「生きがい」は一人では見つからない— ミネルバ大学生との共同プロジェクトから見えてきたこと
Civic Projectから始まった今回の出会い
ミネルバ大学の学生たちは、世界中の都市を移動しながら学ぶ中で、各拠点ごとに「Civic Project」と呼ばれる実践型プロジェクトに取り組みます。
企業やスタートアップ、社会課題に取り組む団体と協働しながら、リアルな問いに向き合い、リサーチからアウトプットまで一気にやりきる。
そんなダイナミックな学びの場です。
この春、Project MINTはそのパートナーとして、ミネルバ大学の学生チームと3ヶ月間ご一緒しました。
テーマは「IKIGAI × 人生設計」
今回のテーマは、
“Living with Ikigai: Designing Your Life To Age Well”
「どう生きるか」だけでなく、
「どう歳を重ねていくか」を見据えながら、
30代・40代という比較的早い段階から生きがいをどう育てていくかを探るプロジェクトでした。
背景にあるのは、現代社会に広がる
バーンアウト
社会との断絶感
意味の喪失
といった静かな課題です。
日本では今、急速に高齢化が進み、
2060年には人口の約40%が65歳以上になると言われています。
しかし同時に、多くの人が定年後、あるいはキャリアの転換期において
「役割」と「アイデンティティ」の断絶を経験しています。
これまで社会の中で価値を発揮してきた人ほど、
「自分は何者なのか」という問いに直面する。
これはまさに、Project MINTが向き合ってきたテーマでもあります。
多様なルーツを持つ学生たちと進めた3ヶ月
今回一緒にプロジェクトを進めたのは、
イタリアとブラジルにルーツを持つ3年生
ウクライナ出身の4年生
中国出身の1年生
という、とても多様なバックグラウンドを持つメンバーでした。
毎回のミーティングはとてもフラットで、和気あいあいとした雰囲気。
それでいて、議論は驚くほど深く、「生きる意味」というテーマにそれぞれが真剣に向き合っているのが印象的でした。

学生たちが取り組んだこと
プロジェクトの中で、学生たちは以下のような活動を行いました。
IKIGAIに関する学術研究のリサーチ(心理学・社会学・神経科学など)
日本国内外の実践者や当事者へのインタビュー(5〜10件)
沖縄(ブルーゾーン)における長寿の秘訣・生きがいの実践知の探求
世代間関係や「居場所(Ibasho)」の役割の分析
リサーチをもとにした実践的なプログラム設計
さらに、その成果は単なるレポートではなく、
ウェブサイトやワークショップといった形で、社会に開かれたアウトプットとして発信されています。

「IKIGAI」と「IKIGAI感」の違い
このプロジェクトの中核にあったのが、精神科医 神谷美恵子 の視点です。
彼女はIKIGAIを次の2つに分けて考えました。
IKIGAI(対象):子ども、仕事、創作活動、人との関係など
IKIGAI感(感覚):自分の人生に価値があると感じられる主観的な感覚
重要なのは、
IKIGAIとなる対象があっても、IKIGAI感が伴わないことがある、という点です。
科学が示す「生きがい」の影響
IKIGAIは抽象的な概念ではありません。
宮城県で行われた大規模研究 大崎コホート研究 では、
生きがいを感じていない人は、
心血管疾患による死亡リスクが1.6倍
外的要因による死亡リスクが1.9倍
になることが示されています。
学生たちがたどり着いた一つの核心
今回、学生たちは歴史・心理学・神経科学・社会学といった複数の領域を横断しながら、IKIGAIを再定義していきました。
その中で導き出された、非常にシンプルでありながら本質的な洞察があります。
生きがいは、一人で「見つける」ものではなく、
他者との関係性の中で「認識される」ものである。
自分が意図して行ったことによる達成感ではなく、他者とよろこびを分かち合う瞬間に「生きがい感」を実感するということです。
そして、これは日本独自のものではなく、他文化においても共通することなのでは、という議論を行いました。
例えば、学生たちの出身地域である言い伝えを教えてくれました。
イタリアでは、
“La felicità è vera solo quando è condivisa.”という諺があり
(幸せは人と分かち合って初めて本物になる)という考え方があることウクライナでは、
家族や身近な人の幸せを大切にすることが、日常の中でとても重要な価値観であること中国では、
世代によって価値観が大きく変化しており、特に都市部では孤独が深刻な問題となり、
生きがいを感じにくくなっている人も増えていること
こうした話が共有されることで、
IKIGAIは日本独自の概念でありながら、
実はどの文化にも共通する問いであることが浮かび上がってきました。
MINTコミュニティでのIKIGAIワークショップ
そしてプロジェクトの後半では、
MINTの修了生コミュニティに向けて、学生たちがIKIGAIワークショップを開催してくれました。
オンラインでの開催でしたが、
ブレークアウトでは3〜5人の少人数に分かれて、じっくり対話。
テーマは例えば:
IKIGAIは今の日常にどう溶け込んでいるか?
自分のルーツや祖先をどう捉えているか?
自分はどう生きていきたいのか?
英語と日本語が混ざりながら、
それぞれの言葉で、自分の人生を言語化していく時間でした。
普段のMINTのセッションとはまた違う、
“少し外の視点が入ることで生まれる深い対話”がとても印象的でした。

Project MINTとの重なり
振り返ってみると、これはまさにProject MINTがやってきたことでもあります。
一人で答えを出さない
対話を通じて自分の生きがいを知る
誰かの人生に触れながら、自分の生きがいの輪郭が見えてくる
今回、学生たちと一緒にプロジェクトを進めながら、
その価値を改めて言語化してもらったような感覚がありました。
最後に
この3ヶ月で改めて感じたのは、とてもシンプルなことです。
人は、誰かに受け取られていると感じたときに、
はじめて「生きている意味」を実感できる。
IKIGAIはどこか遠くにあるものではなく、
日々の関係性の中に、すでに存在しているのかもしれません。
多国籍のミネルバ学生たちとの協働プロジェクトは、「生きがい」は文化共通する普遍的なものであることを改めて実感できました。
これからもProject MINTは、
そんな「生きがいが立ち上がる場」をつくっていきたいと思います。
※学生たちがまとめたリサーチ・成果物はこちら
次の一歩へ
今回のプロジェクトを通して改めて感じたのは、
生きがいは「考える」だけでなく、対話の中で立ち上がるものだということでした。
Project MINTでは、こうした対話を通じて、
自分自身のこれからを見つめ直すプログラムを提供しています。
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