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500万円を失った話(13)現実
2024年、秋。
自宅のアパートで、妻が言った。
「明日はこれが食べたい」
1,000円ほどのラーメンだった。
「いいね、そうしよう」
スマホを見ながら、そう返した。
妻は嬉しそうだった。
私のスマホ画面には、その10倍、100倍の数字が並んでいた。
もう、一日にいくら賭けているのか。
総額でいくら負けているのか。
わからなくなっていた。
ただ、最後は捲(まく)れる。
桜花賞での的中が、根拠のない自信を支えていた。
勝てさえすればデカい。
三連単だから。
自分の予想に、信頼できる予想系YouTuberの見解を重ねる。
これでいける。
負けて、負けて、
大きく取り返す。
体感としては、その繰り返しだった。
だが、それは長くは続かなかった。
負けが、異様に長く続いた。
そのときになってようやく、自分の異常性と向き合うことになる。
見ないようにしていた通帳の入出金履歴を開いた。
スクロールする。
入金 ¥35,000。
¥0。
入金 ¥50,000。
¥0。
同じ動きが、延々と並んでいた。
総額は、マイナス200万円を超えていた。
テレビを見て笑っている妻の声が、やけに遠くに聞こえた。
