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【勉強ログ】「梨状筋」を"坐骨神経を踏まずに"リリースする。殿部深層のアクセスルートと触診記録

## 「お尻が痺れる=梨状筋症候群」の思考停止が危ない


こんにちは、古茶です。

臨床で**「座っているとお尻から太ももの裏が痺れる」**という訴えに出会ったとき、真っ先に「梨状筋症候群(Piriformis Syndrome)」を疑うPTは多いと思います。


かく言う私もそうでした。

「SLRは陰性だし、座位で増悪するから梨状筋だろう」と早合点して、梨状筋のストレッチやテニスボールでのセルフリリースを指導する。


しかし、改めて解剖書を広げてこの領域を見直すと、**「梨状筋の直下に坐骨神経が走っている」**というシンプルな事実に、ゾッとしました。

闇雲にテニスボールで圧をかけるということは、**「神経の上から体重をかけている」**のと同じだからです。


今回は、自分の体と妻の体を借りて、梨状筋を**「安全に」**リリースするためのアクセスルートを検証した記録です。


## 解剖学的イメージ:坐骨神経の「6つの通り道」


梨状筋は、仙骨の前面(S2-S4)から起こり、大坐骨孔を通過して大転子の上縁に付着する**深層外旋六筋のリーダー格**です。


最大のリスクは、坐骨神経(Sciatic Nerve)との位置関係にあります。

教科書的には「梨状筋の下を通る(梨状筋下孔)」とされていますが、実際には**解剖学的バリエーション(変異)**が存在します。


Beaton & Ansonの分類(1938年)では、6つのパターンが報告されています。


1. **Type A(約85%)**: 坐骨神経が梨状筋の**下**を通る(教科書通り)

2. **Type B(約10%)**: 腓骨神経が梨状筋を**貫通**し、脛骨神経は下を通る

3. **Type C(約3%)**: 腓骨神経が梨状筋の**上**を通り、脛骨神経は下を通る

4. **Type D〜F(まれ)**: 坐骨神経が未分岐で梨状筋を貫通、など


つまり、**約15%の人では坐骨神経の一部が梨状筋の中を通っている**ということです。

この人たちに対して、梨状筋をゴリゴリ圧迫するとどうなるか…。考えるだけで冷や汗が出ます。


参考文献: Beaton LE, Anson BJ. (1938). The Relation of the Sciatic Nerve and of Its Subdivisions to the Piriformis Muscle. *Anatomical Record*.


## 触診のコツ:「大転子」と「仙骨」を結ぶ線から潜る


昨晩、改めて殿部深層の触診を練習しました。

梨状筋は深層にあるため、大殿筋を「どかす」必要があります。


**手順1:ランドマークの確認**

側臥位(横向き)がベストです。

- **大転子の頂点**を確認(指先でコツンと当たる骨)

- **仙骨の外側縁**(お尻の割れ目の横の硬い骨)


この2点を結んだラインが、梨状筋の**走行方向**そのものです。


**手順2:大殿筋をかき分ける**

梨状筋に到達するには、まず大殿筋の厚い筋腹を越えなくてはなりません。

ポイントは、**大殿筋の上縁を狙う**こと。

大殿筋は腸骨稜から起始するため、上縁は比較的薄く、そこから斜め下方に指を沈めていくと深層にアクセスしやすいです。


**手順3:「転がる」感触を探す**

大転子の後方、やや上方に指を沈めていくと、骨の上に**「コロコロと転がるソーセージ」**のような筋腹を感じるポイントがあります。


ここで確認テスト:

- 股関節を軽度屈曲位で内旋させると、**梨状筋は伸張され、指の下で張る**

- 外旋させると**緩む**(梨状筋は外旋筋だから)


この張り感の変化を指先で捉えられたら、梨状筋です。


**手順4:神経を踏まないゾーンの確認**

坐骨神経は、梨状筋の**下縁(尾側)**を走行します。

したがって、リリースのタッチは梨状筋の**上半分〜中央**を狙い、下縁には圧を加えないようにします。


具体的には、大転子の頂点〜仙骨のラインの**やや頭側(上方)**にピンポイントで圧をかけるイメージです。


## リリースの実際:「押す」のではなく「持ち上げて滑らせる」


ここが一番大事なポイントです。

梨状筋を**垂直に圧迫すると、その深層にある坐骨神経を圧迫**してしまうリスクがあります。


私が実践しているのは、**水平方向のスライド**です。


1. 筋腹を指先で把持(つまむ)

2. 大殿筋と梨状筋の**境目(インターフェイス)**を探す

3. 筋膜同士が滑る方向に、ゆっくりと横方向にずらす


この時のイメージは、「筋肉を押し潰す」のではなく、**「1枚の紙を別の紙の上で滑らせる」**ような感覚です。

組織間リリースの基本ですが、殿部深層ではこれが特に重要になります。


リリース中に患者さんが**「ビリッと電気が走る」**と訴えたら、**即座に手を離してください**。

それは坐骨神経への圧迫サインです。圧の方向や深さを修正するか、そのセッションでのアプローチを中止します。


## 「痺れ」ではなく「鈍い痛み」が正解


梨状筋のトリガーポイントを正確に捉えた場合、患者さんの反応は**「ビリビリした痺れ」ではなく、「ズーンと奥に響く鈍い痛み」**です。


- **鈍く響く** → 梨状筋の筋膜・トリガーポイント → リリース継続OK

- **電気が走る・鋭い痺れ** → 坐骨神経の圧迫 → 即中止


この「鈍い」と「鋭い」の違いを患者さんにも説明し、共同作業でリスクを管理することが大切です。


## まとめ:解剖学的リスクを知った上で触る


梨状筋は「ストレッチすればいい」という安易なアプローチで済ませがちな筋肉ですが、その直下には体で2番目に太い神経が走っています。


明日の臨床で「お尻が痺れる」と言われた時、

- まず坐骨神経の走行を3Dでイメージする

- 梨状筋の**上半分**から安全にアクセスする

- 「押す」のではなく「滑らせる」


この3つを意識するだけで、リスクを最小化しながら、効果的なリリースができるようになるはずです。


深層の触診は怖いですが、だからこそ解剖学に立ち返る価値がある。

地味な復習の繰り返しですが、これが明日の臨床を変えてくれると信じています。

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