【Vol.14】愛しているのに、なぜ裏切るのか——浮気・不倫の心理構造を読み解く【仕草で読む恋愛心理】
「仕草で読む恋愛心理」シリーズ
← Vol.1:彼の仕草が教えてくれる、恋愛で大切な5つのこと
← Vol.2:別れのサインを早めに察知する方法
← Vol.3:「好きだから、黙る」——言葉にしない感情を仕草で読む
← Vol.4:「俺だけを見て」——嫉妬・独占欲が仕草に出るとき
← Vol.5:「なんとなく、感じてた」——雰囲気・予感・嗅覚が教えてくれる恋愛のサイン
← Vol.6:嫉妬心との付き合い方——最も厄介な感情と正直に向き合うための心理学
← Vol.7:恋愛は「仕事力」を上げる——活力・生きがい・昇進に恋愛が効く科学的理由
← Vol.8:「既読」がついた。でも、返信は来ない。
← Vol.9:女性の「なんか違う」は正しい——直感と脳科学の意外な関係
← Vol.10:また思い出してしまった——忘れられない人が頭から離れない、本当の理由
← Vol.11:その笑顔、本物ですか。——「作り笑い」と「本音」を見分ける表情心理学
← Vol.12:好きになるほど、不安になる。——自己肯定感と恋愛の深い関係
← Vol.13:近すぎると、息が詰まる。——「距離感」が恋愛を壊すとき、救うとき
Vol.14:愛しているのに、なぜ裏切るのか——浮気・不倫の心理構造を読み解く(この記事)
「なぜあの人は、私を愛していると言いながら、裏切ることができたのか」
そう問い続ける夜があります。あるいは、裏切った側として「自分でも、なぜあんなことをしたのかわからない」と思っている人もいるかもしれません。
浮気・不倫は、善悪の問題である前に、人間の心理の問題でもあります。「最低な人間だから」「意志が弱いから」——そう切り捨てることは簡単です。でも、それだけでは「なぜ繰り返されるのか」「なぜ自分に限ってそんなことが起きたのか」という問いには答えられません。
Vol.14では、浮気・不倫の心理構造を、感情論ではなく心理学の観点から読み解きます。この記事は、誰かを擁護するためのものではありません。ただ、「なぜ」を少しでも理解することで、自分自身と向き合う手がかりにしてほしいと思います。
① 「愛情があっても、欲求は別に動く」——脳の三層構造
サイン:「好きなはずなのに、なぜあんなことをしたのか、自分でもわからない」
浮気をした人の多くが口にする言葉が、「相手のことを愛していないわけではなかった」というものです。これは言い訳なのでしょうか。心理学的には、必ずしもそうとは言えません。
人類学者のヘレン・フィッシャーは、脳内の恋愛感情を三つの独立したシステムに分類しました。①性欲(Lust)、②恋愛感情(Attraction)、**③愛着(Attachment)**です(出典:Fisher, 2004)。
重要なのは、この三つがそれぞれ独立して機能するという点です。長期的なパートナーへの深い愛着がありながら、別の相手への性欲や一時的な恋愛感情が生まれることは、脳の仕組みとして起こりえます。「愛しているのに裏切った」という矛盾は、脳レベルでは矛盾ではない——それがフィッシャーの発見が示す、不都合な真実です。
これは「だから許される」ということでは絶対にありません。ただ、「愛情があっても起きる」という事実を知ることが、自分や相手の行動を理解するための第一歩になります。
見分け方: 「愛している」という言葉と行動が矛盾しているとき、その人の中で複数の感情が同時に動いている可能性があります。愛情の言葉を信じるかどうかより、関係全体のパターンを見ることが重要です。

② 「バレないはず」はなぜ生まれるのか——自己正当化の心理
サイン:後から振り返ると、「なぜあのとき自分を止められなかったのか」と不思議に思う
浮気・不倫をしている最中、多くの人は強い罪悪感を感じながらも「これは特別な状況だから」「相手を傷つけるつもりはない」「バレなければいい」と自分を納得させようとします。
心理学ではこれを**「認知的不協和の解消」**と呼びます(出典:Festinger, 1957)。人は自分の行動と価値観が矛盾したとき、強いストレスを感じます。そのストレスを解消するために、行動を変えるのではなく、価値観や解釈のほうを変えてしまうのです。
「これは本当の愛だから」「家では満たされていないから仕方ない」「相手も望んでいる」——こうした言い訳は、意識的な欺瞞ではなく、脳が矛盾に耐えるための自動的な処理です。だから当事者には「悪いことをしている」という感覚が薄れていく。そして発覚したとき、周囲は「なぜそこまで続けられたのか」と驚きます。
見分け方: 「これは特別」「この人だけ」という言葉が自分の中に繰り返し浮かぶとき、認知的不協和の解消が起きているサインかもしれません。「特別」という感覚は、問題から目を背ける装置になっていることがあります。

③ 繰り返す人の心理——愛着スタイルと自己肯定感
サイン:「また同じことをしてしまった」という経験が複数回ある
浮気・不倫は、一度きりの人もいれば、繰り返してしまう人もいます。繰り返す場合、その背景には多くの場合、深いところで共通したパターンがあります。
Vol.12・13でも触れた愛着スタイルが、ここにも深く関係しています。回避型の愛着スタイルを持つ人は、一つの関係が深くなるにつれて「息苦しさ」や「自由を失う感覚」を覚えやすく、それから逃げるように別の関係を求めてしまうことがあります。
また、自己肯定感の低さも、浮気・不倫の反復と関連することがわかっています。自分の価値を誰かから「求められること」「必要とされること」によって確認しようとするとき、一人のパートナーでは足りなくなることがあるのです(出典:Baumeister & Vohs, 2001)。
「相手が悪い人だから」ではなく、その人の内側にある埋めきれない何かが、繰り返しを生んでいることが多いのです。
見分け方: 「なぜ同じことを繰り返してしまうのか」という問いが浮かぶなら、行動の表面ではなく、その奥にある動機——「何を埋めようとしているのか」——を見つめることが変化への入口になります。

④ 裏切られた側の傷——なぜこんなに深いのか
サイン:発覚から時間が経っても、ふとした瞬間に胸が痛くなる
浮気・不倫が発覚したとき、裏切られた側が受けるダメージは、「失恋」とは質が異なります。それは単なる別れではなく、「信頼していた現実そのものが崩れる」体験だからです。
心理学では、これを**「裏切りトラウマ(Betrayal Trauma)」**と呼びます(出典:Freyd, 1994)。特に長期的な関係や、生活を共にしていた相手からの裏切りは、過去の記憶を丸ごと書き換えるような衝撃を伴います。「あのとき笑っていたのは嘘だったのか」「あの旅行も」「あの言葉も」——現在だけでなく、積み重ねてきた過去までが揺らいでしまいます。
また、発覚後に裏切られた側が「なぜ気づかなかったのか」と自分を責めることも多いのですが、これは理不尽な自責です。信頼することと、疑い続けることは両立しません。気づかなかったのは、あなたが信頼していたからです。それは弱さではありません。
見分け方: 裏切られた傷が長く続くのは、「あなたが弱いから」ではありません。それだけ本気でその関係を信じていたということです。その痛みを急いで消そうとせず、受け止めることが、回復への唯一の道です。

⑤ 「なぜこうなったのか」——関係の中に潜んでいたもの
サイン:怒りや悲しみが少し落ち着いてきたとき、「この関係に何が足りなかったのか」という問いが浮かぶ
浮気・不倫は、「悪い人がいたから起きた」だけでなく、多くの場合、関係の中に長い時間をかけて積み重なった何かが背景にあります。
パートナーシップ研究者のエスター・ペレルは、不倫が起きやすい関係には共通の構造があると指摘しています。会話の減少、感謝の消滅、「当たり前」になった関係、自分の欲求を言葉にできない環境——こうした積み重ねが、関係の外に何かを求める動機をつくり出すと言うのです(出典:Perel, 2017)。
これは、裏切られた側に責任があるという意味では決してありません。原因がどこにあれ、裏切りを選んだのはその人自身です。ただ、「この関係に何が起きていたのか」を見つめることは、次の関係をつくるうえで、どちらの側にとっても意味があることだと思います。
傷ついた経験も、繰り返してしまった経験も、そこから何を学べるかが、これからの恋愛を変えていきます。
見分け方: 「次こそは」と思うとき、相手選びだけを変えても同じパターンが繰り返されることがあります。「自分はこの関係に何を求めていたのか」「何を伝えられていなかったのか」を問うことが、本当の変化の始まりです。

浮気・不倫は、誰にとっても簡単に語れるテーマではありません。それでも、「なぜ」を理解しようとすることは、自分と次の関係を守ることにつながると思っています。
まとめ

① 愛情と欲求は独立している → 脳の三層構造(性欲・恋愛感情・愛着)はそれぞれ別に動く。「愛しているのに」は矛盾ではないが、それが免罪符にはならない
② 「バレなければいい」の心理 → 認知的不協和の解消。行動と価値観の矛盾を、価値観の書き換えで解消しようとする自動的なプロセス
③ 繰り返す背景 → 愛着スタイルと自己肯定感の低さが関係していることが多い。「埋めきれない何か」が行動を繰り返させる
④ 裏切られた傷の深さ → 「裏切りトラウマ」。失恋とは質が違い、過去ごと書き換えられる体験。気づかなかったのは信頼していたから——自責は不要
⑤ 関係に潜んでいたもの → 不倫は「悪い人」がいただけでなく、関係の中の積み重ねが背景にあることも多い。どちらの立場であれ、「自分は何を求めていたのか」を問うことが次への一歩
この経験を、自分を知るきっかけにしてください。
次のVol.15もお楽しみに。
この経験を、次の恋愛に活かしたいと思っている方へ
裏切った経験も、裏切られた経験も、自分の恋愛パターンと向き合うきっかけになります。
「なぜいつも同じことが起きるのか」——その問いに答えるための、恋愛に特化した診断があります。
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📚 この記事に関連する本
浮気・不倫の心理を、感情論ではなく深く理解したい方へ。
『不倫と結婚』エスター・ペレル 著、高月園子 訳(晶文社)
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『愛着障害——子ども時代を引きずる人々』岡田尊司 著(光文社新書)
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引用・参考文献
・恋愛感情の三層構造(性欲・恋愛・愛着)
Helen Fisher『Why We Love: The Nature and Chemistry of Romantic Love』(2004)
・認知的不協和
Leon Festinger『A Theory of Cognitive Dissonance』(1957)
・自己肯定感と対人関係の逸脱行動
Roy F. Baumeister & Kathleen D. Vohs「Narcissism as Addiction to Esteem」(2001)
・裏切りトラウマ(Betrayal Trauma Theory)
Jennifer J. Freyd「Betrayal Trauma: The Logic of Forgetting Childhood Abuse」(1994)
・不倫の関係構造
Esther Perel『The State of Affairs: Rethinking Infidelity』(2017)
※本記事は上記の研究・理論を参考に、執筆者の考察を加えてまとめたものです。学術論文の完全な引用形式ではなく、一般読者の方が「気になったら調べてみる」ための入口として掲載しています。
