【映画評】奈落のマイホーム(2022)~韓国らしい、笑いあり涙ありのディザスタームービー
あまり疲れず気軽に見れる作品を、と思い本作を鑑賞。いい意味で裏切られ、またも韓国映画のレベルの高さを感じさせられたのであった。
シリアスさは薄くコメディ調なのが本作の良いところ。しかし、後半からストーリーは急展開し、シリアスさが一気に増して面白くなる。登場人物の会話の中に、韓国社会への風刺を織り込みつつ、パニックエンタメに父親の愛に、相変わらずの欲張りな「韓国エンタメ」に仕上がっている。
ストーリーはシンプル。平凡な会社員のドンウォンは、11年の節約を経て念願のマイホームを購入する。新居での幸せな家族との日々。しかし、わずか2週間後に、マンションはドンウォンと住人を飲み込み地下500mへと沈んでしまう。ドンウォンたちは、生きて地上に戻ることができるのか?
実は、前半は本作の世界に入り込めなかった。なぜなら、500mの地下とはいえ、救助物資を投入することも、縄を降ろして救出することもできるのでは?と思ってしまったからである。まずは救助物資を降ろせよ、と(笑)前半は絶体絶命感に欠けるというか、リアリティがないというか、物足りなさはあり。
しかし、救助隊が衛星電話を投下し、ドンウォンたちが地上と連絡が取れるようになった矢先、ストーリーは急展開する。そんな簡単に生還させるわけがないのは当然なのだが、ここから本作が本当に面白くなる。そういうわけで、皆さんは途中つまらなく感じることがあっても、そこでやめてはいけません。
ネタバレになるが、この崩落にはドンウォンの子供も巻き込まれ、地下500mでの子供の救出劇がある。ここで「絶対に諦めない父」「必ず子供も守り抜く父」というお決まりの韓国的父親像が展開されるのだが、いつものパターンと言われても、やはりいいものである。実はこの崩落には母親が巻き込まれない。本作は「父親の物語」なのである。日本人にも親の愛、父の愛、はあるけれども、韓国映画の中の父親のカッコ良さは日本人のそれとは比べ物にならない。韓国人にとって父親というのは本当に特別なものなのだろう、と感じさせられる。そもそも韓国作品の中では親子愛が強く描かれる傾向にあるし、母親の愛を主題にした作品もあるわけだが、それでもなお、父親の愛、というのは韓国人にとって特別なテーマなのではないかと思わされる。
現実世界ではマンションがこんなに綺麗に沈んでいくことはさすがにないわけだが、この沈む前のシーンは地震そのものである。突如として住んでいる家が、町が、世界が崩壊してしまうことはあり得る。その意味では本作はフィクションではなく、リアルな物語である。地震への備え、災害への備え、考えておかなければと思わされる。
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どんな困難な状況であっても、誰しも希望をもってそこから脱出しようとする。本当に絶望的な状況というのは、外の状況がわからない、密閉されたような空間で、助かる見込みがあるのかないかもわからない状況だと思う。そして生きる力といのはダメだとわかっていても、奇跡を信じて努力を続けることだと思う。いうなれば、石の壁に囲まれて叩き続けるような絶望かもしれない。家に押しつぶされて、外に声が届いているかもわからない、それでも尚助けを求め続けることかもしれない。映画だから、ドラマだからそんな状況の中で奇跡は起こるわけだが、人生は奇跡を信じて諦めずに進むしかない。
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海外作品が日本に入ってくると、だいたい題名が改悪されるのだが、「奈落のマイホーム」という邦題は大変に気に入った。韓国名はシンクホール(Sink hole, 陥没穴)というサッパリしたタイトル。本作は「家」もまた重要なテーマだと思うので、マイホーム、みたいなタイトルでもよかった気がするが、Sink holeとした特別な理由があるのだろうか。
「パラサイト、半地下の家」もそうだが、韓国人は「家」が好きなのか?と思ったりなどする。邦画をあまり見ないので知らないだけだったら申し訳ないが、韓国作品で、家、マンションという空間の中でドラマが展開していく、というのは一つのパターンなのかもしれない。それは、ただ同居人同士の交流といものではなく、マンションが一つのサバイバル空間になったり、あるいはパラサイトのように、同居人を超えて深く浸食し合う、印象がある。
とりとめがなく申し訳ないのだが、本作は全く難しく考える必要はなく、楽な気持ちで見て、笑って泣いて、楽しめる、素晴らしいエンタメ作品である。個人的には細部の韓国的な部分、私たちと違うセンスも感じられて、楽しめた作品であった。
雑なレビューですみませんが、ぜひ見てみてください。
