怪談百物語#69 土管
うちの庭には土管が生えてる。
母が子どもの頃からずっとあるらしい。
縦に生えているからか、近所の子ども達がゲームみたいに入りたいって訪ねてきたことがある。
祖父が怒って追い返したけど、僕も入ってみたいと思った。
ガラガラと玄関の戸を閉めた祖父は、僕の考えに気付いたのだろう。
「頼むから入ってくれるなよ。わしじゃどうしようもできんからな。」
と怖い顔をして言うなり居間に戻っていった。
言われた通り近付かないまま月日は流れ、祖父はある日突然亡くなった。
通夜を終えた夜、僕はもういいんじゃないかと思って土管に近づいた。
入らなければ、覗くだけなら大丈夫だろう。
そう思って縁側にあった祖父の履物を借りて庭に出た。
土管へ近づこうと一歩踏み出した時だった。
どこからか視線を感じた。
周囲を見回すが敷地内だ。
当然誰もいない。
気味が悪いのと幼小の記憶から、やはり覗くのはやめた。
「何か知ってそうな祖父ちゃんは死んじゃったし、土管どうすんだろうな。」
覗けなかった悔し紛れに、足元にあった親指よりも小さな石を土管に向かって放り投げた。
狙いが良かったのか石は見事穴の中に入った。
――痛えな。
聞こえるや否や部屋に駆け込み戸を閉めた。
幻聴だとは思うが、はっきり声が聞こえた気がした。
それ以来土管への興味は捨てた。
何があったわけじゃない。
はっきりと耳に残っているあの幻聴のせいで近寄る気にもならない。
祖父が生きているうちにあの土管が何なのか、聞いておけばよかったな。
