笑率88%?エッセイ「サギサギバイトの困り唄」
相変わらず、世間では「振り込め詐欺」なる被害が後を絶たない。今年も上半期だけで被害額が490億円以上に上るとか…。 毎月のお小遣いが、社内でも下から4番目くらいに低い(調べたんかいっ!?)僕には天文学的数字というか、スーパーカミオカンデと言うか、とにかく想像の及ばない領域である。 仲間内でこのテの話題が時々出る事があるが、実際彼等の周りで被害に遭ったと言う人は無く、みんな口々に「なんであんな手口にひっかかるんやろ?」とか「そもそも声で分かるやろ?」とか「あり得ねー」とかおぬかし遊ばす。僕も作り笑顔で「だよねー」等と、同調しているが、その実脳裏には、ハンカチ無くしてはお聞き頂けない、悲しくて情けなくておバカな出来事が蘇ってくるのである。
当時高校生だった僕の元に、ある日東京から一通の手紙が届いた。開けて見ると「テレビ番組のモニターになってくれませんか?」みたいな表題で、読み進めるとその東京の会社が指定する番組を観て、意見や感想を書いてくれたら毎月14,000円の報酬を支払う、但しそのモニターになるには会員登録が必要で、その会費が7,000円…と言う内容だった。その頃の僕の一ヶ月の小遣いは3,000円位だったと思うが、とにかく聴きたいレコード(当時はまだレコードなのっ!)や、読みたい本(決していやらしい本ではないっ!)が沢山あって、「ムムム、このバイトなら学校にもバレずに、毎月大金が手に入るではないかっ!」と、生来筋金入りの単細胞の僕は、「本当に大丈夫なの?」と、心配する母親に拝み倒し、お小遣いを前借りして7,000円を作り、指定された口座に振り込んだのである。 翌日から僕は「フフフ、これであのレコードが買えるぜ」とか「ちょっとずつ貯金したら、やがてウォークマンだって買えるのだ!」等と妄想に浸り、弟や妹には「チロルチェコでもポテトチップスでも何でもおごってやるぜ!」と、大風呂敷を広げていた。 数日後、その会社から封筒が届き、内容を確認すると、「あなたにお願いする番組はアニメ“うる星やつら”です」と、書いてあった。僕は「ラッキー!うる星やつらなら、毎週観てる~」と、指定された通りにアンケート用紙を埋め、直ぐに返送した。 ところが10日程経った頃、そのアンケート用紙が送り返されて来て「この記入の仕方には誤りがありますので訂正して下さい」と、書いてあり、僕は言われるまま再度記入しなおして返送した。ところがその後何度やっても相手は、あ~だこ~だとイチャモンを付け、アンケートの採用には至らなかった。 流石に町内屈指のおバカの僕でも「これはオカシイ…」と、気付き(遅いわっ!)慌てて封筒に記載されている電話番号に電話をかけた。しかし大方の予想通り「オカケニナッタデンワバンゴウハゲンザイツカワレテオリマセン…」の案内が繰り返されるだけだった。 元々空っぽの僕の頭の中は真っ白になり、「そし~て~僕は途方に~暮れる~」と、当時大ヒットしていた歌のフレーズが流れ続けていた。 親には怒られ、兄弟には鼻で笑われ、猫には砂をかけられ、しばらくトホホな日々を送っていたある日、母親が新聞のとある記事を指差しながら「これってあんたのひっかかったヤツとちゃう?」と、僕に話しかけて来た。 読むと正にドンピシャの内容で、金額や件数は忘れてしまったが、相当数被害が出ているとの事だった。
とまあ、星の数程ある僕のおバカエピソードの一つだけど、この話しは家内にはしていないし、今後もする勇気は無い。だってもし話したら「ふんっ あんたこそ結婚詐欺師よっ!」と、言われるに決まっているから…。
