【短編集-花の冠】 第二話『骨の剣』
骨の剣
戦が終わった。
勝ったのは帝国だった。
広い領土。多くの奴隷。
都は金と歌にあふれ、
戦の記憶は、酒とともに薄れていった。
戦場には骨が残った。
誰のものかもわからぬ、
白く、砕けた命のかけら。
俺は、その骨を集めていた。
理由はわからない。
ただ、拾って、埋める。
骨のぶつかる音と、
土を掘り埋める音だけが。
死の数だけが、
俺を動かし続けた。
ある日、
その地に、
剣の柄だけを見つけた。
刃は、もうなかった。
まったく汚れのない、
争いさえなかったように輝く、
緑色の柄だった。
拾い上げると、そこには文字が刻まれていた。
「この剣が殺すのは、正義か、それとも悪か」
空を見上げる。
死臭が染みついた、
赤く乾いた大地の上には
静かな青があった。
柄を手に、丘に登った。
誰とも知らぬ墓の前に、
そっとそれを置く。
丘の向こうには、
繁栄する都と、
日々連れてこられる奴隷の列が見えた。
数日後、
その墓に、花が植えられていた。
いろんな種類の花。
その色は、
白
白
白……
泥だらけの手の少年が、
そばにしゃがんでいた。
「花はおまえが?」
少年はうなずいた。
「きれいなものを、守ってあげたかった」
俺は、黙って隣に座り、
土の温もりに手を置いた。
そのとき、背後から太い声が聞こえた。
「きれいなものばかりじゃないだろ?」
振り向くと、そこには
たくましい肉体の、異国の大男がいた。
「でも、この花はきれいだよ?
ねえ、おじさんもそう思わない?」
少年が俺に尋ねた。
赤い大地から運ばれた風が、
白い花をゆらす。
まるで、祈りのように。
その白い花を見ながら、
――骨は白いから美しいのだと、
俺は思った。

《終》
