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「傷病手当金から失業保険へ」どう切り替える? 損をしないための時系列マニュアル

体調を崩して会社を休職し、傷病手当金をもらっている。
でも、復帰のめどが立たず、このまま退職することになりそう。
そんな時、頭をよぎるのは「お金」の不安です。

「退職したら、傷病手当金はどうなるの?」
「病気ですぐに働けない場合、失業保険はもらえるの?」
「どうやって切り替えれば、生活費を途切れさせずに済むの?」

病気やケガで退職を余儀なくされた方が、最も知りたい、そして私が相談の現場で一番よく聞く間違いが、この「傷病手当金」から「失業保険(雇用保険の基本手当)」へのリレー(切り替え)です。

この二つの制度は、「同時にもらうことはできない」という絶対のルールがあります。

しかし、正しい手順を踏めば、「まずは傷病手当金でしっかり休養し、治ってから失業保険をもらってゆっくり仕事を探す」という、安心なリレーを成立させることができます。

今回は、退職前から再就職までの道のりを、4つのステップで分かりやすく解説します。


【大前提】二つの制度の「役割」を知る

まず、なぜ同時にもらえないのか。それは二つの制度の「目的(対象者)」が真逆だからです。

・傷病手当金:「病気やケガで働けない人」のための生活保障。
・失業保険:「健康でいつでも働けるのに、仕事が見つからない人」のための生活保障。

「働けない」と「働ける」。この状態が同時に存在することはありません。

だからこそ、あなたが今どちらの状態にあるのかを明確にし、適切なタイミングでバトンタッチしていく必要があるのです。

【STEP1:退職前】傷病手当金を「退職後ももらえる状態」にしておく

一番大切なのは、最初のバトンである「傷病手当金」を、退職した後も確実にもらい続ける(資格喪失後の継続給付)ための準備です。

退職後も傷病手当金をもらうためには、絶対にクリアしなければならない2つの条件があります。

① 退職日までに「継続して1年以上」社会保険に加入していること
(転職していても、空白期間なく社会保険が繋がっていればOKです)

② 「退職日当日」に働いていない(労務不能である)こと
私が相談の現場で一番よく聞く間違いは、この「退職日当日」の過ごし方です。

「最後の日だから」と無理をして挨拶に出社したり、数時間でも引き継ぎの作業をしてしまったりすると、「退職日に働ける状態だった」とみなされ、その後の傷病手当金が全額ストップしてしまいます。

たとえ有給休暇を消化中であっても、退職日当日は絶対に会社に行って仕事をしてはいけません。

やるべきこと
退職日が決まったら、主治医に「退職日(〇月〇日)も含めて、労務不能(働けない状態)であるという証明を書いてください」としっかり伝えておきましょう。

【STEP2:退職直後】失業保険の「受給期間延長」手続きをする

退職すると、会社から「離職票」が送られてきます。通常であれば、これを持ってハローワークに行き、失業保険の手続きをします。

しかし、あなたは今、病気で「働けない状態(=傷病手当金をもらっている状態)」です。

失業保険は「働ける人」しか申請できないため、今ハローワークに行っても「あなたはまだ働けない状態なので、申請は受け付けられません」と断られてしまいます。

では、失業保険をもらう権利は消滅してしまうのでしょうか?

いいえ、大丈夫です。ここで使うのが「受給期間の延長手続き」です。

失業保険をもらえる期間は、原則として「退職日の翌日から1年間」と決まっています。しかし、病気やケガで働けない場合は、この期間を「最長3年間(本来の1年と合わせて最大4年間)」まで延長させることができるのです。

やるべきこと
退職後、引き続き働けない状態(傷病手当金を受給する状態)が「30日」続いたら、ハローワークで「受給期間延長申請」を行ってください。 以前はこの申請期限が厳格でしたが、現在は緩和され、延長後の受給期間が終わるまでであれば申請自体は可能です。しかし、申請が遅れると失業保険を全額受給できなくなる可能性があるため、動けるようになったら早めに手続きすることをおすすめします。

「体調が悪くてハローワークに行けない」という場合でも、郵送や代理人(家族など)で手続きを行うことができます。

これで、あなたの失業保険の権利は、病気が治るまで安全に「冷凍保存」されました。安心して治療に専念してください。

【STEP3:療養中】傷病手当金を受け取り、しっかり休む

受給期間の延長手続きが終わったら、あとは「傷病手当金」を受け取りながら、心と体を休めることに専念します。

傷病手当金は、支給開始日から通算して「最長1年6ヶ月」もらうことができます。

ちなみに、2022年の健康保険法改正により、傷病手当金の給付期間の計算方法が「支給開始日から暦日で1年6か月」から「通算して1年6か月」に変更されました。

つまり、途中で体調が少し良くなって復帰し、手当をもらわなかった期間はカウントされません。

本当に休んで手当をもらった期間だけを足して1年6ヶ月まで使えるようになったので、より安心して治療に向き合えるようになっています。

焦って無理に働き始める必要はありません。「もう大丈夫」と主治医が判断するまで、この制度を頼りにしっかり治してください。

ただし、退職後は会社が手続きをしてくれないため、自分で毎月(または数ヶ月ごとに)申請書を作成し、主治医に証明を書いてもらって、加入していた健康保険(協会けんぽや健康保険組合)へ直接郵送する必要があります。

【STEP4:回復後】傷病手当金を終了し、失業保険を「受給」する

治療のかいあって「週20時間以上(またはフルタイム)で働ける状態まで回復した!」と主治医からお墨付きをもらったら、いよいよバトンタッチの時です。

働ける状態になったということは、傷病手当金の受給条件(労務不能)から外れ、失業保険の受給条件(働ける状態)を満たしたことを意味します。

やるべきこと

  1. 主治医に証明書を書いてもらう
    ハローワークが用意している「傷病証明書」や「就労可能証明書」という用紙に、主治医から「〇月〇日より、就労が可能な状態に回復しました」と書いてもらいます。
    (※傷病手当金をもらうのは、この「回復した日の前日」までとなります)

  2. ハローワークに行き、失業保険の手続きをする
    主治医の証明書と、保存しておいた離職票などを持ってハローワークに行きます。
    「病気が治って働けるようになったので、延長していた失業保険の受給を開始したいです」と伝えてください。

ここでの大きなポイントは、病気やケガなど「正当な理由」で退職した場合、ハローワークで「特定理由離職者」として認定されることです。 特定理由離職者になれば、自己都合退職のような「給付制限(2ヶ月または3ヶ月の待機期間)」がなくなり、手続きから約1ヶ月後(7日間の待機期間終了後)には失業保険の振り込みがスタートします。

さらに、条件によっては給付される日数(期間)が延びることもあります。

これで無事に、傷病手当金から失業保険へのリレーが完了しました。
あとは失業保険を受け取りながら、無理のないペースで新しい仕事を探していきましょう。

【まとめ】損をしないための「鉄則」

最後に、このリレーを成功させるための鉄則をまとめます。

  1. 退職日当日は、絶対に働かない(出社しない)

  2. 退職後、「30日」経ったらハローワークで「受給期間の延長」をする

  3. 「働ける」と医師が判断するまで、傷病手当金でしっかり休む

  4. 治ったら医師の証明をもらい、ハローワークで失業保険の受給手続きをする

病気で会社を辞めざるを得なくなったとき、一番怖いのは「お金の不安から、焦って無理な再就職をしてしまい、また体調を崩すこと」です。

傷病手当金と失業保険。この二つの制度は、あなたがこれまで懸命に働き、保険料を納めてきたからこそ使える、正当な権利です。

どうか制度を正しく理解し、フル活用して、ご自身の心と体を一番大切に守ってあげてください。

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