50代・60代の「経験」が地方を救う。事業承継という選択肢
プロ人材機構代表 高橋啓
先日、事業承継をテーマにしたセミナーをさせていただきました。50名を超える方が集まってくださり、事業承継ビジネスへの関心の高さを改めて実感した夜でした。
その場でお話した内容を、ここに少し整理してみます。

私がこの仕事を始めた理由
私はヘッドハンターとして約20年、経営人材の紹介に携わってきました。最初の頃は事業再生が中心で、バス会社、繊維メーカーなど。業績が苦しい会社の立て直しを担う経営者を探す仕事でした。
転機が来たのは2015年頃。税理士の先生方から「後継者を探してほしい」という依頼が増え始めました。2018年の事業承継に関する税制改正を経て、今では「事業承継」が私のビジネスの中心になっています。
そして気づいたことがある。事業承継というマーケットは、シニア層と非常に相性がいいのです。
何もしなくても、毎月10件以上の案件が来る

少し数字の話をします。
70歳以上の中小企業経営者は245万人。後継者が未定の会社は127万社。この数字はよく聞くと思います。でも私が実感しているのは、もっとリアルな話です。
今、私の会社にはテレアポなし・広告なしで年間150件ほどの問い合わせが届きます。税理士、地方金融機関、投資ファンドから——「うちの顧客の会社を継いでくれる人を探してほしい」という依頼です。
中小企業庁が運営する引継ぎ支援センターの全国成約件数は2,132件(2024年実績値)と過去最高を記録しました。日本全体でも第三者承継が増えています。ただ、引継ぎ支援センター経由の案件は比較的小規模が多い。
私のところに来るのは、もう少し規模感のある案件が中心です。
主役は50代。でも、60代が伸び始めている。

弊社の成約データを見ると、後継者として就任される方の約8割が50代です。そして、最近、60代の成約が増えてきました。「事業承継は若い人の仕事」というイメージを持っている方もいるかもしれません。でも現実は違います。後継者のいない会社の経営を引き継ぐ仕事は、経験の厚みがある人ほど強いのです。
銚子のスナックに5回通った男の話
ここで、ある成功事例をご紹介します。都内在住・外資系出身の方が、地方にある自動車整備工場(従業員10名ほど)の後継者として赴任しました。お子さんもいる中での単身赴任です。なぜ決断できたのか。「町が好きになったから」だと、後に語ってくれました。
ただ、その「好き」には準備がありました。彼は就任前に5〜6回、実際に現地に足を運びました。そして、地元のスナックへ行って、常連客と話をした。土地の人の気質を、自分の体で確かめたのです。この行動力が凄いですよね。
失敗する人には、共通点がある。
一方で、うまくいかないケースも正直あります。

1 論理先行型
2 首都圏のルールを持ち込む型
3 自分のカタチを崩さずに孤立してしまう型。
中でも一番多いのが、言葉の問題です。大手企業出身の方ほど、「マーケティング」「PDCA」といった言葉を無意識に使う。でも、地元の学校を出て、その会社で働いてきた社員には、よそ者からのカタカナ言葉が届かない。
言葉が届かないと、会話が減る。会話が減ると、孤立する。実際に精神的に追い詰められてしまった方を、私は何人か見てきました。
成功する後継者には、3つの共通点があります。
自分の失敗を語れる
相手の言葉に翻訳できる
地域に溶け込める

シンプルですが、これが全てだと思っています。
皆さんの知識を必要としている会社が地方にあります。
最後に、これだけはお伝えしたいことがあります。
皆さんの知識を必要としている会社が地方にあります。すばらしい技術がありながらも、しっかりと世の中に認知されていない。もっと効率化が出来るはず。もっと大手と取引できるはず。そのような会社が沢山あります。
そして、その経験はあなただけのものではない。先輩から受け継いだもの、家族が支えてくれた時間、何百人もの顧客や同僚との関係の中で積み上げてきたもの。それを自分一代で終わらせるのは、もったいない。
今、事業承継の仕事はフルタイム勤務が前提ではありません。週1〜隔週での関与も珍しくありません。先月成約した案件では、東京の方が週の前半だけ福島に赴き、後半は東京で仕事をするという形が実現しました。
最後に皆様にお伝えしたいこと。それは第三者承継は、50代・60代が「自分の経験を、社会に還元する」ための、ひとつの現実的な回路です。
ぜひ、積極的に挑戦してみてください。
プロ人材機構では、シニア・経営層専門のヘッドハンティングを行っています。事業承継に関するご相談はお気軽にどうぞ。


