(書評)第69回「関ケ原」(上・中・下)(司馬遼太郎 著)☆天下分け目の戦い。累計500万部超え☆
著者による長編歴史小説です。16世紀末の豊臣政権末期における徳川家康と石田三成の対立を軸に、天下分け目の決戦となった関ヶ原の戦いとその経緯を描いた作品です。著者ならではの「俯瞰」の目線が特徴的です。
1981年にTBSテレビでスペシャルドラマが放映され(全三回。5時間半を超える超大作)、また、2017年には劇場映画が公開されました。

豊臣政権下最大の外様大名である徳川家康とその謀臣・本多正信、および、豊臣政権の有力執政官である石田三成とその腹心・島左近の4人について、人間模様と謀略戦を中心に叙述されています。さらに、前田・上杉・毛利・島津・長曾我部・黒田といった各地の有力大名の内情や動向も述べてゆくことで、多角的な視点から関ヶ原の戦いへと至る経緯と合戦の様相を描いています。
東西両軍の兵力じつに十数万、日本国内における史上最大の戦となったこの天下分け目の決戦の起因から終結までを克明に描きながら、己れとその一族の生き方を求めて苦闘した著名な戦国諸雄の人間像を浮彫りにする壮大な歴史絵巻です。秀吉の死によって傾きはじめた豊臣政権を簒奪するために家康はいかなる謀略をめぐらし、豊家安泰を守ろうとする石田三成はいかに戦ったのか?

この作品を徳川家康・本多正信vs石田三成・島左近のタッグマッチのようだと評していた人がいました。私はその主人公格の4人の中で、特に本多正信の性格が印象に残っています。鷹匠から成りあがった人物で、立身出世の野心というものはまるでなく、大名より身分の低い身でありながら、家康の権威をかさに着て大名や高貴な身分の人と会い、その人物を吟味することを無上の喜びとする人物として描かれていました。
家康が次の天下人になることは規定事実でしたが、三成は時代の流れに逆らい、豊臣家を存続させようとしました。そこにすべての無理があったのではないでしょうか。しかし著者は黒田如水にこう言わせています。「三成のような寵臣までもが、自己の保身を考えて家康のもとに走り媚を売ったら、世の姿はくずれ、人はけじめを失う。その点から言えば、あの男は十分に成功したのだ」そこを書いてくれただけでも、この作品の価値があると思います☆

