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怪談百物語#47 部室

休日、エアコンの効いた部屋でゆっくりしていると、突然ドアを叩く音が響いた。
 「おーい、居るんだろ。開けてくれよ。おーい。」
友人の声がドア向こうから聞こえてくる。
ヘッドホンの音量を上げて虫を決め込む。
メタルバンドのドラムよりもドアを叩く音は大きくなる。
ドアは強く揺れている。
 「-い。開けろ。開けてくれよ。おーい。」
同じようなセリフが何度も、ドアを叩く音の合間に聞こえる。
荒げているわけでもないのにやけに鮮明な声。
足の震えを抑え、歯を食いしばって勉強机に向かう。
弱音をノートに書き出していく。
少しでも恐怖が薄れるように。

突然音が消えた。
少し落ち着いて冷静に考えることができた。
そういえば、窓は閉めたか?
背を向けて座っていた窓を急いで振り返る。
友人が居た。
 「おーい。開けてくれよ。」
ニタニタと笑う口には歯が一つもなく暗闇が広がっている。
糸のように笑う目はこっちを見ていない。
バンバンと、今にも割れそうな勢いで窓が叩かれる。
助けてくれ、助けてくれ。
椅子の上で膝を抱えて両手で耳を塞ぐ。
どうやってきたんだよ。早く帰ってくれ。頼む。

また音が消えた。
静かになった部屋にスマホの着信音が響いた。
画面を見ると同じクラブの先輩からメールが届いていた。
 「あいつ、目を覚ましたらしいぞ。死んだらどうするつもりだったんだよ。」
昨日の部活後、悪ふざけで部室に友人を閉じ込めて帰った。
夜店に誘ったら「彼女と行くから無理。」とか言い出すからだ。
待ち合わせの時間が過ぎたら開けてやるつもりだった。
まさか熱中症で倒れるとは思わなかった。
部活で水筒が空になっていたのも悪かったみたい。
夜になって部室に行くとドア越しに「開けてくれ。」と聞こえた。
今開けるよ、と鍵を開けた途端あいつが倒れてきた。
開いたことに気付く余裕すらなかったのか、耳元で「開けてくれよ。」と呟くと友人は意識を失った。
驚いて救急車を呼ぶと、そのまま入院が決まった。

それから一日経ってさっきのメールが届いた。
生きていてくれて良かった。
何も良くないけれどほっとした。
詳しく聞くと、あと少し遅ければ脳に障害が残るところだったらしい。
震える手で親に電話をかける。
泣くだろうか、怒るだろうか。
わからないけどすべてを話さないと。
部屋のドアを叩く友人の姿が目に浮かぶ。
ああなってしまう可能性だってあったのだ。
一生をかけても償いきれないかもしれない。
そのくらいのことを俺はしてしまったんだ。

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