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Opethのミカエル・オーカーフェルトが語る:❝プログレッシヴ❞の本質と、変化しつつある創作姿勢(Part 1)

※2025/12/30 追記:本記事のインタビュー動画をYouTubeにて公開しました!


❝2000年代以降、現在進行形で活動する「プログレッシヴ」なアーティスト達を幅広く紹介する❞という、私たちProg Projectのコンセプトにおいて、Opethのフロントマン、ミカエル・オーカーフェルトは、どうしても話を訊いておきたい人物でした。

筆者(Tate)は、2006年のLOUD PARKでの初来日以降、地方公演も含めた全来日公演を観に行っており、海外公演にも何度も足を運びました。そんな自分にとってミカエルは、自分をプログレ沼に引き込んだ張本人であり、音楽的嗜好に非常に大きな影響を与えた存在であり、現代プログ界における最重要人物の一人として、彼に直接、話を訊く機会があればと思い続けてきました。

そして今回、敢えて新作には触れず、彼自身にフォーカスしたインタビューを依頼したところ、OKをいただき、2025年11月27日、来日公演初日の開演前、楽屋にお伺いしました。

なお、今回ミカエルにインタビューすることができたのは、どうやら私たちと伊藤政則氏のみだったよう。政則氏のインタビューが終わり、緊張する私たちの前にミカエルが現れ、まずはPROG MUSIC Disc Guide──プログレッシヴ・ロック/メタル/オルタナティヴの現在形をプレゼント。

2021年、コロナ禍中に私たちが書籍を出版した際、マイク・ポートノイ(当時はまだDream Theater脱退中)、スティーヴン・ウィルソン、そしてNorthern Music Company(OpethやKatatonia、Devin Townsend等が所属するイギリスのマネジメント会社)の代表、アンディ・ファロウ氏にインタビューしたこと、そして、ここに載っていないあなた(ミカエル)は、最後のミッシング・ピースで、今日それが埋まること等を伝えました。

さらに「今日は、他のメディアが訊かないような質問を準備してきました」と私が言ったところ、「いいね、うまく答えられるといいけど」とミカエルが微笑み、インタビューが始まりました。


※企画・インタビュー・編集:Tate
※撮影:Izumi

「プログレッシヴ」という概念・定義

Tate:本日はお時間をいただき、ありがとうございます。

ミカエル:ありがとう。実は俺、すごく疲れてるんだ。

Tate:そうなんですか?

ミカエル:昨晩しゃぶしゃぶを食べに行ったんだけど、たぶん食べ過ぎたし、あんまり寝てないんだ。いや、でも大丈夫。こうして話せるのは嬉しいよ。

Tate:この本(『PROG MUSIC Disc Guide』)は、2000年以降のバンドを取り上げています。しかし、これ以降の時代は情報が氾濫していて、「新しい」音楽を見つけるのが難しくなり、「プログレッシヴ」という言葉の定義さえ、難しくなってきていると感じます
進化し続けるために、「プログレッシヴ」であり続けることは、あなたにとって挑戦ですか?

ミカエル:ああ、良い質問だね。自分たちが「プログレッシヴ」だと感じることが、それほど重要なのかどうか、もはや確信が持てないな。もう、それが何を意味するのか、よくわからなくなったからね。
昔はプログレッシヴ・バンドを定義するのは、もっと簡単だったと思う。さまざまなスタイルをミックスしていたバンドとかがそう呼ばれていたよね。
だけど今では「プログレッシヴ」とは、速いギターソロや変拍子などを意味するようになり、一つの「サウンド」になってしまった。それはおそらくあまり「進歩的(progressive)」とは言えないよね。

特にロックやメタルにおけるプログレッシヴ・ミュージックは、少し「退行的(regressive)」になっていると思うんだ。
「プログレッシヴ」かどうかは、自分たちでは決められないよね。それはオーディエンスが決めることだと思うから。
でも俺にとって「プログレッシヴ」とラベリングされることは、ますます重要ではなくなってきている。それがもはや何を意味するのかわからないからだ。

冒頭からいきなり深い質問に答えてくれたミカエル

ミカエル:俺が音楽を書くとき、非常に多くの異なる影響を受けているし、自分の音楽にとても情熱を傾けているので、俺たち自身の音楽において進化を遂げるのは簡単だと思う。だから、俺は努力しているけど、結局のところ、ただエモーショナルな音楽を書きたいだけなんだよ。

Tate:では、あなたは「プログレッシヴであろう!」と意図しているわけではないのですね?

ミカエル:そうだね。俺は自分自身を繰り返したくないんだ。俺たちが2000年代初頭にやっていたことを繰り返して欲しいと思っているファンも多いのかもしれないけど、俺はそれにはあまり興味がない。
自分たちが進化することを望んではいるけど、必ずしもプログレッシヴ・ロックやメタルのジャンルに収まるためだけに進化したいわけではないよ。

最近のバンドへの興味・関心

Tate:あなたが70年代のオブスキュアなプログレを愛していることは有名ですが、当時はさまざまな情報が限られていたからこそ、多くの興味深いバンドが目立つことができたのではないかと思うのです。
それに対し、最近のバンドにあなたが興味を持てないのはなぜだと思いますか?

ミカエル:どうなんだろう。実際に俺が聴いていないからじゃないかな。新しいバンドを探していないし。音楽シーンで何が起こっているのかもわからない。何が人気で、何がオリジナルで、何がプログレッシヴなのか、正直なところ、よくわからないよ。俺は古いレコードに夢中になっていて、まだ聴くべき音楽がたくさんある

Tate:今回、ファンからの質問も寄せられているのですが、「あなたが注目している最近のバンドは?」という質問も来ています。この手の質問、よく訊かれているのではないかと思いますが。

ミカエル:そうだね。覚えている限りでは、そんなに多くないな。スウェーデンの、バンドと言って良いかどうかわからないけど、SKATOR(スウェーデン語で、鳥の「カササギ」を意味する)というアーティストは良いよ。彼女の音楽はロックではないけど、すごく独創的で、とても激しくて、フォーク的で、かなり良いと思う。

Tate:あなたがあまり若いバンドをフォローしていないことはわかりましたが、例えば、次の世代をサポートしたいとか、プロデュースやコラボレーション、楽曲提供といった形で関わってみたいと思うことはありますか?

ミカエル:うーん、レコードに参加して歌って欲しいという依頼はよく来るんだよ。ときどきイエスと言うこともあるけど、ほとんどの場合はノーだ。プロデュースを頼まれたことも何回かあるけど、新しいバンドではなかったね。俺は今まで他のバンドのレコードをプロデュースしたことがないから、プロデューサーとしてはあまり優秀ではないと思うよ。おそらく彼らの音楽を必要以上に複雑にしてしまいそうだからね。
まあ、でも、もし誰かに頼まれて、そのサウンドなどが気に入れば、イエスと言うかもしれない。今のところ、そういうことはなかったけどね。

音楽と向き合う姿勢の変化

Tate:Opethはプログ界においてメジャーな存在になったと言えると思いますが、今、この(デビューからの)35年間を振り返って、ご自身の中で最も変わったと感じる部分はどこですか?

ミカエル: もうそれほど熱心ではなくなったね。若い頃はもっとハングリーで、自分自身のため、バンドのために名を上げたいと思っていたし、正直に言えば、(音楽で)食べていけるようになりたいと渇望していたよ。他の仕事なんてしたくなかったからね。
だから今、俺たちがこの状態にあることが、とても幸せだと思っている。こんな奇妙な音楽をやっているのに、東京まで来てライブができるんだからね。あるいは世界中どこでも。信じられないことだよ。素晴らしいことだと思う。
でも俺はもう、これ以上の成功を求めていないんだ。俺は... おそらく、そういったことにもう関心を持つのはやめたのかもしれない。

Tate:ご自身として、ある種の「ゴール」に到達されたということなんでしょうか。

ミカエル:うん、まあ…そうだと思う。それに、歳を取ると、少しリラックスするんだよ。俺は今51歳だからね。俺たちがやっていることは大好きだし、重要だけど、次の段階の成功を目指すことにはあまり興味がないんだ。

Tate:では、続けていくためのモチベーションは何なのでしょうか?

ミカエル:音楽。

Tate:音楽への愛ですか?

ミカエル:うん。曲を書くとき、部屋には自分一人だけで、自分が気に入るものを書いて、他の誰もそれを聴いていない。ただ、そこに座って聴いている。「ワオ、これは良い」という、あの感覚。それが誰かと共有する前の、俺にとって最高の気分なんだ。

Tate:たぶんあなたは自分自身のために音楽を作っているのかもしれませんね。

ミカエル:ああ、うん。まさにそうだ。そして曲が完成してレコードが出ると、それはもう俺のものじゃなく、みんなのものになるんだ。そして、また最初からやり直して、自分のために音楽を書かなければならない。そうやって自分自身の喜びのために書く音楽が、他の人たちにも気に入ってもらえ、リスペクトしてもらえるのは非常に幸運なことだよね。

聞き手も驚くほど、率直に自身の変化を話してくれたミカエル

自身のレーベル運営と文章を書くこと

Tate:自身のレーベル Moderbolaget Records を立ち上げられて、しばらく経ちますが、レーベルを持ったことで、何か変化はありましたか?

ミカエル:いや。実を言うと、ちょっとバカみたいな理由で始めたんだ。俺たちは Nuclear Blast Records と契約してるんだけど、俺はずっと「Nuclear Blast(日本語にすると核爆発)」っていう響きがダサいと思っていてさ。

Tate:そうなんですか?(笑)

ミカエル:レコードに「Nuclear Blast」と書いてあるのが嫌だったんだよ。だから「よし、自分たちのレーベルを立ち上げよう」となった。Moderbolagetは(スウェーデン語で)「親レーベル」という意味なんだ。

だけど、結局のところ、レコードにはNuclear Blastのロゴがまだあるから、あまり意味がなかったね。まあ、それがレーベルを始めた本当の理由だよ。

The BeatlesApple RecordsLed ZeppelinSwan Song Recordsみたいに、自主レーベルを持っても良いかな、っていうのもあるよね。
100%真剣では無いけど、他のバンドと契約することも可能だからね。あとは良いバンドを見つけるだけだ。

Tate:将来的に本当に他のバンドと契約する予定はあるんですか?

ミカエル:まあ、まだその予定はないけど、可能性はあるよね。もしかしたら俺の引退後のキャリアになるかもね。

Tate:レーベルオーナーですね!

ミカエル:そう。ボスになって、スーツを買って葉巻を吸うんだ(笑)

Moderbolaget Recordsのロゴ。皆さんもフィジカルでご覧になっているはず

Tate:あなたはソーシャルメディアが好きではないことは知っていますが…

ミカエル:ああ。

Tate:(苦笑)ですが、著名なアーティストが亡くなった際、バンド公式アカウントが追悼コメントを発表していますよね。私はあなたが書く文章がとても好きで、素晴らしいエッセイを書く方だなと思っています。

ミカエル:ありがとう。

Tate:今後、そうしたエッセイや、自伝などを書くことに興味はありませんか?

ミカエル:ああ、以前、Sweden Rock Magazineでコラムを書いていたよ。

Tate:そうでしたね!

ミカエル:だから、まあ、たくさんのレビューを書いたと言えるね。
しかし、俺はソーシャルメディアが大嫌いなんだ。うん、本当に。
ただ、バンドとして必要不可欠なのでアカウントを持っている。
誰かが亡くなったとき以外、俺は何も投稿しない。何だか死神みたいだけど。

でも、個人的に大切な人や、音楽的に重要な人物が亡くなったとき、尊敬する人が亡くなったとき、敬意を示すのは最低限の義務だと思うんだ。だから俺はそうしている。注目を集めるためにやっているわけではないよ。

本当は、生きているうちに本人に直接伝えたいんだけど。亡くなってからでは、もちろん遅すぎるわけで。
だから今はただ、敬意を込めてやってるんだ。誰も読まなかったとしても、自分の考えを言葉にすると、気持ちがすっきりするしね。

Tate:ジョン・サイクスが亡くなったとき、あなたが書いた文章が大好きです。

ミカエル:ああ。彼は世界のほとんどの地域で忘れられつつあったからね。俺にとっては非常に影響力のあるギタリストでありソングライターだった。フレドリック(・オーケソン)にとってもね。だから、彼のために何か書くべきだと感じたんだ。


…というわけで、Part 1はここまでです!いかがでしたか?

ステージではユーモアと皮肉を織り交ぜたMCが多いミカエルですが、インタビュー中の語り口はそれとは異なり、ひとつひとつの質問に真摯に向き合い、慎重に言葉を選びながら創作や音楽観について語る姿はとても誠実で、強く印象に残りました。
長年ファンとして彼の姿を見てきた自分も、また新たな彼の一面を垣間見られた気がします。

続くPart 2では、娘さんのお話、音楽とテクノロジーについて、皆さんから寄せられた質問、オーストラリアの感想、などなど幅広く質問しています。

どうぞお楽しみに!


※2025/12/9 追記:Part 2も公開しました!

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