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怪談百物語#22 BPM

何度弾いても音が遅れて聞こえる。
最近最近新しいキーボードを買った。
と言うとちょっと語弊がある。
メルカリで中古で買った88鍵の大きいキーボード。
届いた瞬間驚いた。
今まで使っていた49鍵の倍くらい大きい。
パソコンに繋げるためテーブルに置いてみると、少しはみ出る。
倒れるようなものじゃないから良いけれど。
でもこれは良くない。
音がずれるのだ。
買ってしばらくの間は安定してテンポ通りに弾けていた。
しかし最近は弾き続けていると徐々にズレていくのがわかる。
端から端まで距離があるから、遅れて聞こえるのかな?
そんなことはないか。
中古だから仕方ないのかもしれないけど、ちゃんと注意書きに書いて置いて欲しい。
以前使っていた49鍵のキーボードは売ってしまった。
最初は大丈夫だったから、予備に置いても邪魔だったんだ。
売らなきゃよかったな、と今更ながら後悔している。

曲作りを続けていると、どうにも詰まってくることがある。
でたらめに鍵盤を弾いていく。
何かアイディアが生まれるまれることを祈って。
鍵盤を弾くうちに、段々と記憶にある何かの曲に近づいて、また離れて。
次々に曲が変わっていく。
どこかで聞いたことがあるフレーズ。
これは何だったかな。気になって止まらない。
記憶に縋りながら弾いていく。
指はスムーズに動いていく。
鍵盤と一体になった今、これが楽しくてやめられない。
どこかで聞いたあの曲。
答えは出てこない。
それでも返歌のように音を重ねていく。

不意に指が止まる。
違和感。
今、弾いていない音が聞こえた。
鍵盤を見ると沈み続けている鍵があった。
これのせいか。
故障の原因がわかった、テンションが上がる。
早速修理道具を取り出して鍵盤を剥がす。
なおせる程度のものだといいが。
ゴミが詰まっている様子はない。
おかしいなと思い、原因らしき黒鍵の裏を見る。
お札が貼られていた。
こんなに分厚いのがあれば、そりゃずれるわけだ。
試しに剥がして弾いてみた。
「ギィイィィィアアアアアアア!」

そっとお札を貼り直すと、メルカリで売ることにした。

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