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怪談百物語#48 オクラ

この春から庭でオクラを育てている。
種から育てて、肥料をやり水をやり。
梅雨が明けてようやく実り始めてきた。
水を遣って部屋に入ろうとすると、オクラによく似た色の虫が葉についているのを見つけた。
何時の間に来たのか、はたまた卵から育ったのか。
立派な体ノソノソ動いたかと思うと、オクラをガジガジと食べ始めた。
よく食べるもんだ。
みるみる間に一本丸ごと平らげてしまった。
しばらく放っておこうか、どうせ食べきれない量だしな。
そもそもオクラはあんまり好きじゃないんだ。
園芸友達との付き合いで仕方なく育てている。
まあ存分に食えばいいさ。

虫は日に日に大きくなってきた。
もうオクラとそれほど変わらない大きさになっている。
体からしてそんなに食べるのかというとそうでもない。
休日、一日見ていても実りかけの小さなオクラを二、三食べるかどうか。
庭全体でみると微々たるものだ。
田舎の庭は広い。
なのにその虫は一匹しかいない。
一日中オクラ食べて這って、他のところへ行く気配もない。
ずっとうちの庭にいる姿を見ていると愛着が湧いてきた。
手間のかからないペットみたいなものだ。
まあ幼虫の間なら増えないし、そのまま育つのを観察することにした。

今朝も虫はいた。
元気そうに這いずり回ってオクラを食べている。
全部食べてくれてもいいんだが、オクラはほとんど減っていない。
もっと食べてもいいんだぞ。
軽くつつくとグニグニと体をよじらせる。
最近こうやって触れるのだが、逃げようとする気もないらしい。
ハハハ、気持ち悪いけどかわいいな。

畑にまく肥料を取りに部屋に帰ると、庭からカラスの泣く声が聞こえる。
何年かまえに育てていたメロンに味を占めて、あいつらは毎年この時期に来る。
急いで戻り追い払う。
しかし間に合わなかったようで地面にオクラの残骸が散らばっている。
あの虫は無事か?

虫は潰れて死んでいた。
カラスについばまれたのだろう。
その姿は細かい毛が生えていて、潰れた腹からは種がはみ出ている。
どう見てもオクラだった。

あんなに動き回って、元気に食べていたあいつがオクラ?
俺は何を育てていたんだ?
夢でも見ていたんだろうか。
その日はもう布団に入って寝ることにした。
身も心も疲れていたのか、その日はぐっすり眠れた。

夢の中であいつは元気そうに走り回っていた。
割り箸の足を馬のように動かして、俺を見つけると満足したようにどこかへ去っていった。
キュウリじゃないだろお前は。

おかしな夢を見たせいか翌日は熱を出した。
なんだったんだろうなあいつ。

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