役職で仕事をすると失敗する。価値は「肩書き」ではなく「役割」で決まる
正直に言う。
役職で仕事をし始めた瞬間、人は弱くなる。
これは少し厳しい言い方に聞こえるかもしれない。だが、20年現場でPMをやってきて、本当にそう思う。
部長だから。課長だから。マネージャーだから。PMだから。リーダーだから。
こういう肩書きは、もちろん組織を回すうえで必要である。誰が意思決定をするのか、誰が責任を持つのか、その整理は重要だ。
だが、仕事が崩れ始めるとき、多くの場合、人は役職にしがみつく。
自分が何を担うべきかではなく、自分がどう見られるべきかを気にし始める。ここから、努力はズレる。
私はこれを何度も見てきた。
マネージャーになった瞬間、「偉く見えなければならない」と思ってしまう人がいる。全部を知っているように振る舞う。弱みを見せなくなる。細かい仕事をやらなくなる。逆に、自分でやるべきではないことまで口を出し始める。
これは全部、役職で仕事をしている状態である。
一方で、強い人は違う。
自分が何者かより、いま何を担うべきかを見る。
会議が散らかっているなら、論点を整理する。
メンバーが不安そうなら、情報をそろえる。
意思決定が止まっているなら、選択肢を出す。
現場が疲弊しているなら、優先順位を切り直す。
肩書きではなく、役割で動く。
ここに大きな差がある。
役職は、組織から与えられる。
役割は、自分で引き受ける。
この違いはかなり大きい。
役職だけで仕事をする人は、「自分は何を守るべき立場か」を考えやすい。だから、間違えたくない。恥をかきたくない。評価を落としたくない。結果として、動きが鈍くなる。
だが、役割で仕事をする人は、「いま何を満たせば前に進むか」を考える。だから、必要なら自分が泥をかぶるし、必要なら一歩引く。形式より機能を優先できる。
PMの仕事は、まさにこれである。
PMという肩書きはある。だが、本質は役職ではない。役割である。
認識をそろえる。
曖昧さを減らす。
利害を整理する。
決めるべきことを決められる状態にする。
チームが前に進める形に変える。
これがPMの役割であって、「PMっぽく振る舞うこと」ではない。
ここを勘違いすると、プロジェクトはすぐにおかしくなる。
たとえば、役職で仕事をするPMは、「PMとして全部把握していなければならない」と思い込む。すると、分からないことを分からないと言えない。相談が遅れる。判断が遅れる。最終的に炎上する。
逆に、役割で仕事をするPMは、「自分は全部知る人ではなく、前に進むための構造を作る人だ」と理解している。だから、必要なら詳しい人に任せるし、必要なら場をつなぐし、必要なら自分が知らないことも早く出せる。
この違いは、現場では決定的である。
コンサルでも同じだ。
肩書きで仕事をする人は、「コンサルらしいことを言おう」とする。難しい言葉を使う。きれいな資料を作る。もっともらしい分析を並べる。だが、クライアントが本当に動けるかは別の話である。
役割で仕事をする人は、「この場で本当に必要なのは何か」を見る。分析より意思決定かもしれない。提案より不安の整理かもしれない。資料より、関係者の認識合わせかもしれない。
ここが見える人は強い。
役職で仕事をすると、努力の方向がズレる。
どう見られるか。
どう評価されるか。
どう失敗しないか。
こういう方向にエネルギーが流れる。
役割で仕事をすると、努力の方向が合う。
何を満たせばいいか。
何が足りないか。
誰が動けていないか。
どこで止まっているか。
こういう方向にエネルギーが流れる。
前の2本でも書いた通り、努力は量か質かではない。方向が重要である。役職で仕事をすると、この方向がズレやすい。だから苦しくなる。頑張っているのに、成果に変わらない。
役割で仕事をする人は、無駄に消耗しにくい。
自分の見栄を守ることより、場に必要なことを優先できるからだ。肩書きを守るために動かない。価値を出すために動く。
これは、若手にもそのまま当てはまる。
まだ役職がない人ほど、実は役割で仕事をしやすい。
会議で議論が散らかっているなら、若手でも整理役を担える。情報が足りないなら、集める役を担える。関係者の認識がズレているなら、確認役を担える。つまり、役職がなくても価値は出せる。
むしろ、役職に頼れない人ほど、役割で勝負するしかない。そして、長く強い人は、だいたいここを早く理解している。
自分が何者かより、いま何を担うか。
この視点を持てると、仕事はかなり変わる。
肩書きが上がっても、空回りしにくい。逆に、肩書きがなくても、自分の価値を出しやすい。人からどう見えるかより、場に何を返せるかへ意識が移るからだ。
正直に言う。
役職は、いつか外れる。異動もある。降格もある。退職すれば消える。だが、役割を見て動ける力は残る。
だから、積み上がるのは役職ではない。役割で仕事をした経験である。
努力がズレない人は、ここを分かっている。
自分の肩書きを守るために働くのではない。場に必要な役割を果たすために働く。その結果として、信頼が積み上がり、あとから役職がついてくる。
順番は逆である。
先に肩書きが人を強くするのではない。役割を果たし続けた人に、あとから肩書きが乗るだけだ。
価値は、肩書きではなく役割で決まる。
私は、それが一番現場に近い真実だと思っている。
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