改めて地域再生を考える18-地域プロデューサーはディフレクション・デザイナー
W杯サッカーはスペイン優勝で終わりましたね。
ところでこのサッカーでは、シュート軌道が変わるシーンがたくさんありました。サッカー用語に「ディフレクション」と呼ばれるもので、他の選手や審判、ゴールポストなどに当たってボールが予期しない動きを示すことを言います。
ディフレクションは意図してやるものと、意図せずに方向が変わる二種類あります。
意図的なディフレクションは、選手が自分の意思でわずかにボールに触れてコースを変え、相手の読みを外すプレーで、攻撃側にとって、ディフレクションは非常に強力な得点パターンのひとつとなるのです。
もうひとつは偶発的なディフレクションで、シュートやパスが意図せず守備側選手の体に当たり、思いがけない方向に転がる現象です。試合で最もよく見られるのはこの偶発的なもので、キーパーが完全に対応できていたボールが直前でコースを変えてゴールに吸い込まれるというシーンが典型例で、W杯の予選ラウンドで、微かにヘッドに触れたことで日本のゴールが生まれたシーンを思い出してください。キーパーは準備していた軌道からずれて、キーパーの反応が間に合わなかったわけです。
地域再生も、どこかこれに似ています。
単純に「枠内に打てば良い」というシュートの概念を超え「何かに当たって入るかもしれない」という発想で組み立てる。
地域再生でも活性化でも「正しい施策を打てば成果が出る」と行政は考えがちです。しかし現実には、計画どおりに決まるわけではありません。むしろ人との出会いや情報発信、協力者の発見など多様なつながりから、小さな接点が思いがけない方向へ事業を動かし、大きな成果につながることがあります。
■偶然が起こりやすい環境は設計できる
ディフレクションが生じたとき、一度セットしたポジションからの動き直しが求められます。偶然に見えるプレーの裏側には、必ず選手たちの意図と準備があるわけで、つまりディフレクション後の「プレーを止めない姿勢」が鍵になります。その前後の選手の動きや判断が重要であることが見えてくるのです。
だからこそ地域再生では「枠内へ正確にシュートを打つ」ことだけではなく「どこかでディフレクションが起こる仕掛け」を数多く用意することが重要なのです。
例えば、一人の移住者との出会いが新しい事業を生み、何気ないイベントで生まれた縁が企業との連携へ発展する。SNS一本が思いもよらない共感を呼び、地域外から支援者が現れる。こうした転機は、一見すると偶然のように見えます。
しかし、本当にそうでしょうか。
人が集まる場をつくり異分野の人が交わる機会を増やす。地域資源を点ではなく線や面で結び付ける。挑戦する人を応援する。地域の情報を外へ発信し続けるなど、多様な主体と地域を結びつける様々な仕掛けが、新たなディフレクションを生み出すきっかけになるかも知れません。
偶然を待つのではなく、偶然が起こる場をつくる。つまり偶然が起こりやすい環境は設計できると考えています。
地域プロデューサーの役割は、成功を約束することではありません。地域というフィールドに、数多くの「当たる場所」をつくり、思いもよらない化学反応が生まれる環境を設計することです。
それこそが、これからの地域再生に求められるプロデュースであり「ディフレクション」の発想なのではないでしょうか。
地域再生には、成功の方程式はありません。
どれほど綿密な計画を立てても、地域を大きく変えるきっかけは、予定調和ではなく、思いがけない出会いや偶然の連鎖から生まれることが少なくありません。
こんな経験はありませんか?
移住者が一人加わったことで地域の空気が変わった。小さなイベントで出会った二人が新しい事業を始めた。偶然出会った企業の方と連携が始まった。など振り返れば「偶然」としか思えない出来事が、地域の歴史を動かしてきました。
その偶然は、本当に偶然でなく様々な仕掛けを施してきたことで、偶然が生まれる確率を高めてきた結果であり、つまり意図したディレクションなのです。
地域再生とは、計画を完璧に実行することではありません。偶然を味方につける仕組みを設計することです。
ディフレクションを恐れるのではなく、意図的に生み出す。その発想こそが、これからの地域づくりに求められているのではないでしょうか。
