見出し画像

2月8日 手作りスイーツで心を満たす

休みの日の朝。
目覚ましに追われることもなく、少しだけゆっくり起きる。
カーテン越しの光を見ながら、今日は何もしなくていい日だと確認する。
それだけで、肩の力が少し抜ける。

外に出る予定もなくて、なんとなくキッチンに立つ。
冷蔵庫を開けて、バターや卵を確認する。
特別な材料はないけれど、
「クッキーくらいなら作れるかな」と思う。
その小さな思いつきが、今日の始まりになる。

計量して、混ぜて、形を整える。
ボウルの中で生地の感触が変わっていくのを、指先で確かめる。
頭の中は静かで、次に何をしなきゃいけないかだけに集中している。
気づけば、さっきまであったはずの雑音が、少し遠くに行っている。

看護師として働いていると、
一日のほとんどが「誰かのため」に使われる。
相手の体調、気分、痛み、不安。
それに応えるために、自分の感覚は後回しになることが多い。

忙しい日が続くと、
疲れていることに気づく余裕すらなくなる。
それでも現場では動けてしまうから、
「まだ大丈夫」と思い込んでしまう。
でも、ケアする側がすり減っていくと、
どこかで必ず無理が出る。

人をケアする仕事だからこそ、
自分を労わることは後回しにしてはいけない。
それは甘えじゃなくて、必要な準備だ。
点滴が空のままでは補液できないように、
自分の心が空っぽでは、優しさも続かない。

心理学では、こうした行動を
「行動ベースのセルフケア」と呼ぶ。
気分が整ってから動くのではなく、
先に体を動かすことで、心が後から追いついてくる方法だ。

手作りのお菓子は、その代表例みたいな存在。
失敗しても大きな問題にはならない。
完成が目に見えて、ちゃんと「できた」が残る。
その積み重ねが、自己肯定感を少しずつ戻してくれる。

空手の正拳突きも、よく似ている。
ただ腕を振り回しても、力は伝わらない。
姿勢を整え、重心を安定させ、
一瞬だけ集中を一点に集める。
その密度が、技の質を決める。

お菓子作りで手を動かしている時間は、
その正拳突きの密度に近い感覚がある。
雑念が流れて、今ここに意識が集まる。
過去の失敗も、明日の不安も、
一旦、脇に置かれる。

オーブンから漂ってくる甘い香り。
焼き色を確かめるために、そっと扉を開ける。
温かい空気が顔に当たって、
「あ、ちゃんとできてる」と思う。
この瞬間も、立派なセルフケアだ。

完成したら、すぐに片付けなくていい。
急いで食べなくてもいい。
一枚手に取って、ゆっくり味わう。
サクッとした音、口に広がる甘さ、
指先に残る温かさ。

五感を使って感じることで、
心は少しずつ満たされていく。
これは贅沢じゃなくて、回復のプロセス。
忙しい毎日を続けるための、静かなメンテナンス。

昨日は、低調をそのまま受け止める日だった。
今日は、少しだけ自分を満たす日。
大きく元気にならなくてもいい。
こうして、ゆっくり整っていけばいい。

今日の月の処方箋は、次の3つ。
1. 手作業に集中する時間を1時間つくる
2. 完成したものを、急がずに味わう
3. 香り・音・手触りなど、五感を意識する

満たされた感覚は、ちゃんと次の日につながっていく。
今日も、自分を大事にできている。
それだけで、十分だ。

結城ほのか

いいなと思ったら応援しよう!