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怪談百物語#26 雨宿り

すげー雨。
ファミレスで友人達と話していると、外では雨が降り出した。
屋内からでもわかるくらいの大雨だ。
店の前の歩道を走る学生、俺らと同じ制服の子だ。
さっき降り始めたばかりなのに制服がびしょびしょだ。
 「これはしばらく帰れないね。もう少し居させてもらおうよ。」
友人は、そろそろ帰る時間なのになあ、とぶつくさ言っている。
俺もそろそろ帰らないと塾に遅れてしまう。
困ったなあ。
俺は窓の外を眺めてぼやく。
黒い雨雲の向こうは日差しが見え、これが通り雨なんじゃないかと予想がついた。
晴れじゃなくても、雨脚が弱まってくれるといいけど。
 「ん?」
雨で気温が下がって窓が結露しだしたのか、窓枠の部分から白く曇り出している。
年末も近い十一月末。
まだ衣替えの終わらないウチは冬用のジャケットなんて用意してない。
今日だって秋用の軽いジャケットだけだ。
外めんどくさいなあ。


 「ちょっといってくるわ。お前も何か飲む?」
友人も寒さを覚えだしたのか、ドリンクバーに向かうという。
オニオンスープを頼むと俺はまた外を眺める。
窓の曇りは先ほどよりも広がっていた。
ぼんやりと、白い曇りが動き出す。
目に見えて曇っていく。
わけではないらしい。
窓の外、左から白いモヤが店の軒下に入るのが見えた。
車の排気かと思ったが立ち消える気配がない。
そのモヤも俺と同じで、じっと雨を見ながらプカプカ浮かんでいるように見えた。
雲はさらに厚く黒くなっていく。
これ、止まないな。
明るかったはずの遠くの空では、雷まで響きだしていた。


 「おい、どうしたよ。持ってきたぜ。」
声に振り向くとテーブルには湯気の立つカップが置かれていた。
香ばしい豆の香り。
どう見てもコーヒーだ。
席に着かずニヤニヤと笑う友人に、少しイラつきながら声をかける。
 「おまえなあ。そういう悪ふざけは小学生で止め、っておい。待てよ。これどうすんだよ!」
悪いね、ちゃんと持ってくるから。なんて言いながら友人はもう一度ドリンクバーへ向かう。
まあ戻ってきてからでもいいか。
これはあいつに飲ませよう、俺コーヒー飲めないし。


それよりもあのモヤを見てみて欲しくて、うずうずする。
プカプカ浮かぶモヤはさっきよりも薄くなっていた。
消えるなよ。あいつまだ見てないんだから。
ジッと見ていると、モヤが振り向いたように靡く。
おお、びっくりしたんじゃない?
プカプカした動きが、少し乱雑になった。
ご飯とおやつで迷って慌てるうちの犬みたいだ。
思わず笑みが零れた。
あぁ、モヤが軒下から離れていく。
笑って悪かった、戻ってきてくれよ。
モヤは意を決したように前?を向いて、すごい勢いで軒下から飛び出した。
その瞬間。

――ピカッ!

どごおおおおおん!!

 「うわっ!」
目の前の駐車場に雷が落ちた。
あっぶねえ。
屋内にいるから当たるはずもないのに、当たったんじゃないかと見まごう迫力だった。
 「やべぇ、今のマジですげぇ。」
いつの間にか友人がテーブルの端に立っていた。
二つの殻のカップを手に。
 「お前こぼしてんぞ、どうすんのそれ?」
 「え?うわあっちぃ!」

チェックのスラックスにボトボトとオニオンスープがかかっていた。
こいつほんと馬鹿。
急いでトイレに走る友人に目もくれず、俺はまた外を眺める。
雨が止む気配はない。
いや、それよりもさっきのあれは本当にすごかった。
 「幽霊って雷当たるんだな。」
モヤに雷が当たった瞬間、すごい表情の男性が見えた。
めちゃくちゃに引きつった、人間離れしたえぐい表情。
生前はお笑い芸人だったのか?
馬鹿なことを思いながら遠くの雲を眺める。
ゴロゴロゴロ、と遠雷が聞こえた気がした。

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