[1~3話無料]スポ少に入団したら、そこは逆転版・大奥だった話 #3 「許されざる『ご寵愛』と、母のプライド」
アシスタントコーチが私を無視し始めた理由。
それは、私が想像していたような「私のマナーが悪かった」とか「挨拶が足りなかった」とか、そんな生易しいものじゃなかった。
もっと根深く、もっとドロドロとした……**「母親のプライド」**に関わることだったんだ。
コートに立てない6年生の息子
アシスタントである彼女には、息子がいた。
チームの最高学年、6年生。
本来ならチームの顔として活躍していてもおかしくない年齢だ。
でも、彼は試合に出ていなかった。
いや、出してもらえていなかった。
ベンチには座っている。ユニフォームも着ている。
でも、彼はただ「いるだけ」。
ヘッドコーチの戦力構想には、彼女の息子の名前は入っていなかったんだ。
残酷すぎるコントラスト
そんな彼女の目の前で、私の息子……始めたばかりの「ド素人」が、コートに立っている。
まだ動きもぎこちない。
ルールだって怪しい。
それでも、ヘッドコーチに気に入られたという理由だけで、長男は一軍の試合に、それもスタメンで起用されていた。
「私の息子は6年間頑張ってきたのに、出られない」
「なんであんなポッと出の初心者が、我が子を差し置いてコートに立っているの?」
彼女の冷たい視線の正体は、これだった。
指導者としてではなく、「我が子を愛する母親」としての、やり場のない怒りと嫉妬。
そりゃあ、面白くないに決まってる。
彼女だけじゃない。他の6年生の保護者だって、内心は煮えくり返っていただろう。
「なんであの子が?」って。
でも、みんな大人だ。
露骨に態度に出す人はいなかった。
それに、同じ5年生の保護者たちだって、内心思うところはあったはずなのに、私にはいつも優しく接してくれた。
「すごいね!」「がんばってね!」
その優しさだけが、当時の私にとって唯一の救いだった。
嵐の前の静けさ
アシスタントコーチだけが放つ、隠しきれない敵意。
でも私は、その本当の恐ろしさにまだ気づいていなかった。
「コーチも人間だし、虫の居所が悪い時もあるよね」
「周りのママたちは優しいし、なんとかなるよね」
そんな風に楽観視して、薄氷の上を歩いていることに気づかずに数ヶ月が過ぎた。
そして、ある日。
ついにその「負の感情」が爆発する、ある事件が起こる。
それは、私たちがこの「大奥」の洗礼を、本当の意味で浴びることになる決定的な出来事だった。
(続く)
