第68話 "悪意のないいじめ"
悪意のないいじめ
高校1年生の次男が、いじめにあった。
「絶対ない」なんてことは人生にない。
それは分かっている。
でも、まさか次男が。
アオトとは真逆で、
学校が大好き、友達が大好き。
友達との関わり方に自分なりのポリシーがあって、
座右の銘は
“パセリ人間になること”
パセリみたいに、
主役じゃない。
絶対必要ってわけでもない。
でも、いるとなんだかいい。
名脇役のような存在に。
自分に関わる人が
「なんだか楽しいな」
「居心地いいな」
と思ってくれたらいい。
そんな思いを、密かに持っている子だった。
もちろん些細な喧嘩や嫌な思いはあった。
でも中学時代は、見ていて気持ちいいくらい青春を謳歌していた。
担任からも
「どこに行っても大丈夫だよ」
と太鼓判をもらい、夢を持って入学した高校。
まさか、いじめに遭うなんて思ってもいなかった。
でも、次男はもうすぐ学校を辞める。
数ヶ月間、嫌がらせを受けながらも通い続けた。
“パセリ”を忘れず、
周りを巻き込まないように、
普通を装っていた。
でも、限界がきた。
身体に反応が出て、
精神科で投薬を受けることになった。
学校からは、ヒアリングの結果
「息子さんの訴えは全て事実でした」
「言われた通りの嫌がらせはありました。」
だけど。
「悪意はありませんでした」
最終判断は、
“悪意のないいじめ”
謝罪はさせます。
カウンセリングも受けさせます。
そう言われた。
これまでの数ヶ月の間、一切の謝罪もなく、反省しているとも思えない態度。
学校の対応のミスを指摘しても、
「一部分を見ればそうかもしれませんが、全体で見れば間違いではありません」
といい逃れる。
時間が経つにつれて、
こちらは“面倒な親”の扱いになっていく。
そして言われた。
「いつか被害者と加害者が
お酒を酌み交わせる日が来るといいですね」
……それ、学校がいう言葉?
謝罪もなく、
気持ちの整理もつかないまま、
どうやってそこに辿り着けというのか。
加害者は普通に登校している。
学校に守られている。
次男は、行けない日が増えている。
でも単位があるから、
「課題は提出してください」と電話が来る。
被害者って、なんなんだろう。
私立には暴走を止める機関がない。
被害者は泣き寝入り。
マスコミやネットで取り上げられれば
何か変わるのかもしれない。
でも、そんなことは現実的じゃない。
親なのに、無力すぎて自分が嫌になる。
「悪意はなかった」
そんな一言で、
この数ヶ月がなかったことになるなんて。
結局、
「いつか幸せになってやる!」
戦うだけ時間の無駄なら、
居場所を変えて前を向けばいい。
……わかってる。
頭では、わかってる。
でも、なんだかな。
今、私にできることは。
せめて自宅にいる間は、
嫌なことを忘れて笑ってほしい。
もう高校生だけど、
まだ高校生だから。
嫌がられないうちは、
一緒に楽しもうと思う。
最近は、
大好きな銃で空き缶当て対決をしたり、
カラオケに2人で行ったり、
ランチしたり。
イキイキした時間を増やして、
まずは心を復活させなくちゃ。
