逆ポパイ──芝を食って冷静になる男、田辺裕信
競馬界には、冷静な騎手は多い。
でも、芝を食って冷静になる騎手は、田辺裕信しかいない。
2022年、日本ダービー。
アスクビクターモアの手綱を取っていた田辺は、いつになく熱くなっていた。
「皐月賞の上位陣が後ろにいる」「ここで動かねば」
そんな気負いを抱えたまま、3コーナーへ向かっていく。
そこで起きたのが、奇跡のようなアクシデントだった。
前の馬が蹴り上げた芝の塊が、田辺の口に飛び込んできたのだ。
「何度も吐き出そうとしたけど、うまく出せませんでした。でも、これで不思議とかえって冷静になれました」
──そんなことあるか?
いや、あるらしい。
普通の騎手なら、「芝が口に入った」というアクシデントで焦る。
田辺は違った。
芝を味わい、冷静さを取り戻した。
この瞬間、彼は**“逆ポパイ”**になった。
ポパイがホウレンソウでパワーアップするなら、田辺は芝でクールダウンする。
馬でも珍しい。
ドウデュースなんかは、草を食えばテンションが上がる。
でも田辺は違う。
芝で沈静化する、冷静成分を取り込むタイプの人間。
田辺裕信という騎手は、よく「センスの人」と言われる。
でも、そのセンスは説明がつかない。
たとえば川田やルメールのように「この馬の型に合わせたペース設計」があるわけでもない。
前走データや血統傾向をなぞっている気配もあまりない。
むしろ彼は、その場の空気を感じて、今日の競馬をしているだけのように見える。
馬の気分。
風の流れ。
前の馬の出方。
そして、ときには芝の味。
そんなもので判断して、騎乗のスイッチを切り替えている。
だから──
・人気馬でも暴走するときがある
・穴馬でも気配が合えばしれっと勝つ
・理屈では説明できないが、感覚的に「今日は田辺が来そう」と思わせる日がある
そういう騎手である。
それにしても、田辺がすごいのは、
「常に競馬をしている」ことだ。
前走の内容とか、馬柱のパターンとか、そういう“情報”ではなく、
「その日のレースにどう合わせるか」だけを見ている。
それはたしかに“センス”と呼ばれるものだろう。
でも、そのセンスは当たるとは限らない。
むしろ、風を読めていない日の方が多い。
芝の味を間違えた日もある。
馬の気分と合ってない日だってある。
でも、田辺はそれでも毎回ちゃんと読みにいっているのだ。
馬と、風と、芝と、自分の感覚と。
だからこそ、我々ファンも、
田辺を「データで買う」のではなく、
“その日その時の空気”で買う。
「今日の田辺、なんか来そう」
「芝食ったんちゃう?」
「風、読めてる気がする」
──全部気のせいかもしれない。
でも、そう信じたくなるくらいの“予感”を田辺は背負ってる。
田辺裕信は、風と芝と馬と、そしてちょっとした神託で競馬をしている。
常に読めるわけじゃない。
むしろ、読めない日が大半だ。
それでもなお、我々はこう呟いてしまう。
「田辺?……今日は芝、食ってそう」
⸻
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
スキやフォローもよろしくお願いします。
※一部の文・構成はAI(ChatGPT)との対話をもとに生成されています。
