【短編集‐花の冠】プロローグ『風が産まれた日』
風が産まれた日~プロローグ~
最初にあったのは、
重たい空と、沈黙した大地だけだった。
空はただ高く、動くことなく。
大地は冷たく、何も語らなかった。
太陽が落とす日差しが、全ての始まりだったのかもしれない。
大地はそれに呼応するように、胎動を始めた。
大気が昇るのは必然だった。
静かな空に、熱を持って吸い込まれていった。
そこに空白が生まれた。
空の中に、目に見えない、ぽっかりとしたすき間。
冷たい空気が、静かにそこへ流れ込む。
それが、風の始まりだった。
誰に知られることもなく、
名も持たず、言葉も持たず。
ただその日から、
空と大地は、呼吸をはじめた。

《始》
