500万円を失った話(最終話)無理
競馬を辞める。
辞めたいのか?
辞めてどうなる。
その答えは、出ないままだった。
2026年3月。
車の整備で、カーディーラーを訪れた。
待ち時間。
ソファに座り、相も変わらず競馬をやっていた。
次のレースの買い目が決まる。
そのときだった。
「大変お待たせしてすみません。終わりました」
急いでくれたのか、息を切らして整備士が現れた。
説明を受け、立ち上がる。
ふと、展示車に目が止まった。
光沢を放つミニバン。
パネルに表示されている価格は、550万円。
競馬をやっていなければ、買えていたな。
そう思った。
でも、
欲しいか?
やっていなければ、買えていた。
やっていなくても、買わなかったかもしれない。
どちらもあり得る。
想像はいくらでもできる。
ギャンブルで大金を失った。
現実は、ひとつだった。
帰り道。
コンビニに車を止め、結果を確認する。
整備士に呼ばれる前の買い目。
当たっていた。
『買っていれば』、カネが手に入っていた。
一生懸命、私の車を整備してくれた整備士さんに声をかけられなければ、当たっていた。
配当金は50万弱。
私は、鼻で笑った。
どこまでいっても、こうなる。
悔しさより、虚しさが先に出た。
「〜〜なら当たっていた」
「〜〜だったら」
「ギャンブル運が──」
「神様に嫌われて──」
天を仰いだ。
いや、そんな格好の良い言葉はもういい。
終わりだよ。
笑え。
意味なんて求めるな。
前向きに考えるには? ──やめろ。
頭の中のノイズを無視して、最後に残ったのは、
──無理。
その2文字に、すべてが集約された。
失った総額450万円の後、怖くて見ることができなかった入出金履歴を躊躇なく見た。
およそ、500万円に達していた。
3年間の執着。執念。
繰り返してきた答え探し。
全部が、無理。そこに収まった。
私は、本能のままに動いた。
競馬アプリを消す。
YouTubeの履歴を消す。
画面から、競馬が消えた。
家に帰る。
そして、ChatGPTを開いた。
3年間のすべてを、ぶちまけた。
きっかけ。
成功体験。
感情が変わった日。
思いの全てを。昨日の出来事のように。
返ってきた言葉は、驚くほどシンプルだった。
『気持ちが熱いうちに、noteに投稿しましょう』
