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貸家建付地・貸家の評価減、賃貸オーナーだけが使える節税

「貸している」だけで、相続税評価は下がる

前回のコラムで、土地には4つの価格があり、相続税は路線価で評価されるとお伝えしました。実は、賃貸オーナーには、この路線価評価をさらに下げられる仕組みがあります。

それが、貸家建付地と貸家の評価減です。

同じ土地・同じ建物でも、「自分で使っている」場合と「人に貸している」場合とでは、相続税評価額がまったく変わります。今回は、賃貸オーナーだけが使えるこの節税の仕組みと、その注意点を整理します。

なぜ「貸している」と評価が下がるのか

理由はシンプルです。人に貸している不動産は、所有者が自由に使えないからです。

賃貸中の物件には入居者の権利(借家権)があり、オーナーの都合で勝手に退去させたり、建て替えたりはできません。この「自由に使えない分」を割り引いて評価しましょう、というのが評価減の考え方です。

つまり、貸家の評価減は、特別な優遇ではなく「使用が制限されている実態」を評価に反映した仕組みなのです。

建物の評価減 ― 貸家は約3割下がる

まず、建物(貸家)の評価です。計算式は次のとおりです。

貸家の評価額 = 固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)

借家権割合は全国一律30%です。満室(賃貸割合100%)なら、建物の評価は3割減になります。

さらに知っておきたいのが、そもそも建物の固定資産税評価額は、建築費よりかなり低くなるという点です。具体例で見てみましょう。

段階金額建築費1,666万円(例)固定資産税評価額(建築費の6割程度)1,000万円貸家としての相続税評価額1,000万円 × (1 − 30% × 100%) = 420万円

現金1,666万円で持っていれば、そのまま1,666万円が課税対象です。ところが、その現金で貸家を建てると、相続税評価は420万円程度まで圧縮されます。この差が、貸家が相続対策に使われる理由です。

なお、建築工事の途中で相続が発生した場合は、支払った工事費の70%相当額で評価される扱いになります。

図解:貸家で相続税対策

土地の評価減 ― 貸家建付地

次に、貸家が建っている土地(貸家建付地)の評価です。

貸家建付地の評価額 = 路線価 × 敷地面積 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

借地権割合は地域ごとに30〜90%で定められており(路線価図に記載)、借家権割合は30%です。

たとえば、借地権割合60%の地域で満室経営している場合、1 − 60% × 30% × 100% = 82%。つまり、更地評価から18%引きになります。

図解:土地の評価減

「賃貸割合」に注意 ― 空室が多いと効果が薄れる

計算式に共通して登場する「賃貸割合」には、注意が必要です。

賃貸割合とは、その建物のうち実際に賃貸されている部分の割合のこと。空室が多ければ、その分だけ評価減の効果は小さくなります。

賃貸割合建物の評価減満室(100%)30%減半分空室(50%)15%減

一時的な空室(入退去の入れ替わり期間など)は賃貸中として扱われる余地がありますが、恒常的な空室は評価減の対象外です。つまり、税務上も経営上も、空室は損ということです。

さらに併用 ― 小規模宅地等の特例(貸付事業用)

貸家建付地には、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地・200㎡まで50%減)を併用できる場合があります。

貸家建付地の評価減で下がった評価額から、さらに50%減——組み合わせが決まれば、更地で持つ場合と比べて、土地の評価は大幅に圧縮されます。賃貸経営が「最強の相続対策」と呼ばれることがあるのは、この重ね掛けの効果によるものです。

ただし ― 「評価減ありき」で建てると失敗する

ここからが、賃貸経営の現場に立つ立場として、最もお伝えしたいことです。

評価減は強力ですが、「節税になるから建てる」という順番で判断してはいけません。需要のない場所に建てたアパートは、空室が埋まらず、評価減の効果も薄れ(賃貸割合の低下)、何より赤字と借金だけが残ります。

正しい順番は、こうです。

  • まず、その土地の賃貸需要をしっかり調査する

  • そのうえで、どの選択肢が最適かを比較する

選択肢向いているケースアパートを建てる単身・少人数世帯の需要が厚いエリア戸建賃貸を建てるファミリー需要のあるエリア、広めの土地建てずに土地を売却し、都心部の中古物件などに組み替える地元に賃貸需要が乏しい場合

「建てる」だけが答えではありません。需要がなければ、売却して需要のある場所の物件に組み替えるほうが、資産としても相続対策としても合理的なことがあります。

間取りひとつ取っても、需要調査の結果で正解は変わります。専門家の意見をヒアリングしたうえで、我が家の土地にとって本当に最適な選択肢を選ぶ——これが、評価減を「絵に描いた餅」にしない唯一の道です。

こちらのコラムも参照
https://note.com/quirky_bison8313/n/n60eb869aa829

評価減は「結果」、需要が「前提」

貸家建付地・貸家の評価減は、賃貸オーナーだけが使える、確かに強力な仕組みです。

  • 貸家の建物評価は、満室なら3割減

  • 貸家建付地は、更地より2割前後の評価減(地域による)

  • 小規模宅地等の特例との併用で、さらに圧縮も

  • ただし空室が増えれば、効果は目減りする

大切なのは、評価減は健全な賃貸経営の「結果」としてついてくるものだ、ということです。需要調査を出発点に、建てる・貸す・売る・組み替えるを冷静に比較する。その判断こそが、節税と収益を両立させます。

賃貸経営の実務と相続の両面から、お持ちの土地に合った選択肢を一緒に整理します。

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※借地権割合・借家権割合や小規模宅地等の特例の適用要件は、地域・物件・個別の事情により異なります。評価額の具体的な計算は税理士等の専門家にご確認ください。

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