♯25 農家さんの“心の成分表”を勝手に作ってみた 〜経営の心理①〜
こちらのアカウントでは、小・中規模の和牛繁殖農家さんに向けて「畜産×ファイナンス」というテーマで色々と発信しています。
今回は筆者である私の個人的エピソードから始めさせてください。
🟡「病気を治すのが正義」という私の片思い
私はこれまで獣医師としてたくさんの畜産農家さんを回ってきました。
いずれ人間の“食べ物”になる牛だからこそ、“生き物”である間は健康に育って欲しいと思っています。
ただ、やはり経済動物ですから治療費(コスト)が収益を上回ってはいけません。
だから病気の予防と早期治療が第一!と思ってきましたし、農家さんへそういうアドバイスをしてきました。
けれど、正直なところこういったアドバイスをしっかり実行に移してくれる農家さんってあまりいないです。
なんで伝わらないんだろう?牛が好きなのは私だけ??と思いつつ、“自分の農場を良くしたい”というのは共通認識のはず。だから、農家さんそれぞれ“牛飼いの哲学”的なものがあるんだろうなと、自分を納得させていました。
🟡すれ違いの原因は「見ている景色」の違いだった
そんな私ですが、個人事業として独立するタイミングで、FP(ファイナンシャルプランナー)の資格を取得しました。
あくまでも自分の勉強のためというのが目的です。
これまで“重箱の隅をつつく”ようなニッチな知識ばかり詰め込んできて、気づけば社会的に見たら世間知らずな人になってるなと思ったのがきっかけでした(笑)
でもそのおかげで視野が広がり、「お金や経営の視点」を得ることができました。
そして気づいたんです。
「牛=お金」だ❗️
ということに。
そんなの当たり前のことだと思われるかもしれませんが、私にとっては大発見だったんです。
私はこれまでずっと、「医療や福祉」といった視点で牛を見ていたことに気づきました。
一方で、経営者である農家さんは、「投資やリターン」という視点で牛を見ているから、割りに合わない予防管理や設備投資を選ばないのも、ある意味当然なんですね。
結局私は、獣医師の立場として、“病気を治せない=敗北”という考えがベースにあるから、「どうして牛をもっと大事に扱ってくれないの??」という身勝手な考えになっていたのかもしれません。
🟡「心のクセ」は十人十色
ただ、「牛=お金」なら、農家さんはみんな冷徹な経済人なのか?といったら全くそんなことは感じません。
みなさん本当に個性的で、人間味に溢れています。
じゃあ、なぜ「牛=お金(経済動物)」だと分かっているのに、様々な場面でお金の使い方や経営の決断に迷うのでしょうか?
“経営の心理”について、私なりに「行動経済学」などについて調べてみたのですが、そこで「限定合理性」という言葉に出会いました。
ざっくり言うと、「頭では“こっちが得”と分かっていても、感情や好みで別の選択をしてしまう」
そんな、人間らしい心の動きのことだそうです。
畜産経営でお金を残そうと思ったら、本来は「投資とリターン」を冷徹に計算するべきなのかもしれません。でも、経営者それぞれの「欲」や「恐怖」、「地域の目」や「長年のプライド」といった『心のクセ』に強く引っ張られてしまう。
だからこそ、畜産経営は十人十色になるし、そこが人間味があって面白いところなのかもしれません。
🟡 あなたの農場はどれ? 経営を動かす「8つの心の成分」
改めて考えると、農家さんの「心のクセ」って色々な種類があるなと思います。それを具体的に言語化するのはなかなか難しいのですが、経営の心理学に当てはめて、畜産農家さんの心理について分析してみました。
どれが良い・悪いと診断するものではありません。どれも「自分の農場を良くしたい、守りたい」という純粋な想いから生まれている、心理パターンです。
以下が私なりに思いつく範囲で、畜産農家さんが無意識に持っていそうな「8つの心の成分」を勝手に分類してみたものです。
① 守備力抜群の「安定思考」成分
損したくない気持ちが人一倍強い、リスク管理の天才
② フロンティア精神旺盛な「新物積極」成分
最新のエサやサプリの営業にちょっと弱い
③ 未来を切り拓く「大胆投資」成分
機械や設備をドカンと買ってステージを変えるパワーがある
④ 現場の魔術師「DIY節約」成分
なんでも自分で作って安く済ませる達人。ただし自分の時給は0円になりがち
⑤ 牛との対話の達人「職人技」成分
データより自分の勘を信じる、頼れるベテラン
⑥ サイエンティストな「データ信奉」成分
センサーや数値を眺めるのが大好き。時に情報過多で迷子に
⑦ 地域を愛する「他人の目」成分
市場での評判や、地域の平均を人一倍大切にする誇り高き人
⑧ 今を全力で生きる「先送り」成分
「いつやめてもいい」と言いながら、結局牛が好きで続けてしまう
自分はこれかも?とか、あの人はこれかも?という成分はありましたか?
おそらく、①が50%、④が30%…といった感じでいくつかの成分がブレンドされていることがほとんどだと思います。
🟡 「心のクセ」を知れば、牛飼いはもっと楽しくなるかも?
私がこの「心のクセ」について学んで気づいたのは、「自分自身を責める必要がなくなるんだ」ということでした。
自分の心の成分(強み)を活かして、「あ、いま心のクセのせいで、もったいないお金の使い方をしそうだな」と客観的に気づくことで、もっと利益を出すための選択肢が増えるはずです。
また、生き物相手の仕事ですから、上手くいかない場面は多々あると思います。ちょっと後悔するような選択があったとしても、「あの時の自分は、この成分が強かったんだから仕方がなかった。次はこうしよう!」と、自分を否定しないためのヒントにして欲しいなと思います。
次回のテーマは、“投資とコスト編”です。
「石橋を叩いて渡らない安定思考タイプ」と「なんでも自分で作っちゃうDIY節約タイプ」について、比較しながら深掘りしていきます。
