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cocoro_no_koe
500万円を失った話(3)感動
初めてのネット投票は、ぎこちない操作ながらなんとか購入できた。
買った馬券は三連複。
3頭を選んで、それらすべてが1、2、3着に入れば当たりになる券種だ。
16頭の中から3頭というのは難しく思えるが、すべての馬が同じ強さというわけではない。抜けた強さの馬がいる。それを見切って当てる。
まあ、そんなに上手くいかないのは後々身をもって思い知ることになるのだが。
私は、これだ、という1頭を選び、その馬を軸に置いて、4通りの三連複馬券を購入した。
賭けた金額は合計一万円。
初めてギャンブルとして行う競馬に、テレビの前の私は高揚していた。
今思えば、その時は当てて金を稼ぐという思いより、スリルある遊びに興奮していたと思う。
テレビでは出走前のファンファーレが鳴り、16頭の馬たちが続々とゲートに収まっていく。
ゲートイン完了。係員が離れる。
直後にゲートが開き、各馬が一斉にスタートした。
アナウンサーが間を空けず、馬名と位置情報を実況する。時折映る観客席からは歓声が上がり、あっという間に最終コーナーに差し掛かった。
その時、カメラは馬群の大外を走る1頭を映した。
その馬は他馬と別格のスピードでコーナーを回り、最後の直線で悠々と先頭に立ち、走り抜けた。
それが知る人ぞ知る名馬、イクイノックスだった。
私は声を出すこともできず、その走りとスター性に目を奪われていた。
次々とゴールする馬たち。
観衆のどよめきや悲鳴混じりの声が場内に溢れた。
私の馬券は、ハズレだった。
だけど軸にしていたのはイクイノックスだった。
それを選んだだけでも、彼の走りを見られた感動として、賭けた一万円は惜しく思えなかった。
この日が、すべての始まりだった。
