怪談百物語#53 うちの梅酒
庭の梅が実を付けた。
うちでは梅酒を作るのが恒例で父は早速つける準備を始めた。
ルンルン気分の父は「ちょっとホワイトリカー買ってくる。」と言って車を出した。
梅酒を漬ける専用の焼酎がそんな名前だそう。
母は去年の残りの氷砂糖を棚をひっくり返して探している。
こういう時は大体使い切っている。
仕方がないので私は自転車でスーパーに向かった。
面白そうなので氷砂糖と一緒に黒糖を買って帰る。
「ありがとうー!氷砂糖見つからなかったのよー。」
どこにいったのかしら、と言う母は梅の準備を終えていた。
ヘタを取って水で洗い、綺麗に拭いて乾燥させる。
一番面倒な作業を一人で済ませてくれていた。
感謝の気持ちで梅酒用を漬け込む二つの瓶を洗って拭いていると父が帰ってきた。
案の定、ホワイトリカーと一緒にワインも買ってきていた。
「安いヤツだから大丈夫。」何が?
水滴一つ残さず拭いた瓶に、梅、氷砂糖の順番で層を作るように入れていく。
焼酎と砂糖が大体2:1になるようにホワイトリカーを注げばできあがり。
後は時々揺らしながら一ヶ月ほど寝かせれば飲めるはず。
少しずつ味見をしながら一年後には完成だ。
そうやって毎年梅酒を作っていた。
黒糖でも同じように作れる。
炭酸水で割って飲むのが美味しい。
これは祖父の父が庭に梅の木を植えた日の夜に夢で見たまま作ったときのレシピそうだ。
梅の木が教えてくれたのか、はたまた酒飲みの欲が生んだレシピなのか。
五十年以上続いている、うちの魔法のレシピである。
