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怖くていい。――「復職」を前に、揺れる「再起動宣言」。 

はじめに:頭は動いている。でも、怖い。


頸損により休職してから、しばらくが経つ。

幸か不幸か、もうすぐ復職する予定だ。

頭の中ではわかっている。スケジュールも、段取りも、何をすべきかも。頭はちゃんと動いている。それだけは自分でもわかる。

でも、怖い。




第1章:「見えない障害」という、孤独な戦場

電車で通勤するのが怖い。

杖を持って立っているだけなら、たぶん周りからは普通に見えると思う。外見上は何も変わっていないし、「障害がある人」には見えないだろう。それが逆につらかったりする。見えないから、説明しにくい。

揺れる車内で踏ん張る足、いつバランスを崩すか分からない不安。カバンを持つこともままならない。

説明できないから、余計に孤独な気がしてくる。

体のことで言えば、お腹でに呼吸がうまくできない時がある。

深呼吸しようとすると、なぜか大きなため息みたいな音になってしまう。それがまるで怒っているような印象を与えてしまう。

それから、とっさの一言が出にくい。会話の流れに乗ろうとすると、言葉が追いつかない感覚がある。

ちょっと前まで普通にできていたことが、なんとなくぎこちなくなっている。

「頭はしっかりしてるんだけどな」と思う。そのギャップが、また自分を混乱させる。



第2章:リハビリを続けているのに、「後退」する日がある

休んでいる間、当然のようにリハビリを繰り返した。

毎日ではなくても、できる範囲でコツコツと。回復していくはずだという気持ちで続けてきた。でも正直に言うと、「あれ、悪くなってない?」と感じる日が、しばしばある。

気圧の変化もあるのかもしれない。低気圧が来ると体がズンと重くなる感じがあって、それが関係しているのかもとは思う。でも、それだけじゃない気もしている。

手の指の動きが悪い。キーボードを打とうとすると、思ったように指が動かない感覚がある。

首が重くて、左右に回せない。振り向こうとするだけで、妙な緊張感が走る。

背中から腰にかけて、痺れがきつい日がある。じっとしているのに、ジワジワとした感覚が続く。

そして左足が重い。足を上げて前に進む、ただそれだけのことが、うまくできない日がある。

なんらかの症状が、まだ起きている。

リハビリを続けているのに、良くなっている実感が薄い日がある。

むしろ後退しているような気さえする日もある。

そういう時は、正直かなり落ち込む。

「このまま戻れなかったらどうしよう」という考えが頭をよぎる。

それを打ち消して、また次の日を過ごす。その繰り返しだ。



第3章:それでも、戻ろうと思った理由


それでも、このタイミングで戻ろうと思ったのには、いくつか理由がある。

ひとつは、怪我をしてからもうすぐ1年になるということ。節目と言えば節目だ。「1年」という言葉が、どこか背中を押してくる感じがある。いつまでも休んでいるわけにはいかない、という焦りに近い感覚かもしれない。

もうひとつは、体制変更だ。

春で組織が変わって、自分が何をする人なのかが、だんだんわからなくなってきた。戻ったとして、自分は何ができるのだろう。何を任せてもらえるのだろう。障害者雇用という選択肢も頭の片隅にある。

今の職場でできることを整理しながら、自分の居場所を探していかなきゃいけない——そんな宿題が、じわじわと積み上がっている。

「戻る理由」を探していたのか、「戻らざるを得ない理由」に背中を押されているのか、自分でもよくわからない。たぶん、両方だ。



第4章:コートが教えてくれたこと


たまたま、昨日、コーチをしているミニバスの新学年チームの練習試合に参加させてもらった。

正直、行く前はかなりドキドキしていた。

久しぶりに人の中に入っていくこと、体を動かすこと、咄嗟の判断を求められること。いろんな不安が頭をよぎった。

でも、やってみたら、案外、大丈夫だった。

完璧じゃなかった。これまでの自分と比べたら、動きも鈍いし、声も出しにくい場面があった。

それでも、ちゃんとコートに立てた。子どもたちと一緒に動けた。「あ、やれるかも」という感覚が、久しぶりに戻ってきた。

そこで気づいたことがある。

これまで通りにやろうとしなくていい、ということ。

休職前の自分と同じパフォーマンスを出そうとするから苦しくなる。

でも今の自分には今の自分のやり方がある。

無理に取り繕わなくていい。今の状態をそのまま曝け出して、それでやっていけばいい。コートの上でそれを体で感じた気がした。



エピローグ:怖くていい。不安を抱えたまま、一歩踏み出す。


でも、やっぱり不安だ。

復職したら、また毎日電車に乗らなきゃいけない。人と話さないといけない。咄嗟の判断を求められる場面が増える。深呼吸したくなる瞬間だって、きっとある。

大丈夫、やれるはず」と思う自分がいる。昨日のバスケがそれを教えてくれた。

でも「本当に大丈夫かな」と思う自分も、同じくらいいる。

どっちが正しいとか、どっちを信じるべきとか、そういう話じゃないのかもしれない。両方が自分の中にあって、それでいいのかもしれない。

不安を消そうとするんじゃなくて、不安を抱えたまま、一歩踏み出すことが——今の自分にできることなんだと思う。

怖くていい。うまくできなくていい。今の自分を信じて、曝け出す。

それだけ、やってみる。 



ここまで読んでいただきありがとうございます。
人それぞれとは言いますが、自分と同じ感覚を持った方の少しでもお役に立てれば幸いです。

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