住宅取得資金の贈与、親が子の家を援助するときの非課税枠
この制度は「残っています」—しかも期限は今年まで
前回、教育資金の一括贈与が2026年3月末で終了したとお伝えしました。「では、住宅資金の贈与の特例はどうなったのか?」と気になった方も多いと思います。
結論からお伝えします。住宅取得等資金の贈与の非課税は、健在です。
正式には「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」。父母や祖父母が、子や孫のマイホーム資金を援助するときに使える特例で、現行の適用期限は2026年(令和8年)12月31日までの贈与です。
つまり、今年中の贈与が現行制度の対象。2027年以降の扱いは今後の税制改正次第です(これまで何度も延長されてきた制度ですが、教育資金のように終了する可能性もゼロではありません)。使うなら、期限を意識して動く必要があります。
非課税枠 ― 住宅の性能で2倍変わる
非課税になる金額は、取得する住宅の性能によって2段階に分かれます。

省エネ等住宅とは、省エネルギー性(断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上)、耐震性(耐震等級2以上または免震建築物)、バリアフリー性(高齢者等配慮対策等級3以上)のいずれかを満たし、住宅性能証明書などで証明された住宅です。
同じ親からの援助でも、買う家の性能次第で非課税枠が2倍違う——ここが、この制度の大きな特徴です。新築の注文住宅や最近の分譲住宅は省エネ基準を満たすものが増えていますが、証明書の取得が条件なので、購入前に販売元や住宅メーカーに確認しておくことが欠かせません。
なお、この枠は暦年贈与の基礎控除110万円と併用できます。省エネ等住宅なら、合計で最大1,110万円まで非課税で援助できる計算です。
主な要件 ― ここを外すと使えない
適用には、贈与を受ける側(子・孫)と住宅の両方に要件があります。主なものを整理します。

特に注意したいのが、次の3点です。
配偶者の親からの援助は対象外:直系尊属に限られるため、「妻の親が夫名義の家に援助」は使えません。夫婦それぞれが自分の親から受ければ、それぞれの枠を使えます
家具・家電・諸費用はNG:非課税の対象は住宅の取得等の対価のみ。引越し費用や仲介手数料に充てた分は対象外です
引き渡しのタイミング:翌年3月15日までに引き渡しが間に合わないと適用できません。完成時期が読めない物件では、贈与の時期に要注意です
最大の落とし穴 ― 「税額ゼロでも申告必須」
この特例にも、小規模宅地等の特例と同じ落とし穴があります。
非課税の適用を受けるには、贈与税の申告が必須です。
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、特例の適用を受ける旨を記載した申告書を、証明書類とともに提出しなければなりません。「非課税だから申告しなくていい」と放置すると、特例が使えず、多額の贈与税が課されることになります。ここは絶対に忘れてはいけないポイントです。
隠れた強み ― 「7年加算の対象外」
この制度には、あまり知られていない大きな強みがあります。
この特例で非課税となった住宅取得資金は、生前贈与加算(亡くなる前7年分の足し戻し)の対象外です。
つまり、贈与した直後に相続が発生しても、この資金は相続財産に戻されません。暦年贈与の7年ルールを気にせず、まとまった額を確実に次世代へ移せる——相続対策の観点からも、非常に優秀な制度なのです。
使う前に、一度立ち止まって考えたいこと
一方で、住宅資金の援助には、相続全体から見た注意点もあります。
小規模宅地等の特例との兼ね合い:子が自宅を持つと、将来の相続で「家なき子」の特例が使えなくなる場合があります。実家の土地の評価減(最大80%)を見込んでいるご家庭では、援助の前にシミュレーションを
きょうだい間の公平:一人にだけ住宅資金を出すと、将来の遺産分割で「特別受益」として不満の火種になることも。遺言や生前の対話でバランスを取っておくと安心です
「使えるから使う」ではなく、我が家の相続全体の設計の中で位置づける——これが、この特例を活かす正しい順番です。
まとめ ― 期限と申告を押さえて、賢く使う
制度は健在。現行の期限は2026年12月31日までの贈与
省エネ等住宅1,000万円/一般住宅500万円(+暦年110万円と併用可)
配偶者の親からは使えない。家具・諸費用も対象外
税額ゼロでも申告必須。忘れると特例が消える
7年加算の対象外という、相続対策上の隠れた強みあり
親から子への住宅援助は、金額も大きく、相続全体への影響も大きい意思決定です。特例の適用可否だけでなく、実家の土地、きょうだいの公平、将来の相続税まで見渡した設計を、一緒に整理していきましょう。
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※住宅取得等資金の贈与の非課税の要件・限度額・期限は、令和8年度時点の制度に基づきます。今後の税制改正により変更される可能性があります。具体的な適用は税理士等の専門家にご確認ください。
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