなければこの扱いです。

だからこそ——

  • 生前のうちに、不動産の売買契約書・領収書を探して保管しておく(親に確認できるのは今だけです)

  • 契約書が見つからない場合こそ、取得費加算や3,000万円控除の適用可否が税額を大きく左右する

「書類の整理」も立派な相続対策である理由が、ここにあります。

適用の前提 ― 「未分割」では動けない

もう一点、これまでのコラムとつながる注意点です。

取得費加算の特例は、「誰がその不動産を相続し、いくら相続税を納めたか」が決まって初めて計算できます。つまり、遺産分割協議がまとまらず未分割のままでは、売却も特例の適用も進みません。

3年10ヶ月という期限は、もめていればあっという間です。「分割の遅れが、税負担の増加に直結する」——ここでも、早期の合意形成が物を言います。

売却前の「試算」が、数百万円を分ける

相続不動産の売却と税金について、整理します。

  • 相続税を納めた人は、申告期限から3年以内の売却で取得費加算の特例が使える

  • 空き家の3,000万円控除とは別制度で、併用不可。売る前に両方を試算して選ぶ

  • 契約書がないと取得費は売却額の5%扱い。書類の確保は生前から

  • 未分割では特例も売却も進まない。期限(約3年10ヶ月)を意識した早期の分割を

同じ不動産を、同じ値段で売っても、「いつ売るか」「どの特例を選ぶか」「書類があるか」で、手取りは数百万円単位で変わります。売却を考え始めた段階で、出口までの税金を含めた試算を——不動産と相続の両面から、一緒に整理していきましょう。

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※取得費加算の特例・空き家の3,000万円特別控除の適用要件や有利判定は、個別の事情により異なります。売却前に必ず税理士等の専門家にご確認ください。

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