サマソニを前に、Adoへの期待と不安をいま書いておきたい
SUMMER SONIC 2026の開催が近づいている。
Adoは東京8月15日、大阪8月16日のヘッドライナーを務める。サマソニには今回が初出演。それにもかかわらず、いきなり一日の最後を任されることになった。
公式からも「日本を代表するアーティスト」「新時代を象徴する存在」と紹介され、25周年を迎えるサマソニのハイライトとして期待されている。Adoのこれまでの実績を考えても、非常に大きな起用である。
ただ、開催が迫った今、私は少し不思議な感覚を抱いている。
発表された当初は、あれほど賛否を呼んだはずなのに、今ではAdoがサマソニのヘッドライナーを務めること自体が、妙に語られなくなっているように感じるのだ。
発表時には、あれほど問われていた
Adoのヘッドライナー就任が発表された際、私の目に入った範囲では、歓迎する声だけでなく、疑問を示す声も少なくなかった。
Adoはサマソニのヘッドライナーにふさわしいのか。
海外アーティストを中心としてきたフェスで、日本の若い歌手が一日を締めてよいのか。
同日にはDavid Byrneやサカナクション、SUEDE、Steve Lacyといった実績のあるアーティストが出演する。それなら別のアーティストをヘッドライナーにした方が、サマソニらしいのではないか。
Adoが発表される前から、8月15日にはDavid Byrneとサカナクションが出演することが告知されていた。
だからこそ、Adoの起用は単なる出演者追加では終わらなかった。
Adoの人気や動員力だけではなく、「サマソニとはどのようなフェスなのか」という価値観まで含めて議論された。
それだけヘッドライナーという位置が重く、Adoの起用が挑戦的だったということでもある。
開催が近づくと、今度は妙に静かになった
ところが、発表時にはあれほど語られたにもかかわらず、開催が近づいた現在は、Adoへの期待・不満を語る声が思ったほど増えていない。
もちろん、私が見えている範囲に限った印象である。Adoファンの間では話題になっているし、サマソニ公式も継続的に告知している。
それでも、初出演でのヘッドライナーという異例の挑戦に対して、発表時の賛否ほどの熱量が維持されているようには見えない。
さらに7月21日には、Adoが出演する東京8月15日の1DAYチケットが完売した。
これは本来、少なくとも一つの安心材料にはなるはずだ。
Adoをヘッドライナーにした日だけ販売が伸びず、ほかの日程と比べて苦戦する。そのような分かりやすく厳しい展開は回避された。
それでも、発表時にAdoの適性を疑っていた空気が、チケットの完売によって大きく変化したようには感じられない。
選ばれたときには厳しく問われる。
しかし、不安材料が一つ消えても、それだけでは評価されない。
最終的にステージを成功させるまで、判断を保留されているように見える。
チケットをAdoが売ったわけではない
もっとも、8月15日の完売を、そのままAdoの集客力の証明として扱うべきではない。
同日のMARINE STAGEにはALEX WARREN、mgk、BE、HANAらが出演する。MOUNTAIN STAGEにはDavid Byrne、サカナクション、SUEDE、羊文学、SONIC STAGEにはSteve Lacy、電気グルーヴ、Corneliusなどが並ぶ。
国内外のさまざまな層を集められる、非常に強いラインナップである。
その日を買った人の全員が、Adoを目的としているわけではない。Adoの前に帰る人もいれば、最後はDavid Byrneを見るためにMOUNTAIN STAGEへ移動する人もいるだろう。
むしろ、ここからが本当の試験だと思っている。
チケットが完売したことと、Adoがヘッドライナーとして成功することは同じではない。
Adoが証明しなければならないのは、自分のファンだけで会場を埋められることではなく、Adoを目的としていなかった観客をMARINE STAGEに引き留め、一日の最後を納得させられることだからだ。
日産スタジアムとは違う難しさがある
Adoはすでに日産スタジアムという巨大な会場で、単独公演を成功させている。
しかし、サマソニは単独公演とは条件が違う。
日産スタジアムに集まった観客は、基本的にAdoを見るためにチケットを買っている。楽曲や演出に対する理解もあり、ライブが始まる前からAdoを受け入れる準備ができている。
サマソニではそうはいかない。
海外アーティストを目的に来た人、ロックを中心に聴いている人、ほかの国内アーティストのファン、フェスそのものを楽しみに来た人が混在している。
普段はAdoをほとんど聴かない人もいるだろう。匿名性や独特のライブ演出を、まだ肯定的に受け止めていない人もいるかもしれない。
そのような観客を前に、短い時間で空気をつかまなければならない。
単独公演のように、長い物語を作りながら少しずつ世界観へ引き込むことも難しい。代表曲を並べるだけでなく、フェスの一日を締めるにふさわしい構成と勢いが必要になる。
会場の大きさだけなら、Adoはすでにさらに大きな場所を経験している。
しかし、観客の多様さという意味では、これまでとは違う難しさがある。
私自身も、不安がないわけではない
Adoファンとしては、もちろん成功してほしい。
「唱」や「踊」のような、初見の観客でも盛り上がりやすい曲がある。「新時代」「逆光」「私は最強」のように、広く知られた楽曲もある。Adoの歌唱力と楽曲の幅は、異なる嗜好を持つ観客が集まるフェスでも大きな武器になるはずだ。
一方で、不安もある。
David Byrneをはじめとする裏ステージの出演者に、どれほど観客が流れるのか。
Adoを見に来たわけではない音楽ファンに、顔を全面的に見せないライブ表現がどこまで伝わるのか。
単独公演では成立している演出を、フェスの限られた時間と環境の中で、どのように見せるのか。
そして何より、発表時からAdoに懐疑的だった人たちが、どのような目でステージを見るのか。
人気があるだけでは認めない。
日産スタジアムを成功させただけでも認めない。
サマソニの観客を実際に納得させて、初めてヘッドライナーとして認める。
そのような高い基準が、Adoには課されているように感じる。
成功した後だけでなく、挑戦する今も語られてほしい
Adoはこれまでも、大きな会場や海外公演が発表されるたびに、その規模が疑問視されてきた。
そして実際に成功すると、いつの間にか「Adoならできて当然だった」という実績に変わっていく。
今回のサマソニも、同じ展開になるかもしれない。
ステージが成功すれば、開催後には「Adoで正解だった」「日本人ヘッドライナーでも問題なかった」と語られるだろう。
しかし私は、成功した後だけではなく、結果がまだ分からない今の段階でも、もう少しこの挑戦が語られてよいと思う。
初出演で、歴史ある国際フェスのヘッドライナーを務める。
しかも、起用時から賛否を背負い、自分のファンだけではない観客の前で一日を締める。
それは、成功してから振り返るだけでは足りないほど、大きな挑戦である。
私はAdoが必ず成功すると断言したいわけではない。
期待しているからこそ、不安もある。
Adoなら観客を圧倒してくれるのではないかと思う一方で、サマソニという場所では、これまでの成功がそのまま通用するとは限らないとも思っている。
だから、結果が出た後ではなく、今のうちに書いておきたかった。
発表時の賛否も、チケット完売による安心も、当日への不安も、すべて抱えたまま、Adoがヘッドライナーとしてステージに立つ瞬間を待っている。
8月15日と16日。
Adoが、なぜ自分がその場所に選ばれたのかを、ステージそのもので示してくれることを期待したい。
