子どもが、同じ絵本、同じアニメ、同じ服を選び続ける理由
「またそれ?」
ついつい、言ってしまうことがあります。
寝る前に持ってくる絵本は、何度も読んだ一冊。
アニメも、もう台詞を覚えているはずの同じ一本。
服も、洗濯したばかりのお気に入りの同じTシャツ。
「違うのもあるやん」
「今日はこっちにしたら?」
「その話、もう知ってるやろ?」
親からすると、少し不思議です。
新しい絵本もある。
違う服もある。
まだ見ていないアニメもある。
せっかくなら、いろいろ楽しんでほしいと思います。
でも最近、娘が同じものを選び続けるのは、ただ飽きていないからではないのかもしれないと思うようになりました。
結末を知っているから、安心して見られる
寝る前、娘はよく同じ絵本を持ってきます。
ページが少し折れている絵本です。
何度も読んだから、私も途中から暗記しています。
次に誰が出てくるか。
どこで困るのか。
最後にどうなるのか。
娘も全部知っています。
それでも、また読みたがる。
前は、もっと違う話も読めばいいのにと思っていました。
でも、娘にとっては結末を知っていることが大事なのです。
怖い場面があっても、最後には大丈夫になると知っている。
悲しいことがあっても、ちゃんと終わりが来ると知っている。
先が分からない毎日を生きている子どもにとって、最後まで知っている物語は、安心して戻ってこられる場所なのかもしれません。
トトロを見ながら、毎回笑う
娘が何度も見たとなりのトトロをつけています。
私は横で家事をしながら、またこれかと思う。
でも、娘は同じところで笑います。
次に何が起きるか知っているのに、笑う。
ときどき、台詞まで先に言う。
それでも面白いらしい。
大人は、新しいものに価値を感じやすいです。
知らない話。
初めて見る景色。
まだ経験していないこと。
でも子どもは、知っているものを繰り返す中で、初めて見たときには気づかなかったことを見つけているのかもしれません。
前は怖かった場面を、今度は落ち着いて見られる。
前は意味が分からなかった言葉を、少しだけ理解できる。
同じものを見ているようで、子どもの中では毎回少し違う時間が流れている。
同じ服を着るのは、わがままではない
朝、娘が同じ服を出してきます。
昨日も着た服。
その前にも着た服。
洗濯してあるから着てもいい。
でも、別の服もある。
「こっちもかわいいで」
「今日はこっちにしたら?」
そう言うと、娘は少し困った顔をします。
「これがいい」
理由を聞いても、うまく説明できないことがあります。
ただ、それがいい。
子どもにとって服は、見た目だけで選ぶものではなく、
動きやすい。
肌に当たる感じが好き。
好きな色がある。
保育園で褒められた。
その服を着ていた日に楽しいことがあった。
あるいは、理由なんてなくてもいい。
親にはただの一枚でも、子どもにとっては安心して一日を始めるための、小さな決まりごとなのかなと。
「また同じ」が、子どもの支えになることがある
大人の毎日には、決まったことがあります。
いつものコーヒー。
いつもの通勤ルート。
いつもの店。
いつもの音楽。
疲れているときほど、新しいものより、いつものものに手が伸びることがあります。
子どもも同じなのかもしれません。
保育園では、毎日いろいろなことがあります。
友だちとのやり取り。
先生の言葉。
できたこと。
できなかったこと。
我慢したこと。
子どもは自分で思っている以上に、新しいことの中で過ごしています。
だから家に帰ると、知っている話を聞きたくなる。
知っている映像を見たくなる。
知っている服を着たくなる。
それは、変化を嫌がっているのではなく、変化の多い毎日の中で、自分を落ち着かせているような気がします。
親は、子どもに新しさを渡したくなる
親としては、いろいろなものに触れてほしいと思います。
新しい本。
新しい遊び。
新しい服。
新しい経験。
それは、子どもの世界を広げてあげたいからです。
でも、広がることだけが成長ではないのだと最近は思います。
同じものを何度も選ぶこと。
何度も読んで、何度も笑って、何度も着ること。
その繰り返しの中で、子どもは自分の「好き」を確かめているのかもしれません。
自分で選んだものに戻ることで、
「私はこれが好き」
「これなら大丈夫」
「今日もここから始められる」
と、自分の中の小さな軸を作っている。
「またそれ?」と言う前に
次に娘が同じ絵本を持ってきたら。
私は「またそれ?」ではなく、
「今日もこれ読みたいんやな」
と言ってみようと思います。
同じアニメをつけたら、
「この場面、好きやもんな」
と言ってみる。
同じ服を選んだら、
「今日はこれがいいんやな」
と受け取る。
毎回、理由を聞かなくてもいい。
新しいものを勧めなくてもいい。
子どもが何度も戻っていく場所を、親が急いで変えなくてもいいのかもしれない。
いつか娘は、同じ絵本を持ってこなくなる。
同じアニメにも飽きる。
自分で選ぶ服も、変わっていく。
だから今は、同じものを大事そうに選ぶ姿を見ていたいです。
「また同じ」ではなくて。
今日も、娘が安心して戻ってきたものなのだと思いながら。
