🌸経営未来手帳・金曜日(第58号)・完全保存版「未来を先に決めるリーダー」――任天堂・岩田聡が示した“物語OS”の力
🌸経営未来手帳・金曜日(第58号)・完全保存版
「未来を先に決めるリーダー」
――任天堂・岩田聡が示した“物語OS”の力
(執筆:安村明史/ビジネス能力開発株式会社)
金曜日は「未来へつながる物語」をお届けします。
歴史や文化のエピソードを通じて、週末に心に残るインスピレーションを
お伝えします。
■未来を先に描くリーダーのOS
今では世界が知っているゲーム、任天堂のWii・ DS。開発者の岩田聡氏。
特に重要な “物語OS(Narrative Power)” を、岩田氏の実践から深めます。
① 深い人間理解(Human OS Literacy)
岩田氏は、ゲームを「技術の産物」ではなく
“人の心を動かす体験” として捉えていました。
だからこそ、当時の業界常識だった
「スペック競争」「高性能化の直線的進化」
をあえて否定した。
彼が見ていたのは、CPUでもGPUでもなく、
“遊ぶ人の心の動き” でした。
つまり、「楽しい!と思う瞬間を再現」しようとした。
② 抽象論より実践知(Practical Wisdom)
岩田氏はこう語っています。
「ゲーム人口を広げるには、ゲームの形そのものを変えなければならない。」
任天堂は花札やトランプから始まり、
野球ゲームなど“既存の遊びの延長線”を作ってきた会社です。
しかし岩田氏は、さらに未来の遊び方に着目した。
つまり 「遊び方そのものを変える」 という発想です。
その結果生まれたのが、
・Wii の“振るだけで遊べる”体験
・DS の“触れるだけで直感的に理解できる”操作
という、未来の遊び方そのものを先に作るアプローチでした。
③ 物語を持っている人(Narrative Power)
岩田氏の意思決定には、常に一つの物語がありました。
「スペック競争の未来は望ましくない」
「もっと多くの人が笑顔になれる遊びを作るべきだ」
この“未来像”が先にあり、
そこから逆算して Wii・DS が生まれた。
■決断の瞬間のナラティブ
Wii の企画が社内で初めて提示されたとき、
多くの技術者は「性能が低すぎる」と反対したと言われています。
当時のゲーム業界は、
“より高性能なマシンを作ることが正義”
という空気が支配していた。
その中で岩田氏は、静かにこう言った。
「性能ではなく、体験で未来を変える。」
この一言で、会議室の空気が変わった。
しかし同時に、彼は誰よりも理解していた。
“未来を先に決めるリーダーは、まだ誰も見ていない景色を語る孤独を抱える”
ということを。
それでも彼は未来を選んだ。
その決断が、世界中の家族のリビングを変えた。
まさに
「未来が現在を統治する」
という物語OSの典型例です。
■経営への応用:未来を先に決める3ステップ
●ステップ1:未来の“望ましい姿”を決める
「市場がどうなるか」ではなく
「自社はどんな未来を望むのか」を先に決める。
例:
・“価格競争の未来は望ましくない”
・“社員が疲弊する未来は望ましくない”
・“顧客が迷う未来は望ましくない”
岩田氏の一貫した思想 → 「顧客が喜ぶものだけを作る」
■ステップ2:未来から逆算して現在を再設計する
未来を起点にすると、意思決定の基準が変わる。
・やるべきこと
・やめるべきこと
・投資すべき領域
・守るべき価値
これらが一気にクリアになる。
つまり、
思い描いた未来以外を選択するスペース・コストが無くなる。
■ステップ3:物語として語る
未来像は、数字よりも“物語”として語る方が伝わる。
岩田氏のように、
「私はこう考えた。だからこう動いた。」
という語り口が、人を動かす。
田中角栄も同じでした。
自分の経験を「物語」として言語化し、
庶民の物語と重ね合わせながら語った。
「人というものはこう動く。だが現場は違う。だから知恵を絞る。
そこで私はこう考えた。」
この語り口そのものが、物語OSの象徴です。
未来決定
↓
意思決定基準変化
↓
行動選択変化
↓
組織文化変化
↓
結果変化
#末尾付録 「図:未来起点の全体構造」を参照ください。
■編集後記
任天堂の物語を調べるほど、
「未来を描く力は、技術より強い」
という事実を痛感します。
経営者が未来を語るとき、
それは予測ではなく、
“宣言” なのかもしれません。
■今日の問いかけ
あなたは、どんな“望ましい未来”を先に決めますか。
そしてその未来は、今日のどんな行動を変えますか。
■ネコのつぶやき
「未来を先に決めるって…ごはんの時間を先に決めるのと同じくらい大事にゃ」
■おわりに
未来は、待つものではなく、
“先に描き、そこへ現在を合わせていくもの” です。
岩田聡が示した物語OSは、
どんな規模の企業にも応用できる普遍の原理。
未来を描き、語り、動かす。
その伴走が必要なときは、いつでもご相談ください。
■フィードバック呼びかけ
感想をぜひお寄せください。
yasumura@biz-noukai.com まで。必ずお返事いたします。
■次回予告
「境界を越えるリーダーの条件」
■付録「図:未来起点の全体構造」

