🌸経営未来手帳・土曜日・(第73号) 完全保存版「なぜ、松下翁は『任せて、任せず』と言ったのか」
🌸経営未来手帳・土曜日・(第72号) 完全保存版「なぜ、松下翁は『任せて、任せず』と言ったのか」
(執筆:安村明史/ビジネス能力開発株式会社)
■モヤモヤする「任せて、任せず」
松下幸之助の残した言葉に「任せて、任せず」という一文があります。
初めてこの言葉に出会ったとき、私は正直「どういう意味だ?」と頭がモヤモヤしました。
信頼して任せるのか? それとも結局信じていないのか?
どっちつかずに聞こえて、釈然としなかった。
リーダーとして人を育てるとき、仕事を委ねるか、自分で抱え込むか――この二択で迷うのは誰もが経験していることでしょう。
だからこそ「任せて、任せず」という逆説的な言葉に共感しながらも、整理がつかずに宙ぶらりんの感覚が残るのです。
■「任せて、任せず」の本当の意味
私は長くこの言葉を引っかかりとして抱えていました。
あるとき心理的安全性をテーマにした研究書を読み、次のフレーズに出会いました。
「管理するのではなく支援する。管理すべきなのは人ではなく、プロセスと結果である」
(ビョートル・フェリクス・グジバチ『心理的安全性』より)
この一文を読んだ瞬間、「任せて、任せず」の意味が少し見えてきました。
つまり「人」を細かく管理するのではなく、「やり方(プロセス)」と「成果(結果)」を管理する。
この構造なら「任せる」と「任せない」が矛盾なく両立します。
■リーダーが管理すべき3つのこと
心理的安全性の視点から考えると、リーダーは「人」を直接管理するのではなく、次の3つを見守る役割を担います。
① プロセス
② 結果
③ 関係性(影響)
いずれも「任せきり」にしてはいけない領域です。
ここで緩みが生じれば、組織全体が一気に崩れる危険をはらんでいます。
■サントリーの挑戦に見る「関係性」
例えばサントリーがビール事業に挑戦したときも、この「関係性」が大きなテーマだったに違いありません。
キリン、アサヒという巨人たちに挑む――しかも、かつてビール事業で大失敗した過去を背負った再挑戦です。
社内では「また同じ轍を踏むのでは」という不安が渦巻き、
社外では流通業者から「売れるのか?」という疑念を突き付けられました。
リーダーがもし「売上」や「市場シェア」だけを追っていたら、この挑戦は瓦解していたでしょう。
「社員の信頼を守る」「取引先との関係を築き直す」――こうした関係性に最後まで責任を持ったからこそ、挑戦は成立したのです。
■現代への警鐘
ところが近年、名だたる大企業のトップが不祥事を起こす事例が後を絶ちません。
原因はさまざまであれ、背後に共通するのは「任せて任せず」の緩みです。
任せすぎれば、現場が暴走する。
任せなさすぎれば、挑戦心が死ぬ。
どちらに偏っても組織は壊れ、最後には社会からの信頼を失います。
これは一部の経営者だけの話ではありません。
規模の大小を問わず、あらゆるリーダーが直面する“落とし穴”です。
今こそ「任せて任せず」の覚悟を取り戻さなければ、同じ過ちを繰り返すことになります。
■編集後記 ― やってみなはれ
サントリー創業者・鳥井信治郎の有名な言葉に「やってみなはれ」があります。
一見すると「自由にやれ」という放任主義のように聞こえますが、実際は違います。
挑戦を促しながら、失敗したときには最後まで責任を持つ――その覚悟の言葉です。
ここに「任せて、任せず」の意味が重なります。
社員に挑戦を任せる。けれど放置せず、結果と関係性に責任を持つ。
これが本当の「任せて、任せず」。
「やってみなはれ」とは、信じて任せ、支援し、最後の責任を背負うリーダーの姿勢そのものなのです。
■今日のまとめ
リーダーは人を管理するのではなく、
・プロセス
・結果
・関係性
この3つを決して任せきらず、最後まで責任を持たなければならない。
それが「任せて、任せず」の真の姿です。
■問いかけ
あなたは部下やチームに「任せて」いますか?
そして、社会からの信頼まで含めて「任せず」に背負っていますか?
■猫のつぶやき
「リーダーが背負わないと、結局みんな傷つくんだニャ…」
■経営未来手帳の全記事はこちら
↓
https://note.com/quiet_gnu5848/n/n02fd172fe229
■本記事は2025年9月に配信した内容を編集して投稿しました。
■次回3月22日予告
「未来ビジョンに潜むタイプ別の『失敗』と『突破口』」
■付録

・任せすぎ/任せなさすぎ の比較
任せすぎた場合 :現場が暴走する、統制が効かなくなる、方向性が乱れる
任せなさすぎた場合:挑戦心が死ぬ、部下が育たない、停滞や依存を招く
